軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

246.新しい防具

今日は日本酒を持って、イェーメールの鍛冶屋ストリートへやってきた。

そろそろ出来上がるんじゃないかなってことで。

「こんにちは~」

「よお! セツナ!!」

「ちょうどよかった。大急ぎで作って出来上がったところだよ」

「連絡とらなきゃなって話になってたところだ」

珍しく、 小人族(ドワーフ) たちが店から顔をひょこっと出すだけで、通りへ出てこない。

そして俺の胸当てを作ってくれるといっていた親方がやってくる。

「空の国との戦で注文が殺到してるんだよ。ほら、これが依頼の品だ」

店の前に置いてあった丸テーブル(これが酒を飲むときに通りを占領するのだ)に、親方は胸当てと籠手を置いた。

「着けてみてくれ。調整が必要なら今やってしまいたい」

とは言うが、うっとりするほどぴったりサイズだった。

「衝撃はもちろん、ちょっとやそっとのスキルにもその籠手と胸当ては突破できまい。俺の腕もだが、お前らがもたらしたアリの外殻は本当によい素材なんだ」

特別な、鍛冶屋に伝わる製法でしか形を変えられないという。

防御力もかなり上がった。胸当てと籠手という局地的な防御力なのに、プラスがつくのは謎である。

籠手は手の甲まで覆っているものだった。その甲部分に例の双子座とアネモネを上手く組み合わせた文様が入っていた。胸当ての文様は肩に小さく入っている。

「素敵なものをありがとうございます」

「こっちもきっちり金もらってるからな! 仕事をしたまでよ。まあ、大怪我せずに帰ってこいよ」

「鍛冶屋の皆さんは、空の国は……どうなんですか?」

とても曖昧な俺の質問に、親方はそうだなと首を傾げる。

「空の国との確執は聞いたことがある、程度だ。そこまで詳しく知らないな。ただ、アランブレが負けて行き来がしにくくなるのは面倒だなと思うから、まあ、落としどころが見つかるといいなあ」

アランブレやイェーメールに住んでいるが、 小人族(ドワーフ) はあくまで傍観者的立ち位置のようだった。

「そうだ。前にファマルソアンさんが、本拠地は第7都市だとおっしゃってましたけど、 小人族(ドワーフ) のみなさんも本拠地ってあるんですか?」

そういったことが関わっているのかなと聞いてみたら、親方はにやりと笑った。

「 小人族(ドワーフ) の本拠地に興味があるのか。今は交通の便の問題で行きにくいがな、俺らの本拠地は第9都市だ。ちっと遠いな。聖地の向こう側だよ」

やっぱりあるのか。ということは、後は獣人族か。

「やっぱり空路ですか?」

「そうだな。空路が閉鎖されたのは痛いな……今回のことでそれも復活するといいなとは思ってるよ。お前が行くなら、俺らも里帰りしてもいいなあ」

「旨い酒持っていったら1発で受け入れてもらえるぞ」

「あっちの酒も久しぶりに飲みたいなぁ」

「口から火が出るほどキツいヤツがあるんだよ」

「火酒の中でもダントツのやつだ」

ウォッカかな??

酒の話になって結局店からぞろぞろ出てくるの面白い。

「まあもうちょっと先の話だな。気をつけて行ってこいよ!」

俺は手を振って鍛冶屋ストリートを後にする。

防御力、合わせて+50は嬉しいな。今までのものを着たままつけられるのもいい。

またお金貯めてブーツとかも新調しよう。

さて、時間が余った。日が暮れるまでにはもう少し時間がある。

明日はとうとう決行日だ。1日早めて、明け方突撃である。それまでにプレイヤーは各周辺島に移動し、中央を軍が攻める時に島渡しで中央の島に入るのだ。

すでに島Eで暮らしてきた姫の子孫から中央の 無翼(ムルス) の貴族たちにもつなぎが作られていて、現在王族で 無翼(ムルス) の第2王子を旗頭とすることになっている。しっかりつなぎ作ってくのすごいな。

『まあ、わりとわかりやすく道は提示されてたらしいよ』

返された姫君が泣いて暮らしていたのは、地上の国の結婚相手が恋しかったらしい。2人は仲良くやっていたという。そして返され、島に閉じ込められ、姫君は子どもを産んだ。そう、地上の国の王族の子だった。

これが中央にバレたら憂いは潰せとばかりに殺されるかもしれないと案じた姫君は、子どもを別の島民に育てさせたという。

そうやって、今いるのは姫君の孫だった。彼が中心となって今回の争いを契機に、空島の今の体制を変えたいという話だった。

そのためにも、 有翼(イータ) たちをある程度叩いて欲しいとの申し出まであった。

『プレイヤーも上手くいけば戦争はできるわ、空の国という新しいフィールドは得られるわでウキウキしてる』

掲示板から情報を得ないセツナに、ソーダがフレンドチャットで説明をしてくれていた。ありがたい。

『てことで、明日ログインしたらクランハウス集合な。戦を仕掛けた瞬間、俺たちの名前赤に変わるから。空の国は青。青を叩いてもPKにならないから安心しろ』

『人型と戦うことになるんだな』

『公式からの許可だ。たださー、竪琴見つからなかったんだよ。まあ、入れるところが限られてるから。当日探すしかないな』

『絶対防御ってどーいうのかもわからないよな』

『それなーーー!』

カランとドアベルを鳴らしてひっっっっさしぶりのアンジェリーナさんのお顔だー!! 今日も素敵だよ。

「いらっしゃい」

「こんにちは、本を読みに来ました」

「空の国のことで忙しそうよね。うちにも何冊かあるわよ。読んでみる?」

「はい!」

最近アンジェリーナさんがオススメ本を出してくれることが多い。

えーこれ、親密度上がってる? 上がっちゃってる~?

嬉しくてウキウキですよ。

オルロさんのところにあったものとはまた違う本だった。

それでも空の国の情報はほとんど見つかっている。俺以外にも図書館に入り浸っていた組が明かされてない話をどんどん開いていったのだ。

借りたのは、『空と海との別れ』『空と海と地上の人々』。

……そう、ずーーーーっと気になってたんだよ。

俺があの謎の空豆を手に入れたのは竜宮城でもらった宝箱からなんだ。なんでそんなものが海の中からもたらされたのかと、ずーっと気になっていた。

人は元々海の中で暮らしていたと言われている。それが次第に海の中では収まらず、地上に住み、やがて浮遊島を見つけた者が空へと旅立って行った。

元は海の中で暮らしていたというのに、今は地上こそが人の楽園と言う。または、空を制している我らこそこの世界の覇者と。

人は驕る生き物だ。

海の中で慎ましく暮らしていたのは遠い昔のことである。

あとは延々、人の進化の過程について語られていた。