作品タイトル不明
第126話 激突
剣と剣がぶつかり、互いに距離を取って俺と黒騎士は睨み合った。
どうやらレオたちの方は決着がついたようだ。
こちらも、対黒騎士用に考えてたことを試すか……。俺は建物の陰に隠れていた獣に大声で呼び掛ける。
「行け! キマイラ!!」
神速の獣は猛然と飛び掛かり、その爪と牙で黒騎士を引き裂こうとする。戦いが始まる前に召喚しておいた。だが――
『次元斬!』
黒騎士の一閃でキマイラはバラバラに切り裂かれ、黒い煙となって消えていく。やはり、いつもの速さがない……。
キマイラの固有スキル“神速”も黒騎士の前では使えなくなるようだ。
不死鳥も黒騎士に気づかれないように待機させていたが………。俺は召喚の魔法を解き、不死鳥を消した。
黒騎士相手だと不死鳥の固有スキル“不死身”も通用しないだろう。殺されてしまうと生きたままテイムしたメリットが全て消えてしまうからな。
改めて黒騎士と向かい合う。
俺自身でコイツと決着をつけなければならない。黒騎士と俺は同時に踏み出し、互いの剣が交錯する。
『次元斬!』
「次元斬!」
空中で 格子状(こうしじょう) の斬撃がぶつかり、衝撃が広がる。
互角か……パワーやスピードなどは“光の加護”が無くても俺の方が上回っているはずだ。それでも俺の動きに付いてくる。
身体能力の差じゃない。経験の違いなのか?
俺は元々ただの一般人だが、あいつは戦闘のプロのような感じがしていた。流れるような動きで斬撃が飛び、 捌(さば) こうとすれば変幻自在の動きで剣筋が変わる。
剣の腕ではやはり 及(およ) ばないか……だけど!
剣で剣を受け止め、刃はギリギリと音を立てる。俺は“気功”を 纏(まと) った左足で黒騎士の腹を蹴り抜いた。
黒騎士はもんどり打って後ろに下がり、 堪(たま) らず膝をつく。
接近戦で俺は剣、魔法、打撃の三つの攻撃手段を持つが、黒騎士は剣と魔法の二つしか攻撃手段が無いはずだ。
あいつが打撃で攻撃してきても俺には効かないだろう。
ここにきて俺は自分の強みがなんなのか分かってきた。一気に勝負を決めようと距離を詰め、俺は黒騎士に斬りかかろうとする。
その瞬間―― 俺の体に 悪寒(おかん) が走った。
黒騎士の剣が光りだし、凄まじいオーラを放ち始める。俺は左足で地面を強く踏み、ギリギリ立ち止まった。
黒騎士の持つ剣は更に輝きを増し、空に届くほどの一筋の光となる。それを迷うことなく俺に向かって振り下ろす。
『解き放て――カレトヴルッフ――!!』
その閃光は剣を持った俺の右腕を切り落とし、大地を両断した。
「――っ!!」
危ない……反応が遅れていたら真っ二つになってる。
剣を振り抜いて、隙ができている黒騎士をおもいきり殴り飛ばす。拳が当たる瞬間、爆発したように“気”が弾け、黒い鎧がメリメリと音を立てる。
数十メートル吹き飛んでいる間に、俺は右手に回復魔法を使い再生させていく……。この威力、一瞬ではあるが最大出力のバルムンク並だ。
これほどの技があるなら何故今まで出さなかったんだ? 使うのに何か条件があるんだろうか?
黒騎士はすぐに体勢を立て直す。ダメージはあるはずだが……。
俺は【盗賊】の職業スキル“強奪”があるため相手にダメージを与える度に傷を回復できるが、あいつは回復魔法を使っている様子もない。
時間が経てば経つほど俺が有利になるはずだ。
黒騎士は剣を構え俺に向かって突っ込んでくる。右手が完全に再生し、落ちている剣を拾い上げ迎え撃つ。
黒騎士が振り下ろした剣を自分の剣で受け、ギリギリと 鍔迫(つばぜ) り合いをする。相手の顔を間近で見ることになるが、顔全体を 覆(おお) う 兜(かぶと) の中は見ることができない。
そして、この剣……。もの凄い硬度と切れ味だ。レオのデュランダルと互角か、それ以上の 代物(しろもの) だろう。
俺は生徒からもらった 竜燼刀(りゅうじんとう) に“気功”を流し込み何とか強度を保っているが、それでも黒騎士の剣には遠く及ばない。
このまま斬り合えば、いずれこちらの剣が破壊されてしまう……。俺は剣を弾き、左足で上段に回し蹴りを入れるが黒騎士に右手でガードされた。
そしてこの 鎧(よろい) も、俺が全力で打撃を与えても 中々(なかなか) 破壊できない。
相当な防御力があるようだ……。
◇◇◇◇◇◇◇◇
五条と黒騎士の戦いは凄い速さで繰り広げられている。
「レオ! 私たちも協力した方がいいんじゃない!?」
フレイヤが心配そうに言ってきたが……。
「あの戦いに俺たちでは付いていけないだろう。ヘタに手を出せば、かえって五条の足を引っ張りかねない」
五条は一度負けている。もう一度やられるとは思えないが心配する気持ちは分かる。子供たちに目を移すと真剣な眼差しで五条の戦いを見ていた。
この子たちは五条が負けるなんて欠片も思っていない……。
そうだな……俺たちも信じて見守るしかないんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
黒騎士と剣を交わす 度(たび) 、少しずつではあるが剣の技量の差が埋まってきている。“模倣”で黒騎士の剣技を覚えていってるんだ。
“暗殺術”でわずかな隙が見えると、そこに打撃を入れていく。
俺の裏拳に黒騎士の 兜(かぶと) が 軋(きし) む。顔は見えないが打撃が当たる 度(たび) に血を吹き出していた。
ヨロヨロとした足取りになるが、それでも迷わず向かってきて剣を振り下ろす。もう以前のようなキレが無くなってきた。
「決着をつけよう……黒騎士!」
自分が持つ剣に“気”と“雷”と“炎”の力を宿す。三位一体となり黄金の炎が剣から噴き出した。
黒騎士は剣を引き、 煌々(こうこう) とした輝きが剣全体を 覆(おお) う。
お互いが一歩踏み出し、最強の剣技が繰り出される。
「複合魔法剣―― 神鳥滅殺魔炎斬(レーヴァテイン) ――!!!」
『――カレトヴルッフ――!!!』
二つの剣は激しくぶつかり合い、その衝撃は大気を引き裂く。
俺の持つ 竜燼刀(りゅうじんとう) は衝撃に耐えきれず粉々に砕け散る。黒騎士もまた剣を弾き飛ばされ、後ろへ吹き飛ぶ。
俺は 間髪容(かんはつい) れず一歩踏み出し、黒騎士に向かって突っ込んだ。
「剣を手放したな、お前の負けだ!」
俺の左の 拳(こぶし) が黒騎士のみぞおちに深々とめり込む。体はくの字に曲がり、黒騎士は大量の血を吐き出した。
俺は足を更に踏み込んで相手の腕を 掴(つか) み、右足を垂直に蹴り上げる。黒騎士の 顎(あご) に当たり、体が 宙(ちゅう) に浮いた。
俺は 跳躍(ちょうやく) し、右拳を左手で包み振り上げて黒騎士の胸めがけてそのまま振り下ろす。黒騎士は地面に叩きつけられるが、必死に転がりながら逃れようとする。
俺は追撃をやめることなく黒騎士に迫ると、黒騎士は立ち上がり腰から短剣を取り出した。……まだ武器を持っていたのか。
そう思ったが、もう止まることはできない。
俺の拳を 躱(かわ) すと、持っていた短剣で俺の腕を突き刺した。短剣は腕を貫通し、血が流れ出す。
だが俺は構わず左腕に力を入れ、短剣を抜けなくすると右の拳を思いっきり振り抜いて黒騎士の顔面を殴り飛ばした。
黒騎士は短剣から手を放し、地面に叩きつけられる。
俺は左手に刺さった短剣を引き抜き、その場に投げ捨てた。そして倒れている黒騎士に向かって歩き出す。
黒騎士はふらつきながら、なんとか立ち上がろうとしていた。
地面を蹴り、急加速して黒騎士に迫る。相手は炎の魔法を放ったあと殴り掛かってきたが、そんな付け焼刃が俺に効くはずがない。
俺は体の中の“気”を爆発させる。両手と両脚に大量の“気”が流れ込み、力が 溢(あふ) れ体が発熱してゆく。
俺が振った拳は黒騎士の兜の一部を破壊し、相手の首は引き千切れるかと思うほど大きくはね飛ぶ。
間髪容れずに 怒涛(どとう) のラッシュを 浴(あ) びせかけ、胸、肩、腹、腕の鎧が砕けていく。
頭突きを喰らわせれば 兜(かぶと) が破損し、黒騎士の顔の一部が見えてきた。
腕を 掴(つか) み柔道の一本背負いのように相手を投げ飛ばす、背中からまともに地面に落ちた黒騎士は激しく吐血し、動けなくなる。
俺は全ての“気”を右手に集めた。
止(とど) めの一撃を入れるため黒騎士の真上から、右拳を振り下ろす。一瞬、“念話”を通して黒騎士の感情が俺の中に流れ込んできた。
『………ありが…とう………』
拳(こぶし) は黒騎士の腹に直撃し、衝撃で大地に亀裂が入った。
黒騎士の足は跳ね上がるが、地面に落ちるとそのまま動かなくなる。 土煙(つちけむり) が舞い上がり、静けさが辺りを包む。
「終わった……」