作品タイトル不明
第三百九十二話 Side美鈴 VSギガ
Side美鈴
レベル999のモンスター。このルビー級マックスレベルのモンスターというのはいるようでなかなかいない。ルビーエリアでも滅多なことでは現れない。それには理由があるらしく、ルビーエリアにある学校で教えてもらったところでは、
『レベル999のモンスターというのは、本来あまりいない。理由が分かるか桐山美鈴?』
私は大抵うまく答えられないのに、よく質問を当ててくる嫌な教師だった。
『え、えっと、レベル999のモンスターが滅多に存在しない理由ですか?』
『復唱しなくていいからさっさと答えろ』
だから答えられないから復唱してるんじゃないか。
『分かりません……』
『桐山お前という生徒は……もう少し知性を磨け。知能が上がるだけでは補えないものがあると何度注意したらわかる』
『すみません』
心の中で舌を出したけど、教師に心がばれないように気をつけた。自分でもこの辺りを小春に甘えるから成長しないと思って努力してるんだ。でも小春が考えた方がうまくいくものだから、そうすると小春の考えばかりが通る。
それをどうにかする方法があるなら、むしろそれを教えてよ。ここ学校だよね。
『まあいい。簡単に説明するとな。レベル999になる前に大抵のモンスターは神獣に【転生】するのだ。レベル999というものは存在するが、モンスターの場合枠というものがない。人のようにその世界に何匹までというのはないのだ』
『はい! 私はあるって聞いてました!』
『ではそれは間違った知識だ。修正しておけ。さて、問題はそれではモンスターばかりレベルの高いものが多くなり……』
ルビーエリアではこういうことが結構あった。他のエリアの常識が、ルビーエリアで訂正される。そしてルビーエリアで教えられることはかなり真実に近いようで、あまり修正は入らないと言われていた。
まあそれでも“あまり”なのだけど。
『ともかくレベル900台も後半になると、モンスターは一定の条件を満たすと神獣へと種族進化を起こす。ゆえにレベル999のモンスターというのは存在しない。レベル990台ですらなかなか存在しないと考えていただろう。その段階は通常飛び越えてしまうものなのだ』
『それが存在した場合、というのは起こり得ないことですか?』
小春が発言して聞いてた。基本的にコンビは同じ授業を取る。まあルビーエリアにもなると一緒にいられないことも多い。そういう時は私も1人で頑張ってるんだ。
『998までなら俺も見たことがある。だが999というのは見たことがない。ここのデータベースの記録にもあまりない。だがレベル999は確かに存在している。過去の類例からレベル999のモンスターが現れる理由も判明しているぞ』
この議論はどこに向かってるんだろう。そんなことを思いながら聞いてた。そうすると教師は、
『それはそのモンスターが人に造られた場合だ』
『神ではなく?』
小春が聞いた言葉が唐突に思えた。神ではなく? そんな話してたっけ? 小春はたまに当然あるべき段階を飛ばして話す。祐太や博士がよくやるやつだ。こういう時に自分ってバカなんだなあって思ってしまう。
『榊、やはりお前は優秀だ。お前の言う通りだ。モンスターの造り手が人である場合神獣を造るのは非常に難しいプロセスが必要となる。それをクリアできずにレベル999に止まってしまう。つまりモンスターのレベルがレベル999であった場合、そのモンスターはほぼ確実に——』
「『人によって造られたモンスターだ』か……」
知識によって私にやたらとマウントを取ってくれる教師の嫌な顔を思い出しながら口にした。
『この場合、レベル999のモンスターを殺すこと。それすなわち、それを造ったとても賢いルビー級探索者が敵になるので気をつけろよ』
そんなことも言ってたっけ。思い出しながらエリクサーを飲む。【広目天の筆】も使用してなんとか耐えようとしたが無理だった。あまりにも広大な領域に及ぶ雷を伴う強烈なエネルギー砲は、電撃という逃げ切れないスピードで追いかけてきて、捉えられ、内臓器官がほとんどやられた。
「あいつが氷狼王グレイシスの【管理球】を手に入れてなかったら、今ので結構やばかったかもね」
小春が言う。私の優秀な親友。どれだけ私が迷惑だからと、親友の元から去ろうとしても、迷惑じゃないことだけは伝えに来てくれる。そしてなんだかんだでこんなところまで引っ張ってきてくれた。
「やっぱり強いね。逃げる行動に迷いがなかった。私たちの攻撃への対処も、正直人間みたいに上手いと思った。このギガを造ったのって」
「博士以外いないでしょうね」
やっぱり博士は強いモンスターを造ろうとしてるみたいだ。それは何のため? そこまで考えて首を振る。今はギガに集中する時だ。こいつかなり気合い入れないとマジでやばい。デカすぎ。出力高過ぎ。タフすぎ。ちゃんと死ぬの?
「見事に逃げるところとか、大きい割に制作者に似たのかな」
「美鈴の槍と電撃の合わせ技も治療する場所を特定部位に絞って早く回復させた。見た目と違い慎重のやつかと思ったら、とんでもない大規模攻撃。攻守を見極め、勝つための最善を選んでる。美鈴【超自然】を絶対に緩めたらだめよ」
「分かってる。ギガは今、私たちの居場所を探ってる。見つかったら終わりだよね」
天災獣ギガが空を飛んでいる。私たちがいると思う上空に飛んで静止してる。姿は相変わらず圧巻だ。あんな巨大な体を空に飛び立たせるだけでどれほどのエネルギーがいるか。それでも、ギガは降りてくる気配がない。
そして何かを感じ取っているのだろうか。
【 雷轟滅殺砲(らいごうめっさつほう) !!!】
さらにもう一度、高火力の攻撃を放ってくる。
「意外といいとこ狙うじゃない!」
【広目天の筆】で自分と小春に速度アップの文字を書き込む。当たっていない平気だぞ。そう見せかけるためにこちらも、
【 天雨槍衾(てんうやりぶすま) !】
何度も攻撃する。空を飛んでるからこれが結構効果的で、私のスキルが発動すれば、ギガに雨のように降る槍を大量にぶち込める。【毘沙門天の弓槍】は攻撃に関してピカイチの威力。いくつもの槍がギガの体を貫き、翼に穴を開けた。
ギガは苛立ちの声を上げ大地を震わせるが、だからと言って落ちてくるわけじゃない。槍に貫かれて翼にも大量の穴が空いてるのにそれでも飛べる。それなら翼なんて最初からなくていいじゃん。
そもそもレベルが上がればモンスターでも大抵飛べるが、翼の力で飛んでるわけじゃない。魔法やスキルで飛んでる。ギガなんて大きすぎて、それぐらいしか飛ぶ方法はない。
だから、普通のモンスターなら効果のあるはずの槍という極太の矢を喰らっても、落ちてこない。本来なら槍をぶち込んだ箇所を起点に、体内に電撃で追い打ちをかけることができる。だが、これだけ離れてると電撃系は射程外になる。
こうなってくるとギガに効果のありそうな攻撃は1つしかなくなる。私の【毘沙門天の弓槍】による最強の一撃だ。あの一撃に耐えきれる生物などいない。
その自信はあるが、相手の方がこれだけレベルが上になると言霊を唱えて威力を上げて、全てのSPを一気に注ぎ込む攻撃をするしかない。それを気配を消して行うのは不可能だ。
そしてこういう時に危険な役目を買ってくれるのが、
「私が近づくしかないわね」
小春なのだ。小春は相手を動けなくするのが得意だ。これだけレベルが離れてても数秒ぐらいなら止めてしまうと思う。同レベルだと完璧に決まったら、そのまま呪い殺してしまうこともできる。それぐらい小春の呪いは強い。
でもこれほどの相手を止めるとなると、かなり相手に近づかなきゃいけない。でも、小春が近接が苦手で、私も苦手。私たちコンビの相性の悪さだ。きっと小春が近接超得意の祐太と組んでたらもっとはるか先に行けたのに。
「いける?」
止めることはなかった。ここまでレベル差があるのは初めてだけど、こういう状況は一度や二度じゃなかった。さすがにもう小春がそんなこと気にしていないのは知ってた。
私たちは森の中に移動して、木々の合間から見えるギガの姿を見つめていた。
「遠くから時間稼ぎをして、相手が消耗してイライラして、行動をミスるのを待つのが、私たちのセオリーだけどね」
そして小春が敵を呪い、私が仕留める。
「こいつは多分!」
【雷轟滅殺砲!!!】
とてつもないエネルギーの塊が森に隠れ【超自然】まで使っている私たちに向かってくる。凄まじい爆発が起き、私たちは爆心地から逃れるためにできる限りの速度で走っていく。それでも足が電撃に当たりしびれて動かなくなった。
二人とも同じような状況で地面にうずくまる。
「美鈴、生きてるー?」
「なんとかね。ほい、ご飯」
なんとか上級ポーションで治りそうだったから、私は祐太からもらったポーションを出して小春にも渡した。その場所から移動しながらポーションを飲み終わって、小春が口を開く。
「あのどでかいエネルギー砲、だんだん撃つまでの間隔が短くなってきてる。それに私たちの位置をだんだん正確に分かるようになってきてる。何のスキルか知らないけど、時間をかければ正確な位置をつかめる何かを持ってるのよ」
「祐太の【探索糸】みたいな?」
「【探索糸】? 私は六条の能力ほとんど知らないから分からないけどさ。ギガは間違いなくこっちの位置を掴むコツが分かってきてる。こうなるとまずいわね。いつもなら時間は私たちの味方だけど、こいつは時間をかければかけるほどこっちが追い詰まってきてる。ギガが何らかの方法で完璧に正確なこちらの位置を掴めるようになったら、その時はかなりやばいわ」
「どんな方法を使ってるんだろう?」
「分からないわ。まあそれを確かめる意味でも美鈴、行ってくるわ」
毎回その役目を任せるのが辛い。役割上仕方がないけど、できれば危ないことは私がしたいぐらいだった。
「うん、絶対怪我しちゃだめだからね」
私が無茶な要求をすると小春は苦笑いして私から離れていく。私たちが空を飛ぶことにもっと有利なスキルがあればよかった。祐太の翼は探索者にとってかなり羨ましい。鳳凰の翼なんて間違いなく飛ぶのに超有利なスキルがある。
私たちにはそれがなかった。私は飛ぶのに【飛翔】のスキルがあるだけ、小春は【飛脚】という空を走る能力があるだけだ。どちらもシルバー級のスキルには成長しているが、それ以上にはならなかった。
「空中戦は私たちにとって苦手分野なんだよ。ギガのやつ、それも分かってるのかな?」
もう小春はいないから独り言になった。ギガはもっと大雑把な戦い方をする。そう思ってた。しかし全くそんなことなかった。繊細でこちらの出方を十分に見極めている。こういうことをされるとレベルが高い方が圧倒的に有利だ。
モンスターはその辺わかってないやつが多いから、普通はそんなことしないはずなんだ。
「人間みたいに戦うやつだ。教師が言ってたな」
『モンスターであれ人間であれレベル999の存在を見つけたら、できるだけ敵対的なことにならないように気をつけることだ。本来ならば、神の領域に登ることを許された存在たちだ。それが様々な理由で、上に行くことを禁止されている。だが本来は神の領域に片足を突っ込んだ半神になれるのだ。この場合、例えモンスターであっても非常に戦いにくいことになる。死にたくなければ忘れないようにしろ!』
「レベル999は特別か」
嫌、というほど味わってる。嫌いな教師だったけど、言ってることはいつも楽しい教師だった。そして敵対しないようにどころか、自分たちの方から向かって行ってるから、本当、教師が聞けば呆れるだろう。
私は爆心地から離れていく。こいつはどうやって私たちの位置を把握してるんだろう。【超自然】が切れないように走るのはかなり気を使う作業だ。そちらの方への集中が切れないように気合を入れながら、2㎞ほど移動する。
背の高い草がたくさん生えている場所で、そこに入り込もうとして横を同じく空の様子を眺めているバイオレンスウォームが大量にいた。
「ひっ」
思わず声が漏れそうになった。バイオレンスウォームは私たちの世界にもいた小さな人のような生物。小さい体で異常な力を持つようになり、モンスターになった存在だ。群れで行動して1匹でも殺すと群れ全体で攻撃してくる。
ゴールドエリアにいるやつらで、各個体のレベルもまあまあ高くて敵対すると面倒だ。まあ今はこちらの気配に気づいていないようで、空を見つめ続けてる。多分こいつらもギガの攻撃から隠れてるんだ。迷惑かけてすまぬ。
先ほどから凄まじい爆撃が何度も続いているために、バイオレンスウォームも怪我をしている個体がいるようだった。それを大事そうに運んでる。モンスターは案外仲間思いのやつらが多い。こういうところが結構戦いにくい。
協力されて面倒だし、倫理的にも殺すのが可哀想に思える。それにしても、
「さすがにこいつらもギガにはやり返したりしないんだ」
完全に隠れているし、どう見てもギガの脅威が去ることを祈ってるだけのようにしか見えなかった。まあ当たり前である。ギガ相手に仲間が攻撃されたぐらいでやり返してたら、きっと今頃こいつらは種として全滅してる。
ともかくバイオレンスウォームは普通にゴールドエリアを探索していると、まず間違いなく一度はひどい目に遭わされるモンスターである。私も苦手意識があって、ゆっくり離れて行こうとした。
「さっきの感じだともうすぐあの範囲攻撃が来そうだけど……攻撃が来ない?」
先ほどまで間隔が短くなっていた攻撃が、急にパタリとやんだ。二手に分かれたことで、こちらを見失ったのだろうか。私は小春を見た。シルバーとゴールドエリアが同じだった探索者。
特に2人でゴールドエリアを支配したりすると、その探索者同士には特別な絆が生まれる。ジャックと土岐、マークさんと摩莉佳さんもだけど、私たちも不思議と離れていてもお互いの位置は分かる。姿も見えた。
小春はかなりギガに近づいていた。間違ってもギガと空中で衝突しないように、ギガと空を飛ぶ高さは変えていた。そして、距離にすれば500mほど。体長が200mの化け物である。500m離れても、近くにいるような迫力がある。
「小春、気をつけてよ」
私は心配するけど、それでいて信頼もしていた。今となっては誰よりも失いたくない相手である。いつもこういう時、小春は失敗したことがない。【超自然】も私よりも上手になってきている。
小春は私に遠慮して言わないけど、私が小春を上回っている魔法やスキルは【毘沙門天の弓槍】による攻撃だけだと気づいてる。だからそれだけは失敗しないように【超自然】が切れないギリギリで力を貯めていく。
小春なら200mほどになればギガを呪いの射程圏内に入れられる。人間相手ならかなり離れた距離だけど、ギガだと、目と鼻の先のようにも見えた。こっちの方がドキドキしてきてしまう。
【死相】は何度も確認してるが、小春に骸骨が見えてない。大丈夫。小春に死の影はない。
でも、
「ふむ、この“匂い”か」
その時だった。
急に耳元で声が聞こえた。バイオレンスウォームが一斉に草むらから出てきて必死になって逃げ出している。
「美鈴! 逃げなさい!!!」
小春が焦った大声を出した。気配を消すことなんてもはや考えてなかった。分かってる。これでも伊達にルビー級を長くやってない。私は一気に足に力を入れた。駆け出そうとして、
「おっと、逃げるな。大丈夫だ。そんなにすぐに殺しはしない。もっと楽しもうではないか」
手をぎゅっと握られた。そこから腕がピクリとも動かない。こう見えて岩盤に大穴を開けるぐらいの腕力がある。踏ん張ると地面にクレーターができた。それでもこいつの方がかなり力が強い。そのまま握った手を握り潰された。
「いっつっ!!!」
「おっとすまん。力加減が難しいな」
「美鈴に何すんのよ!」
かなり離れてたのに白い猫が弾丸のように戻ってきて、私の手を握りつぶしたやつの頬を思いっきりぶん殴った。そいつは大地を転がり、大木にぶつかり、その衝撃で太い幹を折りながら吹き飛んでいく。
「大丈夫!?」
「う、うん。なんとか」
「すごい血が出てる! 早く飲んで!」
心配してたのはこっちなのに、小春が、私が槍でやり返す前に帰ってくるってどういうことなんだろう。結構離れてたよね。この親友絶対私が落ち込まないように強さ隠してるな。そんなことが悔しくてそれでも頼りになって嬉しかった。
「威勢が良いな」
「あんた誰よ!?」
「誰も何も我だ。我はいつも我だ。大きな我がどこにもいないだろう?」
空を見上げる。確かにギガの超巨体がどこにもなかった。あんなに大きかったのに影も形もない。だからってあんなに大きいのにそんなサイズになった?
「じょ、常識外れなことしてくれるじゃない」
「おや、我はお前たちを見ていつも驚いているのに、変わったことをするやつらだと驚いているのに、今回はお前たちの方が驚いてくれるのだな。我は嬉しいぞ人間」
「まずいわ美鈴。人のレベル999は無理。絶対無理。逃げないとやばい」
「でも逃げきれる?」
人のレベル999はモンスターと違いブロンズエリアの国になら、たいてい1人はいる。本来、神になる資格を満たしているのに12の枠がいっぱいで待たされているルビー級だ。強いことなんて説明するまでもない。
「でも、さすがにこいつは専用装備は持ってないでしょう?」
「美鈴、あんたちゃんとあの嫌味教師の言うこと聞いてた? あいつ——」
『専用装備のないモンスターは人よりも弱い。同じレベルでも弱い。そう言われることが多いがな。これは勘違いだ。モンスターには専用装備がなくとも、十分な防御力と攻撃力が備わっている。これに加えて回復力も強い。大抵は【超速再生】を持っている。魔力の高い個体も多く、彼らが本来持っているものは、同レベルの人と比べて何ら遜色のないものだ』
『じゃあどうしてモンスターは同じレベルだと人より弱いと言われてるのですか?』
『君たちはもう少し考えた方がいい。頭は使うためにある。そんなもの答えは1つだ。君たちと同じだ。それはひとえにモンスターがバカだからだ。知恵が足りない。故に人に負けるのだ。先程に続いてもう1つ君たちに注意しておこう。もしも人型になって戦おうとするモンスターがいたら、それは非常に危険な個体だから気をつけろよ』
『オーガとかとは違うんですか?』
『違うな。オーガには角があるだろう。それに人よりも大きい傾向がある。オーガはちゃんと成長すると2m50cmは超える。しかし昔現れた鬼の中に全く人と変わらぬ大きさを持つ鬼がいた。むしろ小さいぐらいだったそうだ。人の世に紛れ酒呑童子と呼ばれる。そのものは無類の酒好きでな。それでいて人に興味を持ち人の勉強をした。その後、神を殺し神獣へと至ると伝わる』
「そんな悲しいことを言わないでくれ。もっと楽しみたいと言っただろうが。逃げるなんて許さんぞ。しかし、震えて戦いにならなくなっても困る。お前たちに少しだけ有利な話もしてやろう。実はな。この姿で超越者と戦うのは初めてだ。我は不慣れだ。どうだやる気が出たか?」
綺麗な黒い髪だった。とても手入れの行き届いた長髪で、浅黒い顔をして、正直結構かっこいい男だった。そいつが横に手を出した。そうすると200mを超えるかという巨大な雷をまとうエネルギーの塊による剣が現れた。
「おっと加減を間違えた。これぐらいか?」
そうすると剣は短くなり2メートルほどに収まった。しかしそこから感じられる気配は200mのものよりも強かった。あの剣、ルビー級専用装備かそれを超えてる。
「最近、超越者が我に挑んで来なくなってな。退屈してその間にいろいろ次にあいつらと戦う時はああしようとか、こうしてやろうとか、たくさん考えていたのだ。雷をまとわせるのはロガンとテスラを見てやってみたがどうだ?」
「はは、今までのはただの猿まねって言いたいわけ?」
「その通りだが、もっと色々試したい。最後まで逃げずに戦ってくれよ。お前たちはすぐに逃げるからそれだけが我はとても不満だ」
なかなかイケメンだと思った顔が凶悪に歪んだ。
「まあ次は逃げられないためにこの姿になったのだがな」
こんなやつに粘着されるぐらいなら、祐太に無理言ってでも抱いてもらっとけばよかった。そんなことを考えている私は小春の後ろに骸骨が見えて青ざめた。