作品タイトル不明
第131話 黒鉄の守護者
次の階に行くと、そこは青く光る空間だった。
岩壁や石柱は今までと違い、青い結晶でできている。しばらく歩くと、やはり開けた場所があり黒い塊のような物が置かれていた。
ラーゼスは無言のまま、黒い塊の前まで行く。
「なんなんだ。それは?」
『先ほどのハヌマーンと共に、長年私を守ってくれた者だ』
守る? どういうことだろう……。
俺が考えていると、黒い塊はゆっくりと浮き上がり形を変えていく。それは金属のような重々しい音を立てながら丸みを帯びた形になっていった。
形だけなら 宙(ちゅう) に浮く黒い雪だるまのようだ。10メートル以上はあるだろうか…。
その上、何も無い空間から巨大な剣が何本も現れて空中に浮き上がり、雪だるまを中心にクルクルと回っていた。
「これは……」
『君が倒したハヌマーンと同じ“神託の獣”だ。これも私が作成した物だが』
「これとも戦えっていうのか?」
『そうだ』
「何が目的なんだ? 俺とこいつらを戦わせてどんな意味があるんだ!」
『それは、この 守護者(ガーディアン) ゴーレム・ラベリアを倒して下の階に行くことができたら教えてあげよう』
ラーゼスがそう言うと、ゴーレムはゆっくりとこちらに近づいてくる。
「仕方ない」
俺は剣を抜き、下段に構えた。
ゴーレムを中心に回っていた大剣が、俺に向かって高速で飛んでくる。持っていた剣で斬り払い、相手の能力を慎重に観察した。
ゴーレムは何もない空間から更に剣を作り出す。
地面に落ちた剣も浮かび上がり、空中で俺に切っ先を向ける。こいつも厄介そうな奴だなと思いながら鑑定を行使すると――
守護者ラべリア
ゴーレム Lv4326
■ ■ ■
■ ■ ■
かなり強い“統率者”だな。俺は剣に炎と雷の魔力を込める。
雷炎の魔法剣で向かってくる剣を 弾(はじ) きながら、雪だるまのような黒い胴体に斬りかかった。剣はキンと高音を鳴らして弾かれ、ゴーレムには傷一つ付いていない。
何度か斬撃を当てるが、まったく効いていないようだ。
「物理攻撃の耐性が強いのか……それなら」
俺は剣を 鞘(さや) にしまい。両手に魔力を集める。左手に“雷帝”の魔法を、右手に 地獄の極大業火(インフェルノ) の魔法を宿し、二つを合わせた複合魔法を唱えた。
「―― 雷神滅火(らいじんめっか) ――!!」
激しい炎を纏う稲妻がゴーレムに降り注ぎ、黒い体を貫き大地を粉砕する。
炎と煙が辺りを覆い、ゴーレムの姿は見えない。どれぐらい効いているか確認するため警戒しながら見ていると……。
粉塵の中から飛び出したゴーレムはまったくの無傷だ。魔法の耐性も高いのか……一筋縄ではいかない敵ばっかりだな。
七本の大剣を体の周りで 袈裟(けさ) のように回転させながら俺に迫ってくる。
速さ自体はそれほどでもないので 躱(かわ) すのは難しくないが、数本の剣は独立した動きをし切っ先を真っ直ぐ俺に向け飛んでくる。
高速で俺を突き刺そうとする剣を、自分の持つ剣で弾きながら相手の攻撃を 捌(さば) いていく。一度払った剣も、また浮き上がり向かってきた。
「キリが無いな……」
飛んできた剣を弾き飛ばした後、俺は自分の剣を地面に突き刺す。
両手を前に出し、手のひらを合わせ少しだけ間を空ける。強力な光が集束していき、手と手の間に莫大なエネルギーが集まった。
ゴーレムは俺に向かって三本の剣を同時に飛ばしてくる。
「ドラゴンブラスト!!」
俺の手から放たれた光は飛んできた三本の剣を消滅させ、ゴーレムに直撃した。黒い雪だるまのような体は三分の一が消失している。
消滅の光はそのまま洞窟の壁に当たるが、拡散するように消えてしまった。壁に穴が開くかと思ったが、やはりこの洞窟は普通じゃないようだ。
『さすがだね。その能力がある限り、防御力が高いだけの敵は君の相手にはならないようだ』
ラーゼスが感心したように言っているが、今はどうでもいい。 止(とど) めを刺すため俺は再び両手の間にエネルギーを集めようとするが……。
うまく集まらない。そうだ……確かドラゴンブラストは連発できないんだったな。一撃で仕留めないといけないか。
そんなことを考えていると……。
『せっかくなら剣の能力を試してみたらどうだい?』
ラーゼスの言葉を聞いて思い出した。以前、鑑定した時エクスカリバーには特殊な能力が付属されていると表記されてたな。
改めて鑑定してみると――
【一定の衝撃を受け続けるとそのエネルギーを斬撃に変えることができる】
やはり、強力な攻撃ができるようだ……思い出せば黒騎士の放った斬撃は 途轍(とてつ) もない威力だったからな。
試すには丁度いい相手かもしれない。
だが、ラーゼスに行動を誘導されている感じがして気分は良くないな。あの男には何か考えがあるんだろうか……?
そんなことを考えている間にゴーレムは失った剣の本数以上の剣を何もない空間から造り出した。剣の数は合計八本になっている。
ゴーレム自身も破損した体を修復して、元通りの姿に戻っていく。
やはり、のんびりダメージを与えて倒せるような敵じゃないか……。飛んでくる剣を薙ぎ払いながら本体にも斬撃を加える。
剣は弾かれ、本体にも剣にも傷を付けることができない。
そんな攻防を何度か繰り返していると、エクスカリバーが少しずつ光りだしている。受けた衝撃のエネルギーを貯めこんでるのか?
大剣を全力で斬り払い、剣に最大限の力が溜まったと確信する。
「その力を解放しろ―― 王が振るう聖剣(カレトヴルッフ) ――!!」
剣は光り輝き、溜まっていたエネルギーが放出された。剣を斬り下ろすと伸びた光の剣先が天井を斬り裂きながらゴーレムに向かう。
ゴーレムは自分の身を守るため八本の剣全てで防御態勢を取り、受けきろうとしているが光の剣はその全てを真っ二つにし本体に直撃する。
黒鉄の体は豆腐のように簡単に刃が通り、ゴーレムを両断した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ラーゼスはその戦いを少し離れた場所から見ていた。
五条の剣技は自分の見知った友人によく似ている。ラーゼスは 懐(なつ) かしくも悲しい気持ちでその友人のことを思い出す。
『見ているかアイアス、君の剣を受け継いだ者の戦いを』
五条が剣の力を解放し、ラべリアを斬り裂いた。
長らく自分を守ってくれた 守護者(ガーディアン) が倒されるのを見るのはなんとも忍びない気持ちのラーゼスだったが、この先に必要な過程だと理解している。
五条は傷の入ったラべリアの体に黒い炎を放ち、 止(とど) めを刺す。
『やはり、 君(・) た(・) ち(・) は彼の中で生きているんだね……』
そう言うとラーゼスは静かに目を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
分断されたゴーレムは致命傷だったようで、再生する気配はない。だが完全に機能を停止したわけでもなさそうだ。
俺は念のため魔法を放って決着を着けることにした。
「複合魔法 ―― 不浄なる死者の国(ヘルヘイム) !!」
ゴーレムは黒い炎に包まれる。破損した体では魔法に対する完全な耐性は発揮できないだろう……黒い体は崩れ落ち、その活動を止めた。
「テイム!」
光の魔法陣が現れ、ゴーレムの残骸を飲み込んでいく。リストボードを確認するとゴーレムの名前が明記されていた。
【テイム】
神格種 ヴィシュヌ SSS
神竜 ヒュドラ SSS
岩の巨人 タイタン SSS
炎竜王 シヴァ SS
守護者 ラべリア SS
羅刹種 ラーヴァナ SS
獣人種 ハヌマーン S
妖精種 スプリガン AAA
魔獣種 キマイラ AAA
精霊種 不死鳥 AA
金属の巨人 ギガス A
竜種 飛竜 B
『無事、倒せたようだね』
ラーゼスが 淡々(たんたん) とした口調で話しかけてきた。この男には聞きたいことが山ほどある。
「いい加減、あんたのことを教えてくれ。何が目的でこんなことをしてるんだ。ガチャを作ったって言ってたが何故そんなことをした?」
『君の質問には答えよう。だが、その前に“勇者”の職業ボードが最高レベルに達しているようだよ』
「え?」
俺はステータスを確認すると確かに“勇者”の職業ボードがカンストしている。そこには今までとは明らかに違う部分があった。
勇者 Lv99
【職業スキル】
光の加護 A → SSS 称号“光へ導く者”
獲得スキル 成長加速×5
獲得魔法 光魔法 ×5
勇者の【職業スキル】が一気にトリプルSになってる。
『それは特殊な職業ボードでね。簡単にはレベルが上がらないが、最高レベルに達すれば【職業スキル】を3段階上げることができるんだ』
3段階? そんな凄い職業ボードだったのか……。
『さあ、戦いは一旦終わりだ。次の階に私の本体がある。そこまでくれば、君に全てを話そう』
ラーゼスはそう言って下の階へと降りていった。