軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33.初回特典は美味しい

結論。

ご飯はとても美味しゅうございました。

案山子が特に喜んでる。

街の人々から好感度が上がっているせいか、レシピを聞くと次々教えてくれるらしい。

『チーズが作れそうっっ! おばあちゃんがこの後教えてくれるって! チーズ屋さんらしいッ!』

『チーズ屋就職おめー』

『チーズはな、酒に合うのじゃ……心して学んでこい』

桃の酒は神殿に寄付することになった。

みんなほんのきっかけだとはよくわかっているそうだ。それでも、水瓶の神が飲むと言われている桃の酒、不死の酒を口にして生き返ったように思える、このタイミングが奇跡だと喜んでいる。

せっかくだからまだ封をしている方をと言ったが、少年に飲ませた方がいいと言われてそちらを渡すこととなった。厳重に管理して奉るそうです。封空いてない方がいいんじゃないか?

少年の奇跡はもちろんだが、話題は川の氾濫と長雨の話になる。

「そろそろ雨も止んで欲しいものだ」

「もう何ヶ月だ? さすがに長いな。神様の気まぐれにしても長すぎる気がする」

などとつぶやかれる中に、ございましたね、ヒントが。

「北の山で獣の恐ろしい声が聞こえたと、孫が言っておった」

「北の山は険しいから、なかなか人が踏み入れないからのう。何か住み着いてしもうたかもしれん」

『ぐふふ、ダンジョンの予感』

『まあそうだろうね。調べるかぁ』

『まずは冒険ギルドで登録地変更な!』

『話の流れから長雨と関係ありそうだね。神様泥酔してるんじゃないのか』

『セツナ殿の神様泥酔説はどこからwww』

『いや、本に、泥酔して頭の瓶から水垂れ流してる美麗挿絵が』

『あー、あの神様なら、ありそうッ!』

というのも、ここにも水瓶の神様の彫像がありまして。その頭が水瓶なのをみんなも見たのだ。立体になるとシュールが過ぎる。

料理をたらふくいただき、夜も更けてきたのでお開きになった。街の中は雨が降り続いていて、神殿が傘を貸してくれた。番傘と言われるやつだ。

『情緒がすごい~可愛いー!』

『ああ、忍者の匂いがすんすんするでござるぅ』

そう、ローレンガはだいぶ和テイスト入っているのだ。

もともと食が日本テイストなのはあったが、町並みが今までとはがらりと違っていて、木の家屋が多くある。神殿は変わらずモスク的なところがあったし、石畳は石畳なのだが、並ぶ家は木造中心。

忍者というよりは日本酒の匂いがする。水の綺麗な街という設定だし。

「案山子さん、期待しています」

八海山は名前からして日本酒好きそう。

「ウィスキーをねだられ、日本酒をねだられる……日本酒はまた製法がッ!!」

大変そうだな。

衣装も着物。女子は喜びそう。裁縫系の生産に和装が来るやつか! リアルではなかなか着物は着れないから、ここで楽しむのも手だ。

冒険ギルドで登録地の変更をする。IDカードに登録地を書き換えられた。アランブレからこちらにくるのはまた走ったり飛行船にのったりしなければならないが、アランブレに帰るのは一発クランハウスへゴーなので構わないなと判断した次第。

ついでに掲示板をちらりと眺めてみるが、どれもこれも、俺にはちょっと荷が重いレベルの依頼しかなかった。都市を移動するごとにだいたい推奨レベルが10あがるらしい。アランブレ1~10、第2都市イェーメールが11~20、第3都市ファンルーアが21~30なので、LV30以上推奨くらいの依頼が多かった。

『夜になったら街中でやれることがなくなるし、そこでダンジョン見に行くか?』

『賛成!』

『あ、俺は不参加で。さすがに足を引っ張りそうだ』

『わかった』

『アランブレに帰っていてもいいですよ。迎えに行きます』

『そのときはよろしく』

ということでみんなは夜まで別行動。俺は完全別行動。

『じゃ、チーズお勉強してきまーすッ!』

『酒を見てくるのじゃ。瓶の勉強じゃっ!』

『拙者も忍者をさがしてくるでござる』

ぶれないのすごい。

『私は武器とか防具の店見に行ってくる』

『あ、俺も行く』

と、ピロリに続いてソーダと八海山も戦闘準備。

俺は……街をうろつくことにした。

アランブレと違って、城もないし、とんでもなく大きいわけじゃない。が、それでも一日で全部回るのは無理な程度に大きな都市だ。

水の街と言われているだけあって、そこここに川が流れている。小さな川が街中を縦横無尽に駆け巡っているのだ。

ヴェネチアに似ているのかもしれない。江戸にしては支流が多い。

アランブレにも川はあったが、数が違う。

「やあ、ネクタールの来訪者さん。よかったら乗っていくかい? お代はいらないよ!」

クリア特典がものすごい。

「では……1度だけお願いできますか? 次からはきちんと払わせてください」

「そうだな。1度。せっかくだし街の散歩がてら乗って行くといいよ」

男は次々と街の中を案内してくれた。

船はゴンドラというよりは、江戸の渡し船といった感じだ。船宿もあるという。

完全に日本テイストだな。ござるたちの夢に出会えるかもしれない。

「水の街ローレンガの売りはやはりこの綺麗な水! その水から生み出される美味い米と酒だ!」

米!! そりゃそうか。日本酒には米が必要だもんな。

「街の西側は田んぼが一面に広がってるよ。時期によっては田植え体験や、稲刈り体験もできるね」

カツ丼出来るやつ~。

「お米は好きなので食べて行こうと思います」

「美味い定食屋をいくつか紹介するぜ!」

船をこいでるお兄さん、長ーい棒で器用に進むんだが、腕ムキムキだもんなぁ。美味しい店知ってそう。

「そうそう、織物も結構有名なんだよ。とても綺麗な藍色をしている」

藍染めかな?

染め物もあるのか……生産職奥が深くて怖い。

「水瓶の神様は、飲んだくれの神様だなんて馬鹿にされることもあるけど、俺ら街の人間にとっては慈愛の雨を降らせてくれるすばらしい神様なんだ」

街の神様馬鹿にされたら嫌だよな。

「雨がないと米も育ちませんよね」

「そうなんだよ! 美味しい米もこの雨があるからさ。まあ確かに今回はちょっと長雨が過ぎるけどな。そろそろ起きていただかないとね」

「起こすのはどうやって起こすんですか?」

俺が聞くと、お兄さんはきょとんとした目を向けてくる。

「神を起こすなんて、我々人ができるわけがないじゃないか」

がはははと笑った。

「まあ、こっちでどんちゃん騒ぎを起こせば起きるかもしれないけどね」

騒ぎ、ねえ……。