作品タイトル不明
第三百九十四話 Sideマーク、カオスオーガ 弱者
Sideマーク
俺の中にもいる鬼が暴れる気まんまんでいたのに、全く暴れられなくて、かなり不満そうだった。理由は簡単だ。カオスオーガが有り体に言えばあまりにも弱かったからだ。
カオスオーガはどうもモンスターであることを考慮しても知恵が足りない。そしてでかいだけで根性はないやつだった。何しろレベル865もあるのに魔法もスキルもほとんど使いこなせていない。そして怪我をすることをやたらと怖がった。
《こいつ【超速再生】持ちでなんでそんなに怪我が怖いんだ?》
《ホロスと戦い負けた後、どの超越者と戦った記録もなかった。本来超越者になるようなモンスターは強いものを求める傾向にあるが、こいつはそうではなかった。ホロスに負けた後心が折れたのだろう》
《そんな鬼がいるのか?》
《鬼はどんな鬼でも好戦的なものだがな。たまにそれが完全に逆向きになるやつがいる。こいつはその代表例みたいなやつだ。そのせいで自分だけが、飛び抜けて強いモンスターという岩石地帯のぬるま湯に甘んじてしまった》
俺の中にいる鬼が俺の中ではっきりと声を出す。俺の中にいる鬼は俺と融合した時から、かなり意識のはっきりした魂をしていた。博士に言わせるとここまで意識のはっきりしている魂は珍しいのだそうだ。
『よほど長く生きた経験があるのだろう。そうじゃないと魂というのはここまで強くならない』
普通はもっと曖昧なのだという。それが俺の中にいる鬼の魂は生きてる時と意識に大差がないように思えた。ともかくカオスオーガは俺の中にいる鬼の言う通り、かなりぬるま湯の環境に甘んじていたのだろう。
調べたところではホロスにも一度殺されかけ、その時に恐怖でも植え付けられたのか、この土地から一切出ることなく、そんなことだからスキルの使い方も魔法の使い方もほとんど理解できていないようだ。
「まあ楽に勝てる分には俺は嬉しいけどな」
《……》
鬼の奴、あまりにもつまらなすぎてへそを曲げやがった。こいつが力を積極的に貸してくれるとかなり俺は強くなる。正直、自分だけだといくらカオスオーガが未熟とはいえ、楽勝できるほど俺は強くない。
普通なら探索者にとって体の大きさの違いなど問題にならないが、これだけ大きさが違うとさすがに問題になる。カオスオーガは大きい割に動きは速いし、普通に戦えばその莫大な攻撃力を止めるだけでかなり苦戦した。
しかし鬼が力を貸すと違う。俺と共にかつての強さをどんどんと取り戻していった鬼は、俺が強くなるほどに、俺よりもさらに強くなっていった。そして俺が気に食わない戦いをしていると、すぐに文句を言ってくる。
鬼はとにかく俺に強者の戦い方を求めてくるのだ。強者たるもの姑息な戦い方など必要ない。正面から戦い相手をひねり潰せ。それが鬼の戦い方らしい。だから俺は、正面からカオスオーガと戦い、巨大な金棒の攻撃を真っ正直に受け止めた。
俺の中の鬼は戦い対して独自の美学を持ちうるさいが、力を貸してくれるとそんなこともやれてしまうのだ。でも、
「おかげで祐太のいない10年で何回死にかけたか」
まあそのおかげで鬼の戦い方に慣れた。逆にカオスオーガはその戦い方に完全にビビったようだ。何度も自分の自慢の金棒の攻撃を正面から受け止められ、逆に自分が大筒で体に穴を何度も開けられる。怖くなったカオスオーガが、
「た、頼む! もう人間は食わない! 絶対に食わないから許してくれ!」
なんとそのでかい図体で土下座しやがった。仮にも超越者になったやつで、この辺り一帯では最強なのだろう。それなのにそんなことをして大丈夫なのか。心配になるヘタレっぷりだ。
俺は殴る気もなくなってカオスオーガという巨体と戦うために空を飛んでいた位置から土下座を見下ろした。岩石地帯であまりにもひどい醜態を晒すカオスオーガ。もはやシュールを通り越して滑稽な姿だ。
「マジかよ。お前は鬼だろ。こんな命乞いしてくるやつ初めてだぞ」
「そんなの俺の知ることじゃない! 俺は死にたくないんだ! これ以上体に穴を開けられたら死んでしまう!」
「死ぬってお前鬼だろ。鬼なんて少々傷ついても死なないもんだぞ」
体は強い。でも心が弱い。ホロスに折られた心をごまかして、岩石地帯から森林にかけて自分よりも圧倒的に弱いモンスターを支配して、王様気分。ザング王国もこんなでかい化け物を無理に刺激したりはしなかった。
モンスターの被害はどれだけ抑えようとしても、ゴールドエリアの技術レベルでは完全には不可能だ。居住空間を塀で囲っても、ちょっとレベルの上がったモンスターなら超えてくる。
そもそも【転移門】もなければモンスターのいる外に出て移動するしかない。モンスターによって死ぬことが日常の世界。カオスオーガがホロスの言うことを聞いてある程度おとなしくしている分には、何もなかった。
そしてそんなことが100年以上も続いて、こいつはすっかり戦いを忘れてしまったようだ。
『たまにあいつ「ホロスが早く死なねえかな」ってつぶやいてるんだ』
『その噂、私も聞いたことある。気味悪いわよね』
『バカなやつだよ。俺たちが知ってるって事はホロス様も知ってる。噂じゃホロス様は自分が死ぬ前にカオスオーガを殺しておくつもりらしいぞ』
生き方がせこい。どうしてこんなやつがここまで強くなったのか。普通の鬼としても、こういうタイプは真っ先に死ぬはずなのだ。鬼は臆病者が嫌いだ。あまりに情けない戦い方をすると、粛清されることもある。
普通だと強くなる前にこういう個体は消える。モンスターにはこういうのはかなり珍しい。こいつは人間みたいなやつだ。俺はでかい体が頭も上げないままでいるのを見ていた。
「強者が死ねば大きな顔ができる。生きてる間はできないから我慢する。そして自分より強いやつが現れたらまた許しを請う。ホロスにもこんなことしたのか?」
「よく覚えてない」
「お前は鬼の生き方じゃないな。どうあっても生きようとするのは人間の生き方だぜ。まあ、とはいえ、祐太も持ってることだし早い分にはありがたいか」
俺は飛んでいた体を地上に降ろした。岩石地帯の上に立つ。
「祐太みたいに仲間にした方が、後々便利か……」
しかしこんな心が折れてしまっているモンスターが役に立つだろうか。煉獄獣バルガレオルは見ていてもわかる。負けても殺されても心は折れていなかった。今でもずっと祐太に勝とうと思考を巡らせているのが分かるのだ。
ああいうのはそもそも言うことを聞かないのだが、どういうわけか祐太の言うことを聞く気になったみたいだ。
《なあ、お前教育し直してみるか? 同族だし》
《断る。同族だからどうした。鬼が鬼を教育などバカバカしくてやってられん》
《でも、こいつも外を知らないだけだって思うぜ。色々教育して、ちゃんと強くなるには人を食う必要もないって教えればそこは理解するだろうし、人間は臆病だからって弱いとは限らないんだぜ》
俺だって最初、ダンジョンにデビットたちと入って、死にかけた時、あのダンジョンの中でモンスターが話のわかるやつらだったなら、土下座して許しを請うたかもしれない。あの時はとりあえず生きるために必死だった。
生きるためにゴブリンたちから必死に逃げてる最中、泥水だって飲んだ。自分は情けないことを絶対にしない。そんなの分からない。その状況でそれで生き延びられるなら俺はするかもしれない。
《それならお前が勝手にやれ。我は知らん》
《へいへい、勝手にやりますよ》
この鬼。なんだかんだで甘いところもある。3階層や統合階層で大ボスを張っていたようだが、逃げ出したやつまでは追いかけようとはしなかった。そして自分よりも弱くても、勝とうと努力したものはクエストクリア扱いにしたようだ。
魂が融合した時にそういうものも伝わってきた。元の名は酒呑童子。かつて日本の京の都を恐怖の真っ只中に陥れた悪鬼にして、安倍晴明によって、その悪行を砕かれたのだそうだ。だが鬼はそのことを後悔していない。
安倍晴明は特に正面から戦おうとはしなかったらしいが、相手がそうである分には全く気にしない。だが自分は正面から行く。それがこいつの矜持なのだろう。その考え方は嫌いじゃなかった。だから俺たちは意外と馬があった。
こいつから比べたらまだまだ俺もだらしないようだ。でもこいつの記憶の中にも3階層で逃げ出して、統合階層で化けた探索者は何人もいた。だから逃げること自体は否定せず生き延びることを選ぶのも面白いとは感じている。
ただこいつは親切に手取り足取り人に教えるほど善にはなれない性質なのだ。
「カオス、いいだろう。降伏を受け入れてやろう。その代わり【管理球】は俺がもらう。文句はないな?」
「も、もちろんそれで構わない」
「今はちょっと急ぐから後で詳しく話しに来ることにする。まず【管理球】はどこだ?」
「そっちだ」
カオスオーガが指差したので俺がそっちに歩き出した。しかし、しばらく歩いて、カオスオーガが後ろにいるままで俺の前に立とうとしないことに気づいた。完全にビビって遠慮してるのか。でかい体を持ちながら困ったやつだ。
俺は振り返り、そして目の前に俺の体よりもはるかにでかい手があった。まるで家かと思えるほど大きな手だった。なんというデカい手だ。嘘だろ。こいつまさか?
「やめろ! お前そんなことしたら!」
俺が叫ぼうとした。しかし俺の身長よりも倍以上でかい、巨大な手に体が包み込まれた。
「このっ、あほっ放っ、がぐっ!!!」
声が出せない。魔法にもスキルにも集中できないぐらい圧迫された。そのままギュッと力を入れられた。
「くく、お前バカだ。お前の戦い方見てて分かった。俺は力の使い方わかってない。だから一番得意な握る力を使って殺す。それで問題ない」
万力、いや、ブロンズエリアの海底の一番奥にまだレベルも上がりきってない時、沈んでしまった時のことを思い出し、それ以上のあの水圧を超える圧力だと思った。もともとレベル差がある。
純粋な力勝負で来られて、そのまま思いっきり力が入れられた。これはまずい。体中の骨が完全に砕けたのがわかる。頭もつぶれる。この野郎よくも俺を殺したな。お前死ぬほど後悔するぜ……。
《……度しがたい……》
鬼の怒りが伝わってきた。マグマのような怒り。そのままどんどんと体が握り潰されていく。抵抗は意味がなさそうだ。体中が潰れてさらに圧縮されていく。まだ考えられているのがルビー級のすごいところか。
これはちょっと面倒なことになる。間違いなく摩莉佳にばれたら怒られそうだ。
《くく、マーク。“約束”だぞ》
《わかってる。それは守る。だから後は頼むぞ》
《ああ、いいだろう》
Side巨鬼獣カオスオーガ
「勝った。はは、やった! 俺の勝ちだ! 俺の勝ちだ!!!」
周囲に轟く大声をあげた。あいつ強かった。俺は俺より強いやつに勝った。俺は俺を超えた。きっとこれでまた強くなる。あの母とは違う冷たい女の声が頭の中に聞こえて強くなる。その声が早く聞こえてこないかと俺は待った。
「俺は知ってる。あの声は女神と呼ばれるやつからの声なんだ」
早く聞こえてこい。そして俺をもっと強くしろ。そうしたら俺はひょっとしたらホロスを自分の手で殺せるかもしれない。
「おい早くしろ。女神! まだなのか!?」
気持ちが逸った。早くしろ早くしろ早くしろ。あの女遅いんだよ。
「早くしろよ!!」
そう叫んだのに頭の中に声が聞こえてこなかった。
「おい、どうしたんだ女神? レベルアップするんじゃないのか?」
「おい間抜け」
言葉と同時にドゴンッと横からすごい衝撃が来た。お腹に何か巨大な岩の塊でもぶつけられたみたいに痛みが走り俺の体がそのまま思いっきり岩石地帯を吹き飛んだ。俺の巨大な自慢の体が地面を転がる。
そのたびに地震が起きた。周り全体が揺れた。俺の体が止まって、何が起きたのかわからず、殴られた方向を見た。
「……お前なんかいたか?」
こいつ誰だ? こんな奴いたか? 地面に立っていたその男が空中に浮き上がってくる。俺の顔の高さまで浮き上がってきて、東の国のやつらが着ている着物というやつを雑に来ていた。
「最初からいたぞ。気づかなかったのか?」
「お、俺はお前を知らない」
先ほどの男はたくましい見た目をしていたが、その男はスラリとして奇妙なほどかっこよかった。そして人間の大きさなどあまりわからないが、子供ぐらいの大きさに見えた。
「ルビー級になると戦ってるやつの魂を少しぐらいは感じるものだが、そうか何も感じないか」
「お前まさかさっきいた黒い服を着たやつと同じやつなのか?」
「正解だ。俺とあいつは同じだ。あいつはかなり優しいのに、わざわざ俺を起こすとはお前はアホだろう?」
「……」
頭に2本の角がしっかりと生えている。だから鬼だと分かった。さっきまでのやつは1本だった。何だ? こいつあいつの中で寝てたのか? なんで鬼が人の中で寝てるんだ。小さいくせに周りにゆらゆらと気配が見える。
それがホロスみたいだった。大きさはホロスよりこいつの方が小さいけど、ホロスの時の感じをなぜか思い出す。勝てる気がしない。嫌だ。戦いたくない。でもこいつ怒ってるみたいだ。
「わ、悪かった。お前に喧嘩売る気なかっ」
鬼の姿が一瞬消えて、次は頭に衝撃が走った。巨大な隕石が頭の上から落ちてきたような強烈な衝撃。痛い! 痛いよ! 母よ。どうして俺はこんな痛い思いをしてるんだ!?
「謝るな阿呆」
「でも謝らないと許してくれないだろ?」
「いつもなら許す。戦う気のないやつと戦っても面白くないからな。だがお前は謝ったところで許さん。最高に気分が悪い。後でマークに大量に酒を飲ませてやる。あいつも最近少し強くなって緩んでる。だからこんな阿呆に殺されるんだ」
「マーク?」
「そうだ。マークの阿呆だ。少しは骨のあるやつになってきたと、褒めてやろうと思っていたところにこれだ」
「俺はもう戦う気はない。さっきのは本当に悪かった」
謝っても小さい鬼が近づいてくるから、俺は近づかれた分だけ下がった。
「お前はそう言って今、マークの人の良さに付け込んで殺したな。またそうするつもりか?」
「もうしない! もうしないから! あんたには絶対しない!」
「それはそれは殊勝の心がけだな」
小さい鬼が美しく笑った。
「許してくれるか?」
「いいや許さん。お前に教育などうんざりだが、1つ教えておく。鬼が、相手によって言葉を変えるな!」
何か静かな怒りのようなものを込めた一撃を腹に叩き込まれた。ホロスと同じだ。いや、こいつホロス以上だ。全部痛い。とても痛い手をしている。何をこいつは怒ってるんだ? お前は俺より強いじゃないか。謝ったらもういいだろ。
「ま、待ってくれ。どうやったら許してくれるんだ? 俺はもう戦いたくないんだ」
「戦え」
「嫌だ。お前はホロスより怖いから嫌だ」
「俺はお前がどれほど命乞いをしても、見逃してやらん。戦わないなら死ね」
鬼の手に金棒が現れた。俺の持っているものよりもはるかに小さい。でもどうしてか怖い。
「こい。来ないなら殺す。あとスキルを忘れるな。お前にもあるはずだ。そのレベルでスキルが何もないとは言わせんぞ」
「スキル?」
「言葉を心の中で思い浮かべろ。自分が一番強くなれるスキルが湧き上がってくるだろう。それで俺の攻撃をしっかり受け止めろよ」
「待ってくれ。そんなこと言われても知らない」
「知らないなら今知れ。できなかったらそのまま死ね」
「スキル……」
自分の中にある。そんなのあるのか? 自分の中……。俺は自分の中に問いかけた。俺が一番強くなるもの何か出てきてくれ。出てこないとこいつに本当に殺される。
【——】
そして鬼が言う通り、頭の中に確かに浮かんだ言葉があった。それが俺を強くするとなんとなくわかった。
「行くぞ。かなり頭に来てるから手加減できんからな」
鬼が金棒に力を集中していく。でも俺はスキルで自分が強くなるのがイメージできた。急にできた。これならこいつに勝てる。絶対勝てる。ホロスにだって勝てる。そもそもこのチビより俺の方が体がでかい。むちゃくちゃでかい。
その上このスキルとかいうやつを唱えたら絶対勝てる。俺は集中した。鬼の姿が消えた。でも見えていた。とんでもない高速で動いただけだ。あんな小さい棒切れで俺の巨大な金棒を受け止められるわけがない。
俺は体中のエネルギーを感じて金棒に集めた。そしてスキルを唱えた。
【巨鬼豪腕獄滅!!!】
【滅殺 撃滅 圧殺 鬼の面汚しが!】
俺の巨大な金棒と目の前の小さな鬼の金棒が激突した。勝てる。やっぱり俺の方が強い。俺の大きな金棒が、空中で激突した鬼を押し返していく。勝てる。絶対こいつは強い。強いやつに勝てる。たまらなく体中が興奮してくる。
「お前なんて死んでしまえ!!!」
勝てる。勝てるんだ。
【やかましい雑魚が!!!!】
それなのに、
「ど、どうして押される!?」
なんだこいつ? 俺の体が踏ん張ってるのにどんどんと岩石地帯を引きずるように下がっていく。
【それはお前が弱いからだ!!!!!】
普通に喋ってるだけなのにそれにどんどんとエネルギーが満ちていくのがわかる。こんなのがあるのか? こんな小さいやつに大きい俺が押し戻されていく。それが爆発した。
【死!!! ね!!!!!!】
衝撃が胸を通り過ぎた。体が倒れていく。地面を響かせて体が倒れて、心臓部分を触るとそこに何もないのがわかった。いつもなら傷はすぐに再生してくるのに再生してこない。
自然治癒で傷ぐらいだといくらでも治ってくるはずなのに。
「お前はもう生き返るな。死んで出直してこい」
「傷が治らない。どうして……」
「じゃあな」
地面に降りると鬼がゆっくりと遠ざかっていくのが分かった。
「すぐに【管理球】を探して小僧に連絡? 嫁を助けに行けだと? 断る。お前の嫁は一人で行けると言っていた。他人の戦いに介入するのはアホらしい。うるさい。知らん。お前も嫁を信じることだな。うるさい。そんなことはしたくない。自分の楽しみを優先させて何が悪い」
もう別のことを話している。俺に興味も向いてない。悔しい。ホロスに負けた時、俺はどうしてもっともっと強くなろうとしなかった。俺はきっともっと強くなれたんだ。遠ざかっていく小さい鬼と同じぐらい強くなれたんだ。
どうして、どうして俺はホロスに負けて諦めたんだ……。悔しい……。ホロスに一族が殺された時、あんなに悔しかったのに、何もできないまま死んでいく。後悔。それはもうあまりにも遅すぎたんだ。