軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第125話 不死身の怪物

「五条!」

本当に生きていた………。 諦(あきら) めかけていたが、子供たちが信じたようにあいつは簡単に死ぬような奴じゃなかったな……。

「エリアス、フレイヤの回復を頼む!」

「ああ、分かった」

フレイヤと飛竜は雷撃を受けてかなりの傷を負っている。俺は回復をエリアスに任せ、五条のもとへ向かった。

「五条、無事だったか」

「レオ!」

五条からは以前よりも力を感じる。この数日で何かあったのか?

「負担をかけてすまなかった」

「いいんだ、五条。お前に頼り過ぎていた俺たちが情けないだけだ」

「黒騎士は俺が相手をする。“統率者”は任せていいか、固有スキルを全て封じられた状態で戦うのは、かなりキツイからな」

「“統率者”は俺たちが相手をする。ただ一つ頼みがある」

「なんだ? なんでも言ってくれ」

「黒騎士を“統率者”から引き離してほしい。あいつらは一定距離を保っている。恐らく相性がいいのを分かってるんだ」

「“統率者”は戦闘系の固有スキルを持ってないのか……分かったやってみる」

五条と話をした後、俺はすぐに“朱雀”やカルロ、子供たちが押さえてくれている“統率者”のもとへと向かった。

全員で攻撃を集中できれば決して勝てない相手じゃない。

◇◇◇◇◇◇◇◇

瓦礫(がれき) を押しのけ、黒騎士が立ち上がる。

俺は剣を中段に構え、相手の動きに警戒した。今の俺なら黒騎士に後れを取るとは思わないが、不気味な相手なだけに何をしてくるか分からない。

黒騎士はおもむろに剣を空にかかげた。剣が輝きだし、その光が全身へと移動していく。

『 太陽の恩恵(ヘリオス) 』

なんだ? 光魔法か……そう思った瞬間――

黒騎士は爆発的な加速で俺の目の前に迫った。剣と剣がぶつかり合い、力と力がせめぎ合う。

速度もパワーも格段に上がっている。これは……。

「光の加護! まさか、さっきの魔法の効果か!?」

俺は力ずくで相手の剣を弾き飛ばし、態勢を立て直す。まさかこんな奥の手があったのか……だとしたらマズイぞ。

相手は“光の加護”の効果を得られるが、俺は“光の加護”の効果を得られない。夜に戦いを挑んだのは失敗だったな。

今、俺の体は“闇の加護”が発動している。

だが、この能力は知力、防御、魔防などを上げる効果はあるが剣での戦いではあまり役に立たない。

特にあいつの剣撃は多少防御が上がったぐらいでは防げないだろう。

「少し 面倒(めんどう) になりそうだな……」

◇◇◇◇◇◇◇◇

その“統率者”は5メートル近い体格で、青い皮膚に赤い目の怪物だ。十数本ある腕は独立して空を飛び、それぞれが強力な魔法を使ってくる。

戦っている者は腕一本を相手にするのも苦戦していた。

「レオ! 私たちが気を引いている間にデカイ一撃を頼むぞ」

「分かった!」

王が“朱雀”メンバーを 率(ひき) いて“統率者”ラーヴァナに攻撃を仕掛けていく。俺は持っている剣【デュランダル】に風の魔力を集めた。

他のメンバーや子供たちが魔法を使う“腕”を押さえてくれている。

今のうちに俺も自分の役割を果たす。集まった風の魔力は剣の周りに渦巻き、大気はピリピリと緊張するように張り詰める。

両手で剣を持ち、上段に構えラーヴァナの頭めがけ全力で振り下ろす。

「 北冷突風斬(ボレアース) !!」

本体を守ろうと飛んできた腕ごと叩き斬る。だが狙った頭は 外(はず) し、肩口から下腹にかけて切り裂いた。

かなりのダメージは受けているはずなのに、平然と歩き俺を殺すために三日月形の剣を振り上げる。

「レオ! 伏せて」

後ろから聞こえてきたのはフレイヤの声だった。エリアスに回復してもらったフレイヤは飛竜に騎乗し、超低空飛行でこちらに迫ってきた。

俺はとっさに頭を伏せる。

「 聖竜鋼断剣(アスカロン) !!」

フレイヤが放った一閃は、ラーヴァナの首を切り落とした。跳ね飛んだ首は地面に落ち、黒い煙となって消えていく。

「よしっ!」

“統率者”を倒せた。そう思ったが………。空を飛び回っていた腕がそのまま戦っている。本体が死んだのに何故だ。

見るとラーヴァナの体はむくりと立ち上がり、首の部分の肉が盛り上がり一瞬で元の頭が再生した。

「下がって! 今度は僕がやります!!」

ノアが持っていた銃を連結させ、長くて大きな銃にする。

「エミリー、お願い!」

「うん!」

銃のすぐ前に黒い魔法陣が展開され、ノアが放った弾丸は魔法陣を突き抜け闇を 纏(まと) いながらラーヴァナに向かっていく。

胸に着弾すると貫通し、大きな風穴を空ける。

今度は心臓を失ったはずだ。期待したが、ラーヴァナはわずかによろめいた後、何事も無かったように胸を再生させる。

「こいつ不死身なのか……!?」

ラーヴァナは左手に持つ金色の魔道具を上に振った。辺りに数千の稲妻が落ち俺たちは吹き飛ばされる。

空を飛ぶ腕が放つ魔法で周囲は炎に包まれ、風の刃が無数に飛んできた。水は弾丸のように降り注ぎ、大地は割れ、飛び出した岩が襲ってくる。

「くそっ!」

全員がボロボロになりながらもなんとか耐えている。そんな事には構うことなくラーヴァナは三日月型の剣を振り上げ、俺に向かって振り下ろす。

ギリギリで 躱(かわ) すが、剣圧だけで大地が数十メートル切り裂かれる。

こいつは近距離を剣で、中、長距離を雷撃で行うのが基本的な戦闘スタイルのようだ。そのうえで複数の腕が独立して攻撃してくる……。

加えて不死身か……俺たちの攻撃も積極的に避けようとしてない。通じないことが分かってるのか?

俺は戦っている五条の方に目を移す。

黒騎士は五条とほぼ互角に斬り結んでいる。かなり強くなったと感じる五条と渡り合うなんて黒騎士の強さにぞっとした。

だが、五条が押しているのは明らかだ。徐々に“統率者”との距離は離れていっている。

「エミリー! まだ使えないか!?」

エミリーは首を横に振り、申し訳なさそうな表情をした。あの子が悪いんじゃない、五条が頑張ってくれてるんだから、俺もそれに応えないと――

「フレイヤ!」

フレイヤに目で合図を送り、ルカには手で合図を送る。俺の 意図(いと) に気づいた二人はすぐに行動に移す。

ルカが同時に放った三本の矢は、ラーヴァナに当たり爆発した。間髪入れずにフレイヤが 唱(とな) えた光魔法の攻撃が炸裂し“統率者”を一歩後退させる。

その 隙(すき) にラーヴァナの 懐(ふところ) に入り込んだ。

飛び回る腕は、みんなが死ぬ気で押さえてくれている。俺は全ての魔力をデュランダルに 注(そそ) ぎ込み斬撃へと 繋(つな) げる。

「喰らえ! 東雨突風斬(エウロス) !!」

ラーヴァナの胸を深々と 抉(えぐ) り、大量の血が噴き出す。一歩下がったところに更に畳み掛けようとしたが二本の腕が襲い掛かってきた。

王(ワン) が割って入り、一本の腕を棍棒で薙ぎ払い、もう一本の腕を蹴り飛ばす。だが、その際に風と氷の魔法をまともに受け地面に叩きつけられた。

「止まるなっ!」

「すまん、王!」

俺はラーヴァナの眼前で剣を横に振り切る。

「 西穣突風斬(ゼピュロス) !!」

渾身の一閃で首を跳ね飛ばした。更に一歩下がるが、首は急速に再生してゆく。まだ完全に再生していない段階で右手の剣を振り下ろしてくる。

だが、アンナがラーヴァナの横っ腹に炎の魔法剣を突き刺していた。

「私だって役に立てるのよ」

ラーヴァナは剣を振るのを止め、裏拳でアンナを殴り飛ばした。血を吐きながら吹き飛んでいく仲間を横目で見ながら歯を食いしばり剣を構える。この機会は無駄にはしない。

俺は最後の魔法剣をラーヴァナに叩き込む。

「―― 南炎突風斬(ノトス) !!」

相手の胸に突き刺した剣は灼熱の風を巻き起こし、心臓を焼き尽くす。ラーヴァナは 堪(たま) らず一歩下がる。

どうだ―― 俺はエミリーを見た。

「みんな、そこから離れて!!」

エミリーは強い眼差しで杖をかかげる。俺はその場を飛び退いた。

ラーヴァナの真下に闇が広がり、円形の沼のような闇に足を取られ必死に 藻掻(もが) くが抵抗 空(むな) しくゆっくりと沈んでいく。

「―― 暗黒の捕食者(ダーク・イクリプス) ――!!」

暗黒の沼は端から盛り上がっていき巨大な口のような形となって、ラーヴァナを飲み込む。

“統率者”は為すすべなく闇の中に消えていき、空を飛んでいた“腕”は黒い煙となって 雲散(うんさん) する。

俺を含め、戦っていた人間は 呆然(ぼうぜん) とその光景を眺めていた。

「本当に凄い子供だな………」