軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7巻発売記念SSーお祭り④

「皆、殿下を心配していたのです。元気なお姿を拝見できて嬉しいのですよ」

「ボクを? しんぱいしてくりぇてたのりぇしゅか?」

「そうですよ。殿下のお体だけでなくお心もです。お辛い思いをされたのではないかと」

そんな……俺と会ったこともないのに。ただ第5皇子ってだけなのに。

「リリは特別なんだ。そうあの光の大樹で話したろう? それを皆知っているんだ」

「くーにいしゃま……」

「それだけじゃありませんよ。小さな皇子殿下がお辛いだろうと心配していたのです」

「ほら、リリ。手を振るといいよ」

「ええー」

ニコッとしながら、クーファルが集まっている人たちに向かって手を振った。すると途端に歓声が女性の黄色い声に変わる。

――キャー!

――クーファル殿下!

――やだ! めっちゃカッコいい!

はいはい、一気にクーファル一色になっちゃったじゃないか。本当にイケメンったら。

「リリも手を振ると喜ばれるわよ」

「かあしゃま、けりょ、はじゅかしいれしゅ」

「何言ってるの。皇子なんだからこれくらい慣れなさい」

ええー、まあ皇子なんだけど。恥ずかしいから、遠慮気味に手を振ってみる。

すると、ワアーッと歓声が起きた。会ったこともない第5皇子の俺を心配してくれてたんだ。喜んでくれたのなら俺も嬉しい。

「さあさあ、もうおしまいよ。皆もお祭りを楽しんでちょうだいね!」

ばあばがパンパンと手を叩きながら、集まっている人たちに大きな声で言った。

いやぁ、本当に母の両親ってびっくりだよ。侯爵家っていうからもっと肩の凝る貴族って感じかと思ったら、やっぱあの母の両親だ。場をばあばが仕切っている。

「うちは女性が強いみたいなんだ」

「じいじ、しょうなのれしゅか?」

「ああ。エイルも母親そっくりだ。ほら、もう二人で仕切っているだろう?」

「ふふふふ」

確かに、ちゃんと民たちを並ばせたりとか、子供はこっちとか。いつの間にか集まっていた人たちがちゃんと整列していたりする。男性は荷出しに徹している。それを並べて人をさばいているのも女性陣だ。

「リリアス殿下の母も強い女性だぞ」

「じいじ、リリれしゅ」

「ん?」

「リリれいいれしゅ」

「そうか、そうか。リリ!」

嬉しそうに破顔したじいじ。だってなんだか距離があるじゃないか。確かに皇族だけど皇子だけど、それでもじいじの孫だ。だから気兼ねしないで「リリ」と呼んでほしい。

「じいじ、てちゅだわなくてもいいの?」

「まあ、私たちはあまりすることがないんだ」

「ええー、ふふふふ」

「女性陣が仕切っているからな。ハハハハ」

そこにまた一人やって来た。フレイと同じくらいの歳の青年だ。目をキラキラさせて俺を見つめながら早足に歩いてくる。

「リリアス殿下ッ!」

「えっちょぉ……?」

「これ、殿下が驚いておられるだろう」

「父上、俺にも抱っこさせてください!」

「こら、まずは自己紹介しなさい」

「あ、そうでした。リリアス殿下、お初にお目にかかります。エイルの弟でフォールと申します! お会いできて嬉しいですッ!」

「リリれしゅ」

ペコリとしておいた。なんだか誰かに雰囲気が似ている。

「父上! 抱っこ代ってくださいッ!」

「ああもう、お前は煩いんだ」

「殿下、俺のことはにいにとぉッ!」

「え」

「『にいに』ですッ!」

圧が強いな。ほら、似ているだろう? このテンション高めな感じがさ、いつも俺のそばにいる誰かに……。

「殿下ぁーッ! 向こうにとっても美味しそうなのがありますよぉッ!」

ほら、シェフに似てるんだ。この賑やかな感じがさ。

「シェフ、ついて来ていたのか?」

「クーファル殿下、当たり前ですッ! リリアス殿下のおそばを離れませんよぉッ! 私はリリアス殿下のシェフですからッ!」

いやいや、そこはシェフは関係ないじゃない。ふふふ。

「にいに、ボクはリリとよんでくりゃさい」

「おおーッ! 良いのですか!? リリ!」

「アハハハ! リリ、フォールはいつもこんな感じなんだ」

クーファルも知り合いだったのだけど、フォールはフレイと同級なのだって。だから学園でよく顔を合わせていたらしい。

「気のいい奴だよ、少しうるさいけどね。ふふふ」

そう言ってニッコリとした。それは良いのだけど、シェフと二人で俺の取り合いをしているこの場をなんとかして欲しい。

「だからぁッ! 俺が抱っこしますって!」

「いえいえ! 私がぁッ!」

「ああもう! 私が孫を抱っこして何が悪い!」

「アハハハ!」

クーファル、笑ってないでなんとかしてくれよ。母はどこ行った!?

そう思って探してみると、いたよ。もうばあばと一緒に街のちびっ子にクッキーを配っているじゃないか。ニルまで他の女の人と一緒に品出ししていたりする。

「たくさんあるから、慌てないで大丈夫よ~!」

なんて言いながら良い笑顔でクッキーを手渡している。

そんな母を見て思った。母はこの環境で育ったんだ。だからあの母なんだって。

俺のことになると、なんでも全力だ。一緒に笑ってくれて、一緒に泣いてもくれる。そんな母が俺は大好きだよ。

「じいじ、じいじ」

俺を抱っこすることで、白熱しているところ悪いんだけど。

「ん? どうした?」

「かあしゃまと、ばあばのところにいく」

「え、そうなのか?」

「うん、おてちゅだいしゅりゅの」

「そうかそうか。じゃあ、じいじが連れて行ってやろうな」

「うん」

シェフとにいにが残念そうな顔をしているけど、俺も一緒に手伝いたいんだ。せっかくお祭りにきたのだから。