作品タイトル不明
40
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもの。
もっと遊んでいたいけど、そろそろ帰らなければ。
今日のメインイベントはこれからなのだから。
「ねぇベル。この後なんだけど、帰ったら私の家族を紹介してもいいかしら?」
「もちろんです!えへへ、すごく楽しみです!」
嬉しそうに笑うアナベル。
その姿に私も嬉しくなってくる。
それからアナベルと他愛ない会話をしながら、歩いて家へと向かった。
「さぁ着いたわ。ここが私の家よ」
「「おかえりなさいませ」」
扉を開けると、ディランとマーサが出迎えてくれた。
「二人ともただいま。ベル、紹介するわね。ディランとマーサよ」
「アナベル様、ようこそいらっしゃいました。私は執事のディランと申します」
「うふふ、お嬢様のお友だちとお会いできて嬉しいですわ。侍女のマーサと申します」
「は、初めまして!アナベル・ホワイトと申します。今日はよろしくお願いします」
「二人はね、私の親同然の存在なの」
私を優しく、時に厳しく導いてくれたディランとマーサ。
今があるのは間違いなく二人のおかげ。
そんな大切な二人と、大好きな友人が仲良くなってくれたらすごく嬉しい……
……いや、嬉しいんだけどね?
「そ、そんなことが……!それは間違いなく可愛いですね!」
「そうなのよ!あの時のお嬢様はそれはもう可愛らしくて……」
「その時の写真があるので、あとでご覧になりますか?」
「わっ、見たいです!」
ものの数分で仲良くなっていましたよ。
嬉しい。嬉しいけど……
「お嬢様はとても可愛らしくて」
「大変努力家で」
「それにすごく優しいです!」
「「よく分かっていらっしゃる」」
「ちょ……そ、そこまで!もう勘弁してちょうだい!ほら早く中に入りましょうよ!」
なぜか三人して私を褒め出すんだもん。
仲良くなってくれて嬉しいし、褒められるのだってそりゃあ嬉しい。
でもね?恥ずかしくて居た堪れないのよ。
そういうことは、せめて私がいないところでやってください!
それよりも夕食までまだ少し時間がある。
ひとまずアナベルを部屋に案内しないと。
「この部屋を使ってね」
「わぁ!すごく素敵なお部屋です」
「気に入ってもらえてよかったわ。荷物はテーブルの脇に置いてあるから、あとはよろしくねマーサ」
「かしこまりました」
「じゃあまた夕食でね」
「はい!」
マーサにアナベルをお願いし、私はディランを連れ自分の部屋へと向かった。
「そういえば二人はいつ頃帰ってくるのかしら?」
二人と言うのはもちろんジークとアンナのこと。
彼らも大切な私の家族。きちんと紹介したい。
「お二人とも夕食には間に合わないと仰っていました。おそらく食後のお茶の時間には帰ってくるでしょう」
二人とも忙しそう。
でもその時間なら紹介できそうでよかった。
それよりも……
「少し緊張するわね」
「アナベル様に別の姿をお見せに?」
「ええ」
今日、私はアナベルに自身の秘密を明かすつもりだ。
待ち合わせ場所で見せた転移魔法はそのはじまりである。
この世界で初めてできた友達。
隠していたことをさらけ出すのはどうしても不安になる。
失いたくない。でもこんな私を受け入れてほしいと願っている自分もいて。
矛盾しているのは分かっている。
けれどそう思ってしまうのだ。
「……」
もしも嫌われちゃったら、私はどうすれば……
「大丈夫ですよ」
「えっ?」
ディランの言葉に我に返ったが、一体何が大丈夫だというのか。
「アナベル様はどんなお嬢様でも受け入れてくださるはずです」
「……どうしてそう言いきれるの?」
「それは、お嬢様の人を見る目はたしかだからです」
人を見る目……
「私たち四人がその証拠にはなりませんか?」
「!」
その言葉にハッとした。
こんな私を信頼してくれている人たちがいる。
それならもっと自分を信じないといけないのでは?
そうじゃないとみんなに、そしてアナベルに失礼だ。
「……ディランありがとう」
「いえ、私はただ事実を言ったまでです。それでは私は夕食の用意をして参りますので、一旦失礼します」
「ええ、よろしくね」
一人になった私は、ソファにもたれ目を瞑った。
緊張なんてらしくなかったな。
……うん、大丈夫。
きっとベルは受け入れてくれる。信じよう。
私の心はもう定まった。