軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7巻発売記念SSーお祭り③

「リリが生まれた時に一番泣いていたのはフィオンじゃないかな?」

「あー……」

めっちゃ分かるぞ。なんなら想像だってできる。フィオンは本当にブレない。今日のことも見つからなくて良かったよ。

「ね、くーにいしゃま」

「ん? なにかな?」

「ふぃおんねえしゃまに、みちゅかりゃなくて、よかったれしゅ」

「ハハハ、本当だね」

見つからないうちに、さっさと行こう。フィオンが絡むと面倒で大事になっちゃうから。

そうして、いつもの超豪華な皇族の馬車ではなく、目立たないように控えめな馬車に乗って帝都にやってきた。

街はもうお祭りムードに溢れていた。街の中心にある広場や、大通りの両側には屋台が立ち並び賑わっている。それを馬車の中から見ていると、ワクワクしてきた。

「ねえ、にりゅ。まだおりないの?」

「まだですよ。エイル様のご実家の方々がおられる場所まで行きますから」

「しょう」

父方の祖父母はもう亡くなっているから、母の両親が俺には唯一の祖父母だ。

俺は覚えてない。俺が赤ちゃんの時に会ったきりだと言っていたし。母の両親ってどんな人だろう?

「にりゅはしってりゅの?」

「エイル様のご両親ですか?」

「しょうしょう。ボクは、おぼえてないかりゃ」

「気の良い方々ですよ。ふふふ」

なんだよ、その最後の「ふふふ」は? あの母の両親だろう? まあ、きっと普通のお貴族様じゃないよね?

馬車が止まり、オクソールが外から扉を開けてくれる。

「リリアス殿下、絶対にお一人にはなられませんように」

「うん、おく。わかってりゅよ」

「では、まずはご挨拶に参りましょう」

オクソールとリュカに護衛をされて人だかりの中を行く。俺はちびっ子だから全く周りが見えない。周りの人の背中しか見えないもの。こういう時はちびっ子って損だよね。

「殿下、人が多いので抱っこしましょう」

「うん、おく。おねがい。みえないの」

「何を見るのですか?」

「なにって、いりょいりょだよ。おまちゅりなんだかりゃ、やたいとかもみたいもん」

「ああ、殿下は初めてでしたね」

「おくはきたことありゅの?」

「はい、子供の頃は兄と一緒によく来ていましたよ」

「へえ~」

オクソールの子供の頃って想像できないんだけど。オクソールはオクソールだし。なんて、めっちゃ語彙力がないんだけど。

人だかりの中を少しだけ歩くと、大きなテーブルを並べられたところに着いた。

大きく場所を取っていて、ワインの樽を幾つも並べてあったりする。並びに低いテーブルがあってそこには可愛くラッピングされたクッキーやマドレーヌを女の人たちが忙しそうに並べている。

それを少し遠巻きに見ている子供たち。まだかな? て、きっと待っているんだ。

「お母様、お父様」

「まあ! エイルったら本当に来たのね!」

「エイル、陛下を困らせたら駄目だろう?」

母が年配の男女に抱き着いた。あの人たちの前では母も子供なんだ。

「リリ、いらっしゃい」

「あい」

オクソールに抱っこされたまま、俺は母のそばへ。

「大きくなったでしょう? リリよ」

「まあ! まあまあ!」

母が俺を紹介すると、母の母上が手で口を覆いながらポロポロと涙を流した。えっと、泣かれるなんて思わなかったから困るんだ。

「えっちょ、りりあすでしゅ」

「ご無事でなによりです。お会いできるのを楽しみにしておりました。私のことは是非じいじとお呼びください」

「じいじ?」

「はい、殿下。じいじです! オクソール殿、抱っこさせていただいでもよろしいですかな?」

「はい、もちろんです」

オクソールの腕の中から、じいじの腕の中へ。じいじなんて呼ぶにはまだ若い。前世の俺より若いのじゃないか? そのじいじが俺を愛おしそうに抱き上げる。

「私はばあばですよ。本当に大きくなられましたわ」

「ばあば、ありがと。なかないりぇくりゃしゃい」

「あらあら、ごめんなさい。ばあばは嬉しいのですよ」

「元気に大きくなられて良かった。本当によくご無事で」

じいじに抱っこされた俺をばあばが大事そうに優しく抱きしめてくれた。ああ、この人たちも俺のことを心配してくれていたんだ。

俺が湖に落とされたことは帝国中の人が知っている。じいじとばあばも、それを知っているのだろう。

だけど、気軽には会いに行けない。ああ、そっか。だから母は今日行こうと言ったんじゃないか? 両親に俺を会わせたくて。

「じいじ、ばあば、ボクはげんきれしゅ。ありがと」

「はい、はい。お元気そうで安心しましたわ」

「エイルに似ず、利発そうだ」

「まあ、お父様ったらそれはどういう意味ですか?」

「ハハハハ。お前はお転婆だからな。何を仕出かすか分かったもんじゃない」

やっぱそうだよね。俺もそう思う。そう言われた母はほっぺをプクッと膨らませている。いつもとは違う母を見ているみたいだ。

「侯爵、今日は無理を言ってすまない」

「クーファル殿下、何を仰います。リリアス殿下にお会いできて嬉しいことですよ」

クーファルがそばにやって来た時だ。周りに集まっている人たちから自然に声が上がった。

――クーファル殿下だぞ!

――じゃああの侯爵様が抱っこされているのはリリアス殿下じゃないか!?

――リリアス殿下だ!

――リリアス殿下!

――ご無事で良かったです!

ワアーッと歓声のように声が広がっていく。驚いて、思わずじいじの腕をギュッと掴んでしまった。