軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245.島渡しの魔法

もちろん俺たちはみんな地上の国側。どうしたって縁が多い。こちら側の情報はここまではオープンにされてしまっている。だから、タイムリミットの1日前というのはさらに早まった。1日前とはいえども、普通の生活サイクルの人たちがログインすると、早くて20時頃、普通は22時、23時頃だろう。するとゲーム内時間で夜の0時や3時になる。夜陰に紛れて正面を行くNPCを登らせるのがいいと、中央に集まるのはゲーム内時間4時だった。それを、もう少し早く始めることにしたのだ。

ソーダ:

みんな早寝早起きちゃんになるだけだよ。

八海山:

そういうソーダが1番残業がありそうで危険な日だな

ソーダがぐぅとうめき声を漏らす。決行日は金曜日の夜だった。

まあ、俺たちプレイヤーの利点はログアウトした場所にログインできること。空の国でもそれが可能だということが確認されている。

前日先乗りしてログアウトしておけばいいのだ。

円卓での話し合いはこの中にも裏切り者がいるかもしれないということになって、掲示板メインとなった。

ソーダ:

それでも、あの天幕には定期連絡で行くことになってる。とりあえず、 無翼(ムルス) をこちらの味方に付けて、俺たちとしては空の国との国交回復に努めようって話に。ただ、調子乗ってる 有翼(イータ) をちょっくら叩いておいた方が、 無翼(ムルス) が今後生きやすいだろうって話になってる。

クランチャットで会話しつつ、俺と案山子は島渡しの詰め所とやらに向かっていた。

島と島が1番近づく場所に作られるというそれは、粗末な木の小屋だった。幸いなことに、小屋は少し高いところに作られている。そしてすぐそばには木が、林程度には生えているのだ。

身をなるべく低くして近づく。俺程度の知力だと見ても学べないことが多いという。

『結局ステータスなんだよ~。本読み頑張れ。次40ptでしょッ? 知力40プラスは大きいよ~ッ!!』

『頑張りたい! 今日は時間空いたらアンジェリーナさんのところに行きます!』

『師弟関係は大切にしないとねッ!』

案山子がにっこりとこちらを向いて笑った。

青髪ポニーテールイケメンエルフの笑顔。

トキめかねぇ……アンジェリーナさんにここのところ会えてない! トキメキ成分が足りないよ~!!

『あ、使うみたいだ』

何か荷物を抱えた男が、小屋の前に立った。すると小屋の奥から杖を持った男が出てくると、杖を前方の宙に向かって振るう。

『お、生えたッ!』

『俺はやっぱり無理みたい』

知力問題でかい。

『それじゃあ帰ろっかな?』

『セツナっち、試してみたくない?』

案山子が悪魔の笑みを浮かべていた。

案山子の武器は杖だ。綺羅星のスタッフという名で、結構なレアものらしい。クラン狩りでの戦利品で、柚子とじゃんけんして勝ったそうだ。

堅く黒い杖で、案山子の腰の高さほどある、それなりに長い物だ。知力+50、器用さ+30という、魔法使い系垂涎の代物。

長い杖の先には日の光に反射して色を変える石が嵌まっていた。

俺は今その石の輝きを遠目に見ている。

島と島の間、足下に何も無い空間で。

『怖い怖い怖いっっ!!』

『これ、自分でどうやって乗ろうかなぁ~1度振るだけで風の流れは出来るっぽいよねー。今は魔力使ってないし。まあ、セツナっち到着したら教えて』

身体をぎゅっと縮めて、ぞわぞわした感覚とともに空を行く。逝っちゃいそう。

先ほど魔法を盗み見た場所は、この島と本土、中央の島を結ぶ場所だった。1番近い場所で使うと言っていた、島渡しの魔法。

島民が長年使っていた場所だから、確実に届くのだろう。

積み上げてきた安心感がある。

対してこちらは、島民にバレないよう人目を避けて、中央とは別の方向で島渡しをしている。試してみようという案山子の提案に乗って、島Eへ飛んでいるところだ。

向こう岸が見えていればここまでぴいぴいしないんだが、怖いよー。

『ほら、セツナっち、目視目視ッ』

『向こうの島は見えてきてはいますよ! あと少し』

ただ、ちょっと風が弱って来ている気がする。

『追い風欲しいです』

『俺も行けるか試したいから落ちるまでダメーッ!』

『ヒドイっ!!』

完全なる実験なんだよー。

だがまあ、なんとか辿り着けた。降りた後もまだ風は吹いている。

『行けました。ただ、最後降りるとき、案山子さんダメージ食らうかも』

俺は華麗に飛び降りたけど。

『抱きとめてッ!』

お断りだよ。

一振りでこちらへ来られることがわかったので、案山子も風にひょいっと飛び乗りこちらへ向かった。

『ひゃっってなるッ! ひゃってッ!』

『結構怖いですよね』

『人類空を飛びたがったけど、実際生身で空を飛ぶの怖いッ!』

全面的に同意する。

空を自由に飛びたいなで飛ぶのは肝が据わってないと難しい。

風の流れが途切れるまで乗っていた案山子は、最後落下寸前で騎獣を出して乗った。

『ちょっと地図共有しておくッ!』

ここからここへは島渡しの魔法でいけますよと掲示板に共有するそうだ。

『おっけーッ! どうするセツナっち。もう姫様には接触している人がいるらしいし、そこへ入っていくのもねッ』

『じゃあ、こっから中央への島渡りできる場所を探しましょうか』

『いーねーッ! 俺の島渡し楽しんでくれて嬉しいよッ』

あ、そうか、またあの恐怖体験するのか……。

言い出しっぺなので甘受するけども、また、ひゃってなるなぁ。

空の島は、中央と呼ばれるかなり大きな島の周りに、小さな島が点在する。全部で16ある。そのどれも中央へ行けるようにはなっているらしいが、その行けるところはもちろん島の人たちが島渡しをしている。岸がなるべく近いところを行くのだから。

つまりこちらが島渡しをする場所はどうしてもそれより遠い場所での島渡しとなるので、本当に行けるか事前確認が必要になるのだ。

また、周りに目隠しがあるような場所が望ましい。開けた場所だと見つかってしまう。

『ちょっとまってねー中央への島渡しポイント探し、うん、ここの島はまだだね。下から豆の木伝って登ってきたところを今姫様と 無翼(ムルス) の民で決起しようと促してるところだって』

『お話聞いてもらえたんですね』

『やっぱり物資不足はすごく深刻らしいね』

そうやって、俺が実験台になり、無事、島Eの島渡しポイントは得ることができた。