軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

274.ケルムケルサとウォルトの契約

アランブレの司書長には悪いけど、俺の利はアンジェリーナさんが喜ぶところにある。

つまり、アンジェリーナさんへの本を献上したいんだー!!

「だいたい予定通りいったと思いますけど、どうでした?」

俺がラシードさんに尋ねると、女性と見まごう彼は笑顔で頷く。

「おかげさまでなんとか公平なラインまで持っていけることができました。ありがとうございます」

今回助けるべきは、アンジェリーナさんの望む新しい本を持っている側!

「それではこちらの契約書を」

そういってラシードさんが取り出したのは、写本師であるウォルトとの契約書だ。

現在物資も金もなかなかに厳しい空の国に、お金の面でフォローすることによってこちらの欲しいものを取引しようという試み。

「セツナくんがこんなことを画策するなんてなあ」

楽しそうに言いながらウォルトはサインした。

この契約書は、同じ本を2冊写本できるというもの。1冊はもちろんアランブレの図書館へ、もう1冊は貸本屋へ。写本費用をこれに変えるというものだ。

「図書館の方とそちらが揉めないかが心配ですが」

「アランブレの司書が、貸本屋に来ることなんてないんですよ。目録を見ることは許されていますし、欲しい本はアランブレに言うだけです」

正直俺だって、ゲームでこれが通用するなんて思わなかったよ!!

事前に相談したからもしかしたら運営の方で融通してくれた可能性はありそうだけど。結構臨機応変に対応してくれるなあといった感想です。

「しばらくはアランブレに居着くことになるなぁ」

「え゛っ!?」

俺の漏れた声に驚くウォルト。

「アランブレとケルムケルサの仕事を持ってるんだから、当然じゃないか?」

「そうです……ね」

「仕事場はもちろん、衣食住はこちらで保証しますよ」

「助かりますね。食事の材料はアランブレに要求しましょう」

2人が笑い合うのを見て俺も安心した。

いやだってさ、アンジェリーナさんの家にとか言ったら、俺発狂する。

ウォルトはにやりと笑っていたのでわかっている気がした。

やっぱりこいつは要警戒!!

《称号【交渉人】を得ました》

《貢献ポイントが53ptプラスされます》

称号!! 久しぶりすぎて忘れていた存在。

交渉人かあ。由香里さんとか手に入れてそうだなぁ。

効果はNPCとの話し合いで、希望が通りやすくなるというもの。

ファマルソアンさんとかに通用するかなぁ……でも基本あの人俺に甘い気がする。いや、そうやって俺に思わせているだけか?

まあぜひ効果を見ていきたい。

ちなみに、貸本屋が得たものは、それぞれの街の貸本屋同士で相談して置き場所を決めるという。

「まあ、そこら辺はアンジェリーナが上手くやるだろう。セツナ君の努力の結果だし、彼女が優先されるだろうよ」

それならよかった。

「セツナさんには大変お世話になりましたので、こちらの図書館はいつでも遊びに来てください。もしよろしければ別室にゆっくり読書をするための部屋も設けます。それくらいの貢献はしてくださいましたので」

何か含みのある言い方だが、何を言いたいのかわからないので曖昧に頷いておく。さあ、こうなったら次は、いったん中断していたアリの毒とアクセサリだ!

とりあえずクランにアリの毒を共有。食いついたのは半蔵門線だった。

「毒の素を【調薬】するのを見せてもらいたいでござる」

「黄ポーションとかそれで生えたもんね。OKだけど、まず材料のナガミヒナゲシを採取してからかな」

これもまたウロブル付近でモンスターのレベルが高いのだ。

「んなら今から採りに行こうぜー」

アリの経験値は普通に美味しいので、ソーダたちも期待しているらしい。アリを捌くスピードが上がれば、それだけ効率が出るとのこと。1つの毒で倒せる数によっては、アリの外殻分の売り上げの方が伸びるかもしれない。マイナスにならないのならクラン狩りでも多用していきたいとのこと。

金を目指してのクラン狩りと、経験値を求めてのクラン狩りとがあり、やはり先行クランとしては経験値もしっかり稼いでおきたいのだそう。

「器用さが、器用さがまだ足りぬのじゃ」

ちょっと前になんでもガラス工コンテストなるものに参加したが、器用さが足りずに入賞ならずで悔しい思いをしたらしい。

「知力も器用さも必要だけど、筋力が最近必要なんだッ!」

お料理には腕力も大切だそう。

ナガミヒナゲシは、確かに大変だった。採りに行くのも、採るときも。

「猛毒ってなんだよぉぉ!! 八海山っっ」

「ポーション飲め!! 解毒間に合わん!!」

手袋をせずに掴んだソーダが危うくデスペナをいただくところだった。

注意する前にいっちゃったから、自業自得だよ。

そういや先生たちも常に薄いゴムの手袋してたな。

俺は毒と聞いたら手袋着用。ビエナちゃんとのお約束! で【調薬】の時も手袋してた。

生産施設で他の必要な材料を買い求め、毒用ポーション瓶は柚子がくれた。みんなで一緒の部屋に入れるので、【調薬】してみせると、半蔵門線にもスキルが増えたそうだ。

2人で交代しながら作って作ってしていると、ソーダが唸る。

「調薬台もクランハウスにあった方が便利なのかなあ」

「そうでござるね~、ただ、今のクランハウスでは無理でござろう。スペースがないでござる」

スペースはあるように見えて、生産設備を置けるスペースが決まっているという。今のクランハウスは、料理の生産設備でそのスペースを全部使用してしまっているそうだ。

「調薬台を買おうかとも思ったでござるが、常に【持ち物】に入れておかねばならぬというのがネックだし、こういった新レシピを生産施設の共有広場で作れば新レシピを見られてしまう可能性もあるでござるからね。個室を借りてやるのが1番ってことで買ってないでござる」

「それなあ。それで案山子の調理台とかコンロとか流しを入れたんだもんな~」

「料理は趣味が出るから、俺だけ特別進んでるとかはないけどねッ! まあ、人が知らないレシピもたくさん知ってるけどッ!」

「生産施設をたくさん設置できるようにならないかなぁ。別料金払って」

「アップデート? どうなるのかしら。要望でも出しておくー?」

そんな話をしながら大量のアリの毒の素を作った。