軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36.金の御神米

せっかくだから歩きましょうかと、蔵元のタカヒロさんと、先ほど案内してくれた子ども、タカトシくんとともに西の門をくぐり、特別な水田へと案内される。

黄金の米が、重い頭を下げに下げていた。黄金の水田だ。

「す、ごいですね」

「壮観でしょう? この水田はいつもこの状態なのです。どれだけ米を収穫しても、一週間もすれば元通り。神殿と街の蔵元総出で管理しております。もちろん、勝手にとることは叶いません。収穫もまた、神殿で祈りを捧げてから行います……あれは?」

勝手に踏み入ることを禁止されている水田に、人影が見える。

タカヒロの表情が険しくなる。

「そこにいるのは誰だ!?」

タカヒロの呼びかけに顔を出したのは初老の男性だ。

「ゴンゾウ!?」

「蔵元……と?」

男は手にコップのような物を持っていた。

「うちの杜氏で、ゴンゾウといいます。こちらはセツナ様だ。……ゴンゾウ、何をしていたんだ?」

ゴンゾウはかなり白い物が混じってきた頭を軽く振る。

「水が、おかしいのですよ。先日造った御神酒も、何か違和感があって。少し調べておりました」

「だが、この水田に勝手に入ることは許されていない。見つかったらどんな咎めを受けるか……」

「俺は何も見てないです。それより、その水の話が気になるし、この場を離れませんか?」

4人揃って酒の倉に行く。ぶわっと日本酒特有のアルコール臭がした。あくまで匂いだけなので、酔うことはないが、柚子は大喜びだろうなぁ。

「それで、水というのは?」

ゴンゾウが持っていたコップを机の上におく。特に変哲も無い水。水田へ引く水をすくってきたという。

タカヒロが顔を近づけ匂いを嗅ぐが、首を傾げる。この酒の匂いの中で何かわかるというのか。

「特に変わりないように思えるが……」

「匂いは変わりゃしません。ただ、少しぬめつくというか……」

むむむとゴンゾウが口をもごもごさせていた。

「ちょっとした経験の違和感って、言葉に表しにくいですよね」

うちのじーさまになんか似てる。

「申し訳ない」

「いや、お前さんが悪いわけじゃないよ、ゴンゾウ。しかし、経験的な違和感は確かにわたしらにはわからないなぁ」

「【鑑定】スキルで見たりはできないんですか?」

俺の言葉にタカヒロは笑う。嫌みな笑い方じゃなくて、本当にぽろっと出てしまった笑いだ。

「来訪者のみなさんはわりと持ってらっしゃる【鑑定】ですが、我々にはほとんど現れない特別なスキルですよ」

そんな仕様になっているとは!

「それは、知らなかった……今はちょっと出かけていますが、友人に【鑑定】スキル持ちがいますから、見てもらいましょうか? どの程度の熟練度でゴンゾウさんが感じた違和感を見破ることができるかはわかりませんが」

俺が提案すると、タカヒロとゴンゾウはぱっと顔を輝かせた。

「そうしていただけると助かります」

「安易になめてみようとも思えねぇから、助かる」

タカヒロとゴンゾウは頭を下げた。

「もちろん秘密は守ってくれると思いますよ。いつ帰ってくるかがちょっとわからないので、聞いてみますね」

セツナ:

ダンジョンはどうですか?

ちょっと案山子さんの【鑑定】スキルをお借りしたいんですが、いつ頃戻ります?

案山子:

んーあと10秒くらいかなッ!

10秒? と思っているとクランチャットに悲鳴が響いた。

ピロリ:

八海山!! お前が死ぬとはなさけないっっ!!

八海山:

ソーダが寝たら全部こっちだから。一瞬だよ一瞬。多少耐久に振っているとは言え、誤差だ。

半蔵門線:

かみっ! 紙装甲!! 拙者ひき逃げされたでござる!!

柚子:

ソーちゃん消えたら、私の範囲当たって全部こっちきたのじゃぁ~!

ソーダ:

スリープ系きつっ! でもおかげで【睡眠耐性】生えたわ。

『セツナっち! いったん休憩と対策に入ると思うから、そっちの用事済ませようか?』

『お願いします。迎えに行きますね』

「友人が帰ってきたので迎えに行きます。すぐ帰ってきます」

そう断って、冒険ギルドへ向かう。

「ボク、案内します!」

「ああ、そうだな頼む」

タカトシが小走りに後から追いかけてきた。

「冒険ギルドへはあちらの船に乗るのが早いです」

たぶんトウヤくんとそれほど変わらないであろう少年が、俺を先導し、船を呼び、あれよあれよという間に冒険ギルドの前だ。

「お疲れさま」

「おー……エグいダンジョンだったわ」

冒険ギルド内にあるテーブルで、6人が食べ物を囲んでいた。EP回復中のようだ。

「命からがら逃げてきましたよ」

これは、NPC用言い訳。死に戻りした模様。

「それでも、他モンスターがなかなか久しぶりに手応えがある感じで、楽しかったわぁ~経験値もそれなりに入ったし、しばらく通えるわね!」

「ここでレベル上げするでござるよ」

「チーズ美味しいのじゃ……酒も欲しい」

「セツナっち、行く? みんな対策考えるって」

案山子が立ち上がり、こちらへ歩き出すとみんながガタガタと椅子を引いて立ち上がる。

「どこどこ、楽しいところ行くのか?」

「楽しいところなら私も行きたいわ~」

うーん、秘密のお話をするというのに、連れて行っていいのだろうか? 俺の後ろに隠れているタカトシくんを見やる。

「……トウヤを助けてくれた人たちですか?」

「そうだね。俺の友人だよ」

「……それなら、一緒に来ていただいても父も怒りはしないかと」

「困惑はしそうだけどね」

まあでも何かしらのイベントを踏んでる気がするので、それを独り占めするのは気が引けるのだ。

初めての渡し船にキャッキャとはしゃぐ姿に、最初は警戒か、表情の硬かったタカトシも次第に笑みをこぼすようになっていった。

柚子は酒の倉がならぶ風景に卒倒しかけている。

そして、案山子を紹介し、問題の水を【鑑定】してもらう。

「うーん、『 泥寝(でいしん) 水』って出てるねッ」

「デイシンスイ!?」

タカヒロさんとゴンゾウさんが青い顔をして驚いている。

「めちゃくちゃ寝ちゃいそうな名前ね」

「名前だけじゃないだろ? 効果は?」

八海山がさらに先を促す。

「泥のように眠れって表示されてるッ」

スリープのデバフがかかる水のようだ。

「経験のすごさですね」

だが、これはどういうことなのだろう?

ピコン、とパーティー勧誘がやってきたので了承する。

『これってやっぱりあのダンジョンボス倒さないといけないやつ?』

あー、それはありそう。