軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31.水瓶座の流れ話

クランハウスへ飛んで、ログアウト前の読書タイム。

「いらっしゃい」

我が女神はあいも変わらず美しい。

貸本屋には検索機能はないので、探し物があるならアンジェリーナさんに聞くしかない!

望むところっ!!

「洪水や、増水、水瓶の神に関する本はありますか?」

「もちろんあるわよ。増水?」

「実は友人と一緒に街巡りをして、次は第4都市のローレンガへと思っているんですが、第3都市の兵士の方に、川が増水して街が悲しみの最中だと」

「あら……それは辛いわね。あの街に祀られている水瓶の神様は、たまに川の氾濫を起こすのよ。神々の考えは分からないけど、我々の預かり知らぬところね。近くを流れる川は恵みの川ではあるけれど、長雨のときはとっても危険よ。それでも、日々の生計を立てている人たちは川に行ってしまうのよね」

そう言いながら本を3冊並べてくれる。

「水瓶の神様の小話がまとめられた本が2冊よ。増水はないのよね……どちらかと言うと川が氾濫しないように川の整備の仕方を研究した本ならあるわ」

『水瓶の神様の流れ話1』

『水瓶の神様の流れ話2』

『川の整備』

流れ話てなんだよ。

滑らない話的な? 流されまくってるけどな。

なんでも水瓶の神様、お酒大好きで、飲んだくれて過ごしてるらしい。ちなみに絵が描いてあったけど、頭部分が水瓶で、頭を傾けてゴブレットに酒入れてる。

その酒を酔っ払いが傾けすぎて降るのが豊穣の雨。すぐ山があって、そこから流れてくる間に綺麗な水になって、それで第4都市は酒造りが盛んだという。美味しい水が得られる土地だとか。

たまに飲みすぎて寝て、頭を横に倒して雨が振り続けると洪水になるという。

えっ……最悪じゃんこの神様。

酒にまつわる話がもりもり入ってた。

川の増水は、まあダムを作ったり、川幅を広げたり、もちろん堤防、あとは調節用の池を人工的に作るなどの話だ。

ダムは無理だろうなぁ〜。

堤防は作っているのだろうか?

さて、今、水瓶の神様は、ぐでんぐでんになって寝てしまってる状態なのか?

起こすのが、雨を止ませる方法?

ただたぶん、悲しみにあふれてるってことはもう亡くなった人がいるんだろうな。

何が正解なのだろう?

よくわからないままその日はログアウト。

翌日待ち合わせの時間にログインすると、すでにソーダとピロリがいた。

「おっす! これ、セツナの服」

渡されたのが白のシャツと黒のパンツ、黒ネクタイ。それに黒ジャケット。喪服には見えないが……、まあ派手な衣装よりは、てことかな。ピロリは黒のワンピースにボレロ。

「ありがとう、金は……」

「大丈夫。NPC商店だから、皆おそろいだけどな」

喪服というよりなんだろう、これからパーティーに乗り込んでマシンガンぶちかましそうな面々。

「昨日あれから本読んできたんだが」

「お前も……好きだなぁ」

大好きですが何か?

「水瓶座の神様が酔っ払って寝ると水瓶が横倒しになって、水が垂れ流しになるらしい」

頭が水瓶なのはあの絵のインパクトなので、伝えきれません。

「だから、むしろ起こさないといけないのかもしれない」

「起こす……?」

や、その反応はめちゃくちゃわかるんだけどね。

「とりあえず花でも買っていかないか?」

献花的な。外国のお葬式とか花飾りまくるし。

「問題は他にもあるわよ、本当に溺れて死んでいるか! 死んでなくて意識不明とかなら、ものすごく失礼になる……」

それは怖い。

「言葉選びに気をつけないといけないな」

かなりセンシティブなことになりそう。

ソーダが花を探してくると言い、続々やってきたクランメンバーがお着替えする。

着替えは一瞬だ。装備し直すだけ。

案山子もやってきて、生産施設を借りて醸造していた桃の酒を手に持っている。瓶は柚子が作った、装飾などは一切ない、透明のボトルだ。

「いい香りね」

「ちろりと味見したが、まあまあじゃな」

「味見とはッ!! ゴクゴクだったよッ!」

案山子はあきれ顔。

青髪エルフが黒服とか、めちゃくちゃカッコいいな。

「アルコール臭のきつい不出来な酒は全部果実酒に変更することにしたッ!」

「定番の梅希望よー!」

「グレフルがいいな」

柑橘系が好き。

「色とりどり揃えるが良い。漬け込み用瓶も、その後のボトルもお任せじゃっ!」

ソーダが花束を7つ調達してきて、パーティーを組む。八海山のポータルというスキルで、第3都市ファンルーアに到着だ。

そこからは徒歩で第4都市ローレンガに向かう。

「ちょっとまって、戦闘あるなら普段の装備に変えたい」

普段の……水着パレオか。あっちの方が防御力高いとかゲームの謎。

「どこからカウントされるかわからんから喪服(仮)のままで」

「ええーっ。筋力ちょっと足りないのよねぇ」

筋力の方でした。

「リザレクションは任せろ!」

「嫌よっ! 80%まできたんだからっ!」

死ぬと1%減るが、高レベルになればなるほどその1%の経験値量が恐ろしいものになるという。

「拙者今0%なので無敵の人でござる~」

「なら半ちゃんが前衛しなさいよっ!」

そんなことをいいつつ5人はなかなか素晴らしい連携でエンカウントしたモンスターを倒していった。

「……柚子さんは?」

「私はパーティーのマスコット担当じゃ」

生産一筋で戦闘はからっきし……ではなく、魔法担なので、案山子とかぶると効果が打ち消されることも多いから見てるだけらしい。

「生産やるにも器用さが大切じゃからな~知力低めの器用さましまし2極型じゃよ。筋力はアクセや宝珠で補うタイプじゃ」

2極というのは、2つのステータスのみに全力でステータスポイントを振る人だ。

「生産には器用さがどうしても必要じゃからなあ。器用さプラス付きのアクセサリーと宝珠は超高値で取引されておるぞ。そういったもので金稼ぎもありよりのあり!」

ふむふむ……金は何に使う? 本以外にピンとくる物がない。

「リアルでは知らんが、ゲーム内くらい金持ちになりたくないか?」

「……なりたいですねー」

「始まったばかりのゲームじゃから、これからのアップデートで、金さえあればとんでもない物を手に入れられるかもしれないじゃろ? だから貯めておくにこしたことはないのじゃ!」

ド正論でございますね。

そんな風に2人で話しながら歩いている間に、現れたモンスターはあっさり倒されていく。おかげさまでこちらの経験値がごりごりですー。あと少しで20になる。

そして見えてきました。水瓶座の門!

門扉に水瓶の絵が彫られていた。