軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百九十三話 Side巨鬼獣カオスオーガ VS人

Side巨鬼獣カオスオーガ

『やはり大きいと言っても限度がありますね。どこまでも大きくすれば強くなるというわけでもないようです。ギガはうまく行ったのですけどね。しかし、超越者としてはなんとか使えるでしょうか』

『この子はどうしますか?』

『世界に放って大丈夫かと。失敗はしましたが私たちの役には十分立ってくれるでしょう』

俺の頭の中はそんな記憶から始まっている。生まれてすぐに父と母に捨てられたのだと頭の中には残っている。自分は出来が悪かったのだ。だから父と母に捨てられた。そんな思いだけが俺の中にある。

『ローレライは失敗だと言ってましたが、あなたはあなたです。友達というものになってくれそうなものたちに声はかけておきます。幸せになりなさい』

それは俺の中に強烈な寂しさとして残った。俺は生まれた時から体が100メートルあった。気づいたら地上にいてゴルドロックと呼ばれる岩山と崖の多い地域に捨てられていた。そこはゴルドオーガというオーガ族が支配していた。

俺の完全な漆黒の肌と違い、奴らは金色がかった肌をしていて、それがゴルド、ゴールドの由来となっているらしい。身長は人の倍ほどある。筋肉質で人よりもはるかにごつい。それでも俺から言わせれば小さい。

幅広い顎と大きな鼻。牙が突出していて、頭の上には角がある。俺のように大きな角ではなく、それはちょっと控えめだ。ゴルドの中では角は大きいほど強いと言われていて、俺はそういう意味でも尊敬された。

ともかく肌の色と角以外は俺の見た目とよく似ていた。とても強くこの地では最強モンスターとして君臨している。そしてモンスターにとっては強さこそが全てである。だから、どう見ても強そうな俺はゴルドに歓迎された。

『絶対神セラスより、あなたを一族の長として、迎え入れるようにとご指示がありました。これより我らはカオスオーガ様を長と定め、生きていくことを誓います』

比較的大きな1本角が生えた若くたくましいオーガだった。レベルは一族の中で一番高く498あるのだそうだ。試しに軽く張り飛ばしてみたが、岩壁の中に食い込んで、生きていたので驚いた。

『お前、すごいな。よく生きてた』

『こ、これでも鍛えておりますから』

『名前、何と言う?』

何という名前だったか。最初は覚えていたのだが死んでから100年が過ぎて忘れてしまった。ただあの頃の記憶だけが鮮明にある。俺のゴルド族の長として生きていく立場は、なかなか楽しかった。

やつらは確かに強かったし、何人かの女は俺が好きだというので娶った。ただ俺は大きさを変えることができず、ゴルドオーガと同じ大きさになることはできなかった。これだけ大きさが違えば、子供はできないのかと思っていた。

だが、何人もの子供が生まれた。父と母に捨てられたことは悲しかったが、地上に捨てられた場所には文句がなかった。何しろゴルドオーガは全員俺を尊敬していたし、そのことを楽しいと思う自分もいた。

『見晴らしがいいだろう?』

『はい。やはりカオス様の肩の上は眺めが抜群です。歩くと空を飛んでるみたいです』

『そうか。では手の上に乗ってみろ』

『カオス様高ーい! すごーい! 空だ!』

その中でも特に気に入ってる女がいた。その女は他のゴルドからはあまり好かれてなかったが、人の女に近い見た目をしていて、その姿が母を思い出させてくれるから、俺は大層気に入った。

『空か』

『はい。実は一族には隠してるんですけど、カオス様にだけ話しますね。私人間の血が混じってるんです。お母様が人間と恋して私が生まれたってこっそり教えてくれました。その男はいなくなって、お母様はお前なんか生まれなきゃよかったって』

『それは悲しいな』

捨てられるのは悲しい。そのことは俺の中にも強く残ってる。

『でも、カオス様にこうしてもらってるとそれでも良かったなんて思えるんです。カオス様は私のこの姿を気に入ってくれたから』

俺は空を飛べなかったが、そいつがそんな風に喜んでくれるのが嬉しかった。あいつの名前も何だったか。100年経った辺りから思い出せなくなってしまった。

みんな俺の記憶の中から消えていく。それはあいつらの責任じゃない。俺の責任だ。もっと、もっと強ければよかったのだ。ただただ俺が弱かった。それが俺の罪の名前だった。そして俺の罪は今も続いてる。

『カオス様。お隣の地域から使者が来ています』

『使者?』

『はい。お隣はザング王国という国なんですけど、こっちにちょっかいかけてくることが多いんですよね。でもカオス様がここに来てからは、全然構ってこなかったんですけどね』

この世界は母セラスの聖羅国を一番として、その他全て従属国となっている。しかし母は基本的に他の国が何をしていようと、介入してくることはない。ギガという最強生物が魔王になりかけた時は介入したとは聞いてる。

だが、細かい国同士の争いなどは何もされないことがほとんどだ。俺たちの地域はザング王国の右隣にそこそこ大きな勢力を築いている。

国ではなくモンスターが支配している地方という扱いで、説明を聞いたところザング国にとってはとても邪魔でいつも支配してしまいたいと狙っていた。しかしゴルドオーガはそれぞれが強く。成人するとシルバー級を下回るものは存在しない。

そこに俺も加わったことで今まで狙っていただけの地域が、一気にこちらの国が食われるじゃないかという恐怖に変わっているのだと教えられた。そしてモンスターであるゴルド族には食人の性質がある。

ザングという地域とゴルドオーガが本格的に争わないのは、ザングは今となってはどう考えても武力が足りない。そして俺たちにすれば、国があれば人という食料を育てる面倒をかけなくてすむ。そんな側面が強かった。

向こうからすればそれは間違いなく恐怖だっただろう。人とモンスターは所詮お互いに相容れない。人に似たゴルドの女ですら、普通に人を食う。そういうものだと育ってきたのだ。それが急に変わるわけがない。

だから人はモンスターを何とか排除して森や山の奥にだけ住んでいてくれと願うし、俺たちはそれを拒む。

『この度はカオスオーガ様におかれましては』

ご機嫌伺いと思われるものに来ている様子だった。つまるところ自国の被害が大きいから、ちょっと加減してもらえないか。特に俺が現れてからのザング国の被害は笑えるほど大きい。

『被害が去年は30万人に達したということで、できればもう少し控えていただけるとありがたく』

『知らん』

弱い者とは交渉する必要などない。強さの前には無力なのだから、話しても無駄だ。人の男の姿を見ていると腹が立つ。俺のことを捨てた父と似ているからか。俺は使者に来た男の頭をつまんだ。

トマトのように簡単に潰れた。そのまま体を持ち上げて一呑みにする。肉が少し硬い。やはり女の方が良いな。オーガと人間。俺から見れば種族としての大きさはそれほど変わらない。しかしあまりにもその強さは違う。

たまに強い人間が現れるが、それとて少し戦いにくいというだけだ。喰うのに時間がかかるだけで、最終的にはちゃんと食べられる。強い人間ほど食べるととてもうまいのだ。

一度だけ超越者というやつを殺した時は、自分のレベルがかなり上がったので驚いた。そんなことを考えていると使者は全て殺し終えた。こいつらはあんまり上手くなかったな。それから数日が経過した。今でも覚えている。

楽しいことはあの日に終わりを迎えた。

『お前がカオスオーガか?』

『そうだ。お前は誰だ?』

その雰囲気だけでわかる。こいつ今まで見た中で一番強い。これを食ったらまたレベルが上がりそうだ。それぐらいしか考えてなかった。自分より強いなんて思ってなかった。そんなのは母ぐらいのものだと思ってた。

『超越者が戦い死ぬのは仕方ない。己の方が弱かった。ただそれだけだ。ただセラス様はできるだけ超越者同士は戦うなとお達しを出している。知らないわけはないな?』

そいつは皇帝でありながら【セラスの騎士】と呼ばれているのだと後に知った。

『知らん。仮に知っていたとしても守ったとは思えん』

『貴様はレベルが上がったのに知恵の足りないモンスターだ。人を殺しすぎている。先頃は隣の国の王子がその命を顧みず、使者に来たというのに、殺してしまったそうだな』

『王子だと名乗っていたことすら覚えてない』

『それならば次は忘れるな。我が名はホロス。ザングは我が友邦国。その国の王子を殺したお前を罰しに来たもの。カオスオーガよ。貴様は使者に来た人間を生きて返しもしなかった。全員食べたか?』

『それがどうした? 隣の土地にいるやつらを全部食べないようには気をつけてるぞ。全部食べるともう食べれなくなるからな』

『そうか。よく理解した。話す意味はないのだと』

ただの食料だと思っていた。ちょっと強い人間がいるだけだと思っていた。

『我は皇帝にして騎士。よく覚えておくことだ。お前など人が本気になればいつでも殺せるのだと!』

しかし違った。ホロスは強かった。俺より強かった。俺の金棒とホロスの槍がぶつかり合う。そしてありえないことが起きる。俺の金棒が止まった。

『バカな』

俺が何度打ち付けても一緒だった。ホロスは微動だにしなかった。俺は本当ならきっとあの日死んでいたのだと思う。しかし死ぬ寸前で止められた。

『この程度か。超越者としては程度が低い。モンスターとはいえ力しか知らんのか』

『俺が悪かった。許して……』

ただ死ぬのが怖くて謝った。屈辱なんて感じていなかった。ただ俺より強いやつが怖かった。そして母はここでも俺を助けてくれた。

『セラス様にできるだけ超越者を殺すなと言われている。だが人を怒らせた罪がどういうものか。お前は自分たちの血で思い知るべきなのだ』

『どういう意味だ?』

『ザング王国からゴルドはその性質が極めて残念で、どうにかして欲しいと聞いた。お前たち巣では人を家畜として育てているとも聞いた』

『それはお前たちがしていることを真似ただけだ』

『だろうな。だがそれは強者のみに認められた特権だ。弱者がそれをすることは許されん。それなのにした。故に皆殺しだ』

その言葉と同時に空が黒くなり、地上に黒い影が落ちた。そいつらが俺の女を、俺のゴルド達を次々と飲み込んでいく。逃げても逃げても許されることはなかった。どこまでも影が追いかけてきて、影に吸い込まれていく。

気づいた時にはゴルドオーガは全て俺の目につくところからいなくなった。

『弱い。やはりギガは特異な奴か』

『ギガ?』

『お前には関係ない。カオスオーガ。よく覚えておけ。お前がこの地域から外に出ることを禁じる。従わなければ次こそ殺す。人がモンスターに食べられることは食物連鎖としてある程度は許容してやろう。ザングは人の家畜を辞め、1000人までの犠牲なら許容すると言ってる。その辺は考えて喰え』

食事を人に管理されるようになった自分の弱さに腹が立った。同じオーガの名を持つ者たちよりもはるかに強く大きく、前に現れた超越者の強い人間も俺には手も足も出なかった。誰が来ても勝てると思った。

父も母も俺を捨てたのは、俺が失敗作だったからではなく、俺が強くて手に負えないからだったのだ。そんな風にも考えるようになった。しかし自分はやはり弱く、ゴルドオーガはホロスによって1人もこの世からいなくなった。

俺はホロスによって大事なものを奪われ、ホロスによって生かされた。生かされた俺はなんとかさらなる強さを求めた。噂の最強生物ギガに接触して、何か教えてもらえないかと思ったこともある。

しかしここから出たらホロスがまた来るかもしれない。そうしたら今度こそ殺される。その恐怖から外に出られなかった。自分の一族を殺された恨みを晴らすこともなく、一体どれほどの年月が流れた。あれから少しは強くなれた。

ザングの反対の土地、南の方にあるモンスターたちの領域はほぼ全て支配した。【管理球】と呼ばれる存在もいくつか自分の管理下においた。

しかしあの時見たホロスの強さからはほど遠い。

「ああ、今日もこんな雑魚ばかりか」

俺はつまらなすぎて人間を見ながら欠伸をした。

「ま、待ってくれ。俺たちは本当にあんたに喧嘩を売る気はなかったんだ!」

「そ、そうです! ちょっと狩りをして帰るだけのつもりだったのよ!」

「お願いだ、俺たちはただの狩人なんだ。動物を狩るだけのつもりで、本当に悪気はなかったんだ!」

「私たちの命を取るのは簡単かもしれないけど、あなたもその先に後悔を抱えるかもしれないわよ!」

そのことに一瞬ホロスの姿が浮かんだ。いや、でも、俺はあいつとの約束を守ってる。1年で1000人以上の人は食ってないし、少しぐらい越えてる時があったとしても、さすがにそれであいつが現れることはなかった。

「奇遇だな。俺もちょっと人間を狩りして、食おうと思ってただけだ」

この森に現れるやつらで一番よく見る。きっと冒険者で狩人は嘘だ。狩人はもうちょっと浅いところで狩りをする。冒険者は俺たちを殺しに来る。それだけに普通の人間よりはちょっと強いやつら。

そいつらを装備ごとぎゅっと握りつぶした。やっぱりホロスほど固くない。あいつは握りつぶそうとしたらこっちの骨が折れそうになった。

俺はそのまま4人いた冒険者を3人口の中に入れた。やっぱり人間はうまい。今年で何人目だったか。ゆっくり食べてるから1000は超えてないと思うが、よく覚えてない。

「ホロスより全然強くなれない。でも……」

「ゆ、許して、お願い」

こんなところから出られないのが暇すぎた。だから女が現れると最近はしばらく飼育することにしていた。一緒に暮らしていると俺のことを好きだと言い出す女とか、色々いて面白いのだ。最終的にそういうやつらを食べる時が一番楽しい。

「安心しろ。お前は綺麗だから食わない」

「き、綺麗?」

「そうだ。綺麗だ」

「そ、そう。はは」

こうして女を飼育することは家畜とは違うと判断されるらしい。ホロスはこれで現れたことはない。人数が少ないことも関係してるんだろう。5人以上飼育したことはないしな。おそらく一定以上の被害が出た時、あいつは来る。

まだ生きてることは冒険者たちから聞いて知ってる。やっぱり超越者は頑丈で長生きだ。早く死んでくれないだろうか。あいつさえ死んでくれたら俺はもっと自由になれる。

「お前、ホロスを知ってるか?」

「ほ、ホロスって皇帝のことですか?」

「そうだ」

「も、もちろんです」

「あいつ今、何歳だ?」

「確か。523歳だと思います」

「あとどれぐらいで死ぬ?」

「ああ、それは結構問題になってます。皇帝ホロスの寿命はあと10年もないとか。セラスの騎士とも言われていた人ですから、死んだら世界の均衡が崩れるし、跡継ぎをどうするのかって。巨人の一族は全体的に強者が多いですが、ホロス以降、まだ超越者が生まれないと言って困ってます」

「そうか……」

超越者になった瞬間から500年の寿命が始まるという話は聞いたことがある。つまりホロスは30歳ぐらいで超越者になって、もうほとんど限界に近いってことだ。

「それはいいことを聞いた。あいつがいなくなったらすぐに何も考えずに暴れたい」

それでいい人生のはずだった。それが殺されるのが怖くて、我慢して我慢して生きてる。俺に従ってるモンスターたちは、俺が怖がって生きてるなんて微塵も思ってない。だが俺はあの日のことをまだ覚えてる。

『貴様。そんな大きな体で震えているのか?』

あの日、俺は確かに震えてた。あんな怖い思いは二度としたくない。あれからもう100年以上経ってる。そしてようやくホロスの寿命が来てる。その後継者をどうするかかなり頭を悩ませているのだという。

「あいつが死んだらすぐにあいつの国を襲ってやろう。そしてあいつの国の人間全部俺が喰ってやる」

自然と口の端がつり上がってくる。俺が味わった恐怖、絶望をあいつに味わわせてやれないのが残念だ。早くその日が来ないだろうか。人間は人間を食べるやつを嫌う。野蛮だと言ってモンスターだという。

でも人がモンスターを殺すほど、モンスターは人を殺してない。ましてや絶滅なんてさせない。俺だってしなかった。隣の国のやつらのうちで俺に殺されてたやつなんて、自然に死ぬうちの一部だ。

「どうせまたすぐ増えるくせにうるさいやつだ。普通に死ぬのとモンスターに食われて死ぬのなら、モンスターに食われて死ぬ方が、俺たちの腹も満たされていいのに……。自分たちだって同じことしてる癖に……。人は間違ってる。俺たちの方が正しい。ああ、そう言いたい。お前はどう思う?」

飼うことにした女に尋ねた。しかし居ると思った場所にいなかった。おかしいと思って視線を走らせると、小さくて見えにくいが必死になって遠くへ走って行こうとする女が見えた。もう100mぐらい先にいる。

「そういえば弓兵系の装備を身につけてるやつだよな。そういうやつらは気配を消すのが得意なのが多かったな。ふふ、逃げなきゃ優しくしてやったのに逃げたな」

俺はその重みで地面にめり込んでいたとても巨大な、人ではどうやっても操ることのできない金棒を持ち上げた。そうするだけで足が地面に沈んだ。

「飼育期間は短かったけど、まあよくある終わりだ。一番長く飼っても1年ぐらいだ。それ以上になるとつい力を入れすぎて壊してしまうんだ。女、今日は特に力が入りそうだ。後で食えるぐらい形が残るといいな」

金棒を振りかぶった。そして地面に叩きつける。地面が振動して、地震のように揺れ動く。巨大な隕石が落ちたような衝撃。久しぶりの手応え。やっぱりこうやって好きに暴れるのが楽しい。

だがちょっとだけ奇妙だった。どうしてか思ったよりも金棒が地面に沈まない。いや、それどころか地面より少し隙間がある。それに柔らかい地面を殴っただけなのに、手がしびれるのを感じる。俺はゆっくりと金棒をどけた。

そこに人がいた。着ている服が俺と同じ黒色で、肌の色は俺より薄かった。

「お前誰だ?」

「いきなり随分な挨拶だな」

下の地面はクレーターのように抉れてるのに、そいつのいる場所だけ何も起きていなかったというように地面が残っていた。

「まあこっちも急いでる。そんなにのんびりする気はないんだけどよ。とりあえず聞いておくぜ。お前戦わずに【管理球】を俺に譲らないか? どうだ? 戦わずに譲ってくれた場合は面倒ごとが終わったら、『そのまま領地は保証する』って伝えるように俺たちの大将は言ってたぜ」

「お前なんだ?」

「マークだ。マーク・アンダーソン。何気にちゃんと名乗るのは久しぶりな気がするぜ。あんた大丈夫か?」

横に先ほどの女を抱えていた。白い肌をした女が無傷で、浅黒い肌をした男に頬を染めてる姿が気に食わなかった。

「俺の飼うことにした女をなぜ勝手に助ける?」

「は、はい。大丈夫です」

「じゃあ俺はちょっとこいつに用事があるから、あんたは一人で帰れるか?」

「な、なんとか頑張ってみます」

「お守りにこれをつけて行け。ほら、巻き込まれるぞ」

こいつ俺の話を全然聞いてない。そのことに俺はとても苛立ち、金棒を思いっきり横に振るった。だが信じられない。その動きが止まった。左手1本で止めている。なんだこの力は?

「ちょっとぐらい待てよ。女1人ぐらい逃げたからってどってことないだろうが」

こいつは俺より小さいのにどうしてこんなに力がある。ホロスなら攻撃が当たりもしなかった。でもこいつは攻撃が止められる。俺は急に怖くなって一歩下がった。こいつもまさか俺より強いのか?

嫌だ。俺より強いやつとはもう戦いたくない。ホロスみたいに強いやつがこの世にはまだいるのか? いや、そんなことない。ホロスは母の次に強いはずだ。きっとこいつはそんなに強くないはずだ。こ、怖がらなくていいよな?

「うん? お前本当に鬼か? 鬼は強いやつを見ると喜ぶもんだけどな……」

男の右腕にすっと何か銃と思われるものが現れた。正直奇妙に思った。銃は弱い普通の人間が持っているもので、冒険者やある程度以上強い奴らが持っている武器ではなかった。鉄の塊が高速で出てくるだけの武器。

当たった感覚すらない。俺にとって銃はそんなものだった。男が腕につけていたのは奇妙な黒い造形。少し変わっていていつも手で持っているのに腕に取り付けられたようになって、腕の横についていた。

「【鋼帝・銃鬼の大筒】って言うんだ。結構威力があるから気をつけろよ」

こちらに銃身を合わした。

「ほらよ!」

そして放ってきた。なぜかまともに受けたらまずいと思い慌てて金棒で受け止める。俺の攻撃と拮抗する物体でもぶつけられた。それぐらい腕に衝撃を感じて驚く。腕がしびれるのだ。そのしびれが継続してこちらを押してくる。

「重い……何だこれ!?」

俺の体がさらに一歩下がった。ここで押し負けたら死ぬんじゃないかという恐怖で、腕に思いっきり力を込めた。

「う、うがああああああ!」

なんとか弾き返すと、エネルギーの塊のような青い閃光が、深く丸い形に岩肌を抉ってどこまでも突き進んだ。

「お、お前強いやつなのか?」

体が震えてきた。

「おいおい、そんななりして怖がりかよ。信じられん鬼だな。俺が怖いなら大人しく降参するかい? こっちもその方が簡単で助かるんだが」

そう聞かれた。向こうはそれでも問題ないみたいだ。こいつはホロスとは違う。ホロスはもっと容赦がなかったけど、こいつは優しいんだ。それなら俺はこいつを喰ってレベルを上げたい。だから俺は戦いをやめず、良いことを思いついた。