軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

139.騎士さんに拉致られた

魚座の彫像は、魚に手足が生えて、はなかった。なんか普通の魚が2匹、跳ねてるような感じで作られている。すごいな、掘り出しだと思うんだけど、ちょっとだけ接触してるところが繋がってる。あと、台座との繋がりがほんの少し。これ、横からぶん殴ったら折れそう。やらないけど。

今までで一番取り扱い注意な感じがする。

水瓶座に身体くっつけたのに、魚座にはくっつけないのはなぜ。

同じように祈る場所が奥にあったので、そこまで行ってお祈りしておきました。

加護はもらえないなあ。これも何かきっかけがあるんだろうなぁ。

その後は街の中をうろうろして貸本屋探し。

が、見つからない。全然、見つからない。

イェーメールもファンルーアも偶然だったし、ホント、住宅街の中にぽんっとあるんだよなぁ。ローレンガはアキヒトに頼ってしまった。

さて困ったぞと、ウロブル名物ロロンを露店で買い食い中。

フィリピンのデザート、トゥロンに似てる。春巻きの皮でバナナっぽいのとシナモンとお砂糖を包んで、揚げてある。あまーい。美味しい。

これは、誰か知り合いを作らねばならぬのか?

NPCの知り合いは作ろうと思って作れないので悩ましい。

ベンチに座りぼけーっと行き交う人を眺めていると……、なんだろう、兵士が1人2人3人4人と四方から近づいてきた。

たぶんこれ、俺?

そして、さらになんか、ちょっとお偉そうな方が……兵士じゃないやこれ、騎士の方だ。お貴族様……。

「すみませんがご同行願います」

強面の長身騎士服着た人にそんなこと言われたら俺、震える。

黒い騎士服、そして腰には長剣。

「ええと、なんか俺、悪さしちゃいました?」

「いえいえ、少しお話をお聞きしたいだけです」

「ええと」

「ご同行を」

「ひゃい」

セツナ:

騎士に拉致られナウ!!

ソーダ:

今度は何した!!!

セツナ:

露店で買い食いしてベンチで食べてただけなんだけどぉぉぉ!!

ソーダ:

ポイ捨てしたとか?

セツナ:

ここはシンガポールかよぉぉぉ!!

心当たりがまったくなくて、ガクブルです。

南へ南へと連行されるのを多くの目撃者に捉えられてますね。

嫌だーもう掲示板の話題の人になりたくないっ!!

しかしここで逃げ出せばウロブルに出禁になりかねない。なぜなら相手は貴族だ!!

ぷるぷるしながらついていくと、お屋敷の一室に通される。

「少しお待ちください」

牢屋じゃなくて応接間へ通された。ヴァージルんとこみたいなふかふかソファだ。床や壁は濃い茶色で、カーテンは白だった。オレンジ色の縁取りがされてて、可愛い。

いったいこれから何が始まるのか戦々恐々としていたが、扉が開くと俺は慌てて立ち上がる。

現れたのは身なりが良いお爺ちゃん。結構なお年だと思う。髪の毛がロマンスグレーかなり白め。

「やあ、やっと見つけました!」

そういって早足でこちらに向かってきて、俺の手を取る。ぶんぶん振り回された。

「我が命の恩人よ」

だれーっ!?

「貴方のおかげで助かりました。危うく道ばたで息絶えるところでした。いつもは持ち歩いているのですが、品薄になっていたところでしたので、本当に、本当にありがとうございます」

一方的な身に覚えのない感謝は扱いにこまります。

「あの、すみません、ええと?」

「ほら、何をしている、お茶をお出ししろ!! ささ、お座りください」

促されて向かい合って座ったが。

マジ、誰。

「アランブレは用事があるときしか行かないので詳しくなく、命の恩人を探し出すのに手間取りました。どうやら来訪者の方らしいとまではわかったので、街に来る来訪者の方の人相を、常に監視させておりました。いやはや、本当によかった。命の恩人にはぜひ何かお礼を」

「いやあの、すみません。心当たりがなくて」

ちゃんとやっと言い切れたのだがそこへお茶が届く。

執事の方が俺と、おじいちゃんの前に高そうなカップを置いて紅茶を注いだ。

「む、騎士たちはなんと言ってセツナさんを招待したのですかな?」

招待じゃなくて連行でしたって言ったら首飛びそうな、鋭い眼光で聞くから、答えに窮する。

俺が答えないのでやがておじいちゃんため息をついた。

「失礼しました。私はこのウロブルを任されているヴィランウェバ伯爵家の者です。家督はすでに倅に譲りましたので、隠居の身です。モーゼスと呼んでください。もう何ヶ月も前のことです。アランブレに所用で出向いて、街を歩いていたときに急にポーラの花粉にやられて咳に襲われたところ、セツナさんが通りかかって薬を飲ませてくれました」

あ、あああああ!!!!

ヤーラ婆のところの咳止めだ!

俺の顔を見て、モーゼスはにこりと微笑んだ。

「飲ませてくれて、すぐ立ち去られたので私は礼の言葉も言えずじまいです。アランブレで探しはしましたが、あそこはとにかく人が多い。見つけられなくてここで待つことにしました。姿形はよく覚えておりましたから、兵士や騎士に人相書きを渡し、よくよく見張らせていたのです」

この顔にぴんときたらのやつ。

連行で間違いない。

「いや、すっかり忘れてました。大事にならなくてよかったです」

「遅ればせながら、本当にありがとうございました」

「いえいえ~、たまたま持っていてよかったです」

そうそう、あの頃はこれ絶対クエストあるやつーと思って持ってたんだよ。

見事にあったわけだが。なんで俺すぐ立ち去ったんだっけ? もう覚えてない。

「何かお礼をしたいのですが」

「いや……うーん、今はこれといって。今日来たばかりなので、しばらくウロブルの街を堪能しようと思ってます」

「そうですかそうですか。どこか出入りしにくい場所へ、なども融通がききますので、何かあれば是非お声がけください。屋敷の者には門のところへ来ればすぐ通すよう通達しておきますので」

「咳止め1つでそこまで……」

「いえ、ポーラの花粉による咳症状は、我々のような年寄りには致命的なのですよ。命を救われました」

とってもとってもお礼を言われて、俺は屋敷を後にした。

たぶん、金をとか言い出さなかったから、貴族の人が口出ししないといけないようなときに切り札として使うのがいいかなー。

セツナ:

なんか、前にクエスト踏んだヤツの延長だった。

ソーダ:

何のクエスト?

セツナ:

コーララ草とってきて、咳止め持ってたらじーさんが突然咳き込んで死にそうだったから口に薬ねじ込んでその場を去ったヤツ。

ピロリ:

いいことしたんだろうけど表現が終わってるわね。

セツナ:

ウロブル治めてる貴族の、えーと、ヴィランウェバ伯爵家の隠居した老人。

半蔵門線:

またちょっと強いところと知り合ってるでござるね~

ソーダ:

あのクエスト、初期にうまみがないって言われてたやつだよな? また情報落としとくかぁ~セツナが掴んできたやつ、ちょいちょい情報落としてお前の身を守るのに使っていかないとな。

だいたいそのクエストその場でお礼言われて、薬代に少し上乗せした謝礼金で終わってたみたいだし。

ピロリ∶

普通はすぐその場を去らないわよね。

八海山:

本当におかしなのにつきまとわれると、ゲームが楽しくなくなるからな。

なんかしみじみという八海山。え、身に覚えあり??