軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32.第4都市ローレンガ開放クエスト

俺たちはそれぞれ花束を持つ。明るい色は控えて、青や紫、黄色白などの花束。ソーダのチョイスはなかなかですね。

確か門兵に話しかけると、お決まりの台詞を言うだけでそれ以降会話はないということだが――、

『おお? 反応違うくない?』

『本当だ。こんな遠くから俺らの方見てることなんてなかったな』

パーティーチャットでの会話にどよめきが起こる。

兵士たちは俺たちに頭を垂れた。

「花を手向けに来ていただけるとは」

「この度は……」

後半はごにょごにょごにょっと濁らせる。どちらかわからないんだよ。ただ、花と俺たちの服装を見てなので、誰か亡くなっているのは確かそうだ。

「ちょうど神殿で葬儀が始まったところです。こちらの通用口からどうぞ」

『『『『『『『やっっった!!!!!』』』』』』』

水瓶座の門のそばに、人が一人通ることのできる小さな扉があったので、そちらへ案内される。話しかけてくれた兵士が先導し、俺たちはまだ見ぬ第4都市へと足を踏み入れたのだ。

が。

『ぐぬおおお、強制か。いや、まあそうだろうな』

足が、足が勝手に動く!!

『まだ解放クエストクリアにはなってないってことね』

『花をお供えするだけでいけるのかな?』

兵士の後を大人しく移動する俺たち。本当の手足のように動かせている分、この強制歩行はなかなか気持ちの悪いものだ。

ローレンガの神殿もアランブレと変わらない。白い壁と丸い青い屋根。ステンドグラスも嵌まってる。

そしてみんなできうる限りの暗い服装で、あちこちからすすり泣く声が上がっている。神殿の奥へ奥へと案内されて、中央の棺には白い顔をした少年が静かに横たわっていた。そばには両親と思われる男女が棺にすがって泣いている。

『お、重いな……』

そう言いながらソーダはみんなが献花している辺りに自分の持ってきていた花を置く。

俺もそれに倣った。

ピロリ、八海山と、同じように花を供えるが、特に変化はない。

『ちょぉっとまったッ……』

『なんでござる?』

『お、お子ちゃま、仮死状態なんだけどッ!?』

『案山子の【鑑定】スキルが火を噴いたのじゃーっ!!』

『食材見極め用だけど、えっ、どゆことッ!?』

ただ、献花の流れを止めることはできない。ここもほぼ強制。歩くルートが決まっている。半蔵門線の番で、彼も花を供えた。

仮死状態を見破った案山子も同じようにするしかない。

『キタコレじゃああああ!! 動ける、動けるぞぉ!!』

『柚子がキーってことは、……お前持ってんだろぉぉぉ!!』

『あたぼーじゃああ!! 喰らえ!! ネクタールぅぅぅぅ』

案山子が作った桃の酒を柚子は当然のものとして所持していたらしい。

献花の花をしまい込み、懐から桃の酒のボトルを取り出す。

「手向けの酒じゃ、味わえ」

そう言って、器用に少しだけ子どもの口元に桃の酒を垂らす。

周囲の街の人たちが止めるそぶりを見せるが、まあこれがクエストのキーならば止められるわけもなく。

やがて青白い子どもの頬に赤味が差す。

悲鳴がそこここで上がる。

「トウヤ!!!」

母親が駆け寄って抱き上げると、男の子は小さな声で泣いた。

「奇跡だ! 奇跡が起きた!!」

「おおおお!!」

《クエスト:第4都市の開放 をパーティー名 ソーダとゆかいな仲間たち がクリアしました》

《これより1ヶ月後、Marchサーバー以外のサーバーで第4都市ローレンガが解放されます》

《Marchサーバーでは、一週間後の深夜0時より第4都市ローレンガが解放されます》

《貢献ポイントが20pt手に入ります。ローレンガのNPCの好感度が20%上昇します》

『おうおう、すごい数のフレチャが……ちょっと切っとこ』

『通知鳴り止まないでござるね。拙者もぽちっとな』

『貢献ポイントって?』

『あーメインクエストとかイベントクエストに関わることでつくらしいけど、それがいったいどうなるかはよくわからない。ちなみにこの貢献ポイント~の下りは全体アナウンスではないな。クリアアナウンスはパーティーだとパーティー名が、個人だと個人名がアナウンスされる。個人名は最初にアナウンスするか決めたやつだね』

今回はパーティーでクリアということになったらしい。おかげで俺の名前も全体アナウンスされずに済んだ。

そして今、神官とおぼしきおじいさんに手を握られぶんぶん振られている。

「奇跡じゃ、奇跡じゃ! おおおおおお」

涙と鼻水えらいことになってますよ。【洗浄】っと。

「川で低体温症になっていたんでしょうね。身体を温めてあげてください」

俺の言葉にはっとして、神官のおじいさんはすぐさま家族の元に駆けていった。元気だなぁ。

ソーダたちがここを見つけてから1ヶ月以上経っている。低体温症のわけがないだろうけど、仮死だったしな。ゲーム的には時間は経っていない! キリッ! って感じなんだろう。というか、【鑑定】なんて面白いスキルもあるんだな。欲しいなぁ。

そしてようやく強制歩行が終わっていることに気付く。

『やっべッ、一週間俺たちだけヤバイッ!』

『クランには好きに帰れるし、先に登録地ここにしておこう』

『ダンジョンさがそ! ダンジョン探そうよぉ~!!』

『脳筋がガタガタ言ってるが、ダンジョン探すクエスト探さないとだぞ』

『忍者、忍者の匂いがするでござるよぉぉぉ』

『酒の街ぃぃぃ!!! 来たのじゃぁぁ』

とりあえずソーダに言われた通り、登録地を書き換えることにした。登録地の書き換えは基本冒険者ギルドで出来るそうだ。やった覚えがないのだが、それは、アランブレから出ていなかったから。今死んだらアランブレのゲート送り。冒険ギルドで登録しておけば、ゲート送り判定後、ローレンガへ再び来た設定になるらしい。

俺たちはそろってその場を去ろうとしたが、捕まる。

ささささっと寄ってきた神官たちが口々に引き留める。

「この後食事会をいたします。街の人々みんなで、この奇跡を分かち合います。是非ご参加ください」

「奇跡のネクタールをお持ちの冒険者様。是非食事会に参加ください」

押しが強い!

『え、これ食べ物に毒入ってて桃の酒取り上げられるやつ?』

『いやいやいやまさか』

『まさか、ねぇ』

すると、少年の父親らしき人も駆けつけた。

「本当は葬儀の後みなさまに振る舞うはずだった料理ですが、祝いの料理としてぜひ、ぜひ食べて行ってください。あと、落ち着いたら是非ともお礼をさせていただきたい」

精進落としの振る舞いご飯だった模様。まあ、せっかくなのでいただくことにした。