軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百九十話 皇帝ホロス

人に無理難題を押し付けるなら、自分こそ一番大きな負担を背負う覚悟はあるか。報酬も渡す。みんなはここまで自分がレベルアップできたのは俺のおかげだと思い感謝してくれてる。だから嫌がってもいない。

でも俺は根源的には人間不信だ。気持ちよくその言葉を受け入れられない。だからこそ自分が最も無理だと思えるようなことをする。この作戦において誰の不満も噴出させないためには、それが一番重要だと考えていた。

「クミカ。付き合わせて悪いな」

「祐太様。私にだけはそのような言葉必要ないと分かっているはずです。クミカはあなたと二人でいられるなら、他に必要なものなどないのです」

クミカの心は俺と繋がっている。あらゆる隠し事が2人の間にはない。この世に存在する誰よりも親しい間柄。クミカは肉体的な接触を俺に求めることなく、ただ一人の人間の心を全て知ることでその相手とだけ理解して生きていく。

それがこの世の至福だと思っている。俺は俗的なところをもっと残していて、人から評価されたいし、クミカ意外と喋りたいとも思っている。クミカは俺のそういう部分も含めて受け入れる。俺がクミカ以上に好きな人がいても構わない。

元々王女だったクリスティーナが主人格で、ゴブリン集落での日々や、自分の国を追われた転落人生も、彼女の性格に大きく関わっているのだろう。

どこか自分が汚れた人間という思いが捨てきれず、たくさんの人間と関わることにひどくストレスを感じる。それはミカエラにも言える。誰にも心を閉ざし、ただ心の赴くままに人を爆発させて回っていた狂気の少女。

クミカはそれも受け入れている。迦具夜も人格的には壊れた部分の大きい女性だった。そういったものが合わさって奇跡的に誰も自分の存在を主張せず、一つの個人として成立している。

いつかクミカは俺から離れるだろうか。心が癒されればこの状態は窮屈ではないのか。こういう俺の疑り深さもクミカは受け入れる。

「つくづくできた男ではないな」

視界には皇帝ホロスの住む、巨大な居城がある。この聖勇国には巨人がいる。それは特殊モンスターのカオスオーガのような巨人ではなく、種族として国民の全員が巨人。身長が低いものでも3mを超えるホメイラ族である。

この世界で一番巨大な支配域を持ち、その地位はもう長く変わらないまま。その国の皇帝であるホロスは体長5mある大男。聖勇国では必ずしも実力主義ではないが、巨人は実力主義であり、強くなければトップになれない。

だからこそホロスは強いのではなく、1人だけがバグのように強いそうだ。そのホロスが従えているのは、自分よりもレベルの高い恐炎竜ドルティラノである。バルガレオルと属性が同じで、炎を操るのだという。

姿はティラノサウルスとどこか似ていた。赤黒く光る体はトゲトゲしく、身長は10mほど。このクラスのモンスターとしてはでかくない。むしろ小さい。しかしティラノサウルスよりもドルティラノは1000倍強い。

その姿も俺の目に映っていた。モンスターとしての密度が濃い。そこだけ空気が歪んでるようにも見えた。巨大な城の広い庭に、どう見ても飼いならせるわけがない恐炎竜が寝ていた。俺は少し離れた位置から見つめていた。

少しと言っても探索者なので30㎞ほど離れてる。探索者だとこの距離でも近いのだ。ましてやルビー級になると、1000㎞ぐらい離れないと、遠いなという感覚すら湧いてこない。

「クミカ」

「はい」

「離れるのは嫌だろうが、魔導王桜魔と皇帝ホロスはともにいる方が強くなるそうだ。桜魔の方は頼んだぞ」

桜魔は女性であり、どうやらこの2人は恋人関係らしい。ただ巨人は巨人以外とは交われないらしく、結婚ができない。だからお互い近くにだけ住み、そしてそれぞれに相手はいるらしい。その相手と子供もできている。

しかし思い合っているのはホロスと桜魔という不思議な関係性だ。まああまり人のことは言えないが、ともかくこの2人は一緒になると倍は強くなるという話だ。

玲香とラフォーネが言うには、

『帝王ロガンと剣神ベリエルの関係性と似ているわね。ホロスが近接、桜魔は中、長距離、どちらも得意。協力されるとこれが恐ろしく厄介になるらしいわ。ここに恐炎竜ドルティラノが加わった日には、もうこの世の地獄らしいわよ』

『国としても超越者としても対抗できるのが、帝王ロガン達だけだ。もしこいつらと戦うなら侮るなよ。1対1なんてまず考えるな。こちらの方が人数が多くてもまだ勝てるかどうか怪しいと思っておけ』

そう言ってたのにな。それでもこうするしかないと思った。“あいつ”はまだ紅麗様に気づけていない。そんな気がするのだ。でもあいつは必要なピースを集めるのがうまい。時間をかけすぎると気づいてしまう気がした。

紅麗様と白蓮様。この2つの超存在にしか俺の勝機はない気がする。レベル999まで上がれば即行で紅麗様の元に行く。ここまでの道のりの短さがこの戦いの鍵に思えた。

「この戦いは俺が生きるか死ぬかだ。クミカ、頼んだぞ」

「畏まりました」

クミカは俺とは真逆の方向に目を向ける。ホロスの居城と桜魔の居城は近い。同盟関係が強固であり、お互いに裏切る心配をしていないこともあり、ルビー級最高位の探索者としては距離があるのかないのかわからない。

それほどしか二人の距離は離れていない。俺たちがいるのはホロスの支配するホメイラ州と、桜魔の支配するサクラマギア州の境なのだが、誰にも見つからないように森の中でさらに気配も隠している。

その上にクミカの影の中に潜ってもいた。国境付近からお互いの居城まで30km。両方の距離を合わせて60km。60kmの距離などお互いその気になれば10秒ほどの時間しかかからないと思われる。

「そのぐらいお互いを警戒するよりも、近くで助け合える場所にいるか」

「この配置はローレライにそうなるように仕向けられたのかもしれませんね」

恋人同士だからそうなった。そんな夢のある話よりも、クミカは現実的なことを口にした。ホロスや桜魔が思い合う気持ちよりも、“あいつ”ならそういうことをしかねないなと思えてしまう。

「可能性は大きいな……」

お互いにわかっている限りの相手の情報は頭の中に入っていた。そして伊万里に出した【災禍の手紙】は必ず威力を発揮しているはず。死なないようにかなり考えて出したが、まああいつがそばにいるなら伊万里を死なせる心配はない。

あいつはああ見えて仲間思いだ。あいつが正気である可能性が高いと俺は思っていて、そして何か理由があるのなら伊万里は絶対に死なせはしない。敵対しているのだとしても、あいつのそういう部分を信じていた。

「呪いの専門家の死神もいるしな」

俺は精神を研ぎ澄ませていく。氷狼王グレイシスから【管理球】をもらえたことで、ガチャもまた回すことができた。そうしてさらにルビーアイテムも一つ増えた。残念ながらというか幸運だったのか、

【太陽の聖杯】

というヒノエの強化アイテムだった。華のストーリーを見たことで、あいつにこれを渡すべきか悩んだが、俺は結局は渡した。どうしても今すぐ、俺に敵対して何かをするとは考えられなかった。

もしそんなことをするんなら今までのあいつの全てが嘘になる。

「それは違う気がするんだよ」

つぶやいた。まだクミカと繋がったままなので俺の心のもやもやも伝わってる。ただ黙って聞いてくれる。それだけでよかった。

「クミカ。どちらも居城にいるようだ。ホロスと桜魔はお互いの城にいる時、お互いの存在を感じているらしい。どちらかに異常があれば、お互いがすぐに合流する。そしてそこにドルティラノがいると、セラスですら怯えると言われるほどの戦力になるらしい。しょっぱなでそれを俺が壊す。いいな?」

「畏まりました」

そうしてからマジックボックスから深い紫色をした【倍加薬】を取り出した。蓋を開けて圧縮し小さくしてから口の中に放り込む。それを胃の中にまで念動力で落とし込み、魔力で刺激を与えるだけで包んだ殻が破れるようにしておく。

俺はクミカの影の中でポーションもたくさん出した。

「美鈴たちにもあげたから、ちょっと心もとないけどいくつか体内に仕込むぞ。クミカも【倍加薬】は?」

「おわかりでしょう? 人にあげまくった祐太様のよりも、私の方が持っておりますよ」

クミカはそう言って微笑むと、自分のポーションを出し、俺と同じようにして【倍加薬】などがいつでも効果を発揮できる状態にしておく。アイテムは出し惜しみなく使い切る。何しろホロスを倒せれば、大量のガチャコインが手に入る。

「いや、違うのか?」

ふと玲香の言葉が気になる。人に管理されている【管理球】は常にコインを回収しているから、支配しても上がるのはレベルだけ。そんなことを言っていた。

「いや、でも、ホロスが隠し持っていれば、それを見つければいいのか」

通常ならそんなこと無理だろうが、クミカがいる。【心眼】でホロスの頭の中を強制的に見ることができれば、隠しても無駄だ。そして俺としてはルビーコインを隠し持ってる可能性は結構ある気がした。

「ホロスはこの世界ではセラスを入れなければ最強だという。それなら自分の分に回すより、他の超越者に対する何かの交渉材料にする可能性は高い」

勝利すれば間違いなく膨大な報酬が待っている。

「しかし、絶対俺より強いよな。勝てるか?」

【倍加薬】で実力が追いつくかどうか。そもそも相手も【倍加薬】を持ってる可能性が高い。

「こいつに今勝てなきゃ。あいつが気づく前に紅麗様へたどり着くのは無理。そんな気がするんだよな」

気がするとは曖昧ではあるが、探索者の勘はバカにできない。今までもそれに助けられてきたし、人間としての能力が通常の人の何百何千倍と上がっているのだ。勘の働き方も普通ではありえないほど鋭くなる。

「クミカ。きっと桜魔も似たようなものだ。まあ桜魔はホロスより若いらしいから、強さは劣るだろうが、その辺はあまり期待するな」

「承知いたしました」

ともかくアイテムを出し惜しむ余裕はない。全て使い切ってでもこいつを倒す気だ。自分の中で10秒数えていく。クミカは俺と繋がっているから口に出す必要がない。

10、9、8、7、6、5、4…

3、

2、

「行くぞ!」

スムーズに俺とクミカが影の外に出た。俺の方は鳳凰に体を変化させる。そして一気に空に飛び上がった。【鳳凰飛翔】で稲妻のごとく速く俺は飛んだ。最初の目標は決まっている。恐炎竜ドルティラノ。

「呑気に寝てるところ悪いな」

すでにその直上5mに来ていた。姿を人間形態に戻す。ルビー級最高位のモンスターだけある。すでにその赤く光る瞳でこちらを見つめていた。戦闘態勢を完全に整えようとしている。皇帝ホロスもこちらに気づいている。

でかい図体なのに器用なこともできるようで、把握していたホロスの位置から空間が歪み、【転移】が発動したのを感じた。一瞬後にやつはこの場に来る。1対1でも勝てるかどうか怪しい相手だ。

2対1になったらもはや勝ち目はないと俺も理解していた。

「死んでくれ」

俺は初めて使う魔法を唱えた。

【時間停止】

皇帝ホロスが現れたその瞬間に唱えた。全てが停止した世界。寝息を立てていた姿から起き上がろうとしていた恐炎竜ドルティラノの動きが停止し、世界が静止した。この一瞬を生かす。時間停止は便利なようで不便だ。

1秒しか時間は停止をしておらず、おまけに事前に別の魔法やスキルを唱えるといったことはできない。なぜならただでさえ実力に見合わない魔法なのだ。【時間停止】にかけなきゃいけない集中力が大きすぎて、他の事などできない。

しかし、発動してしまえば停止した世界で俺は自由に動くことができる。それはたったの1秒間だけだけど、探索者にとっての1秒は普通の人にとっての1分にも匹敵する。俺は今この瞬間にもう一度、全神経を集中させた。

知能をフル回転させて、言霊を編んでいく。

【全ての熱を消し去れ 我こそ炎帝 炎の王者 全ての熱は ただ我が前にひれ伏すべし】

全ての言霊を圧縮して、刹那で唱える。高速詠唱などすれば威力が下がる。しかしバルガレオルの時と比べてレベルが上がっていることで、なんとか補う。

目の前のティラノサウルスにも似た化け物は、その巨大な体を空中に持ち上げる寸前で、動かずにいる。生物として当然の敵が現れて身構えるという権利すらも奪う。

誰も動けない時間の中、周囲にいるドルティラノの世話係らしきリザードマンも、メイド服を着たリザードガールも、巻き込むかもしれないことに詫びを入れる。

【絶火】

羅刹を振り抜いた。しかし全ての事象は停止している。俺の動く周りだけの時間が俺と共に動いているようだが、俺から放たれた攻撃はその時間を停止する。結果、ドルティラノの3mほど手前で、ドルティラノを殺すであろう攻撃が止まり、

そして、時間は動き出した。

避けられるわけがない。そう思った。確実にドルティラノは死ぬはずだ。しかし刹那の瞬間、あるいは皇帝ホロスも巻き込めないかと俺は欲張った。斜線上にあるいはホロスが現れてくれればと俺は待ってしまった。

しかし、ホロスは斜線上には現れず、これ以上1秒でも無駄にすると、人間であるホロスは何をしてくるか読めない。俺の予想通り、“ドルティラノは”開戦と同時に目の前に迫った攻撃を、躱すことができなかった。

体の半分まで全ての熱を奪い去る刃によって斬れていた。それなのにそこで、聞いたことのある魔法の名前が聞こえた。

【強制転移】

確かにそう言葉にした。それはかつて南雲さんが、遠くのマンションから穂積達を強制的に【転移】させた力。その能力から考えて、同格の探索者やモンスターには使えないタイプの技だと思っていたが、

「相手が受け入れていればできるか。ちっ」

心の底から舌打ちが漏れた。完全に仕留め損ねた。ただでさえ【絶火】を完全に唱えられなかったのだ。真っ二つにしていない状態だと、ルビーモンスターの中でも最高位のドルティラノは多分復活してくる。

そして復活されたら終わりだ。クミカにも連絡して逃げるしかない。しかしそれは作戦全体の失敗を意味する。この作戦の要は俺だ。俺がしくじったら全員、戦う意味さえなくなる。

それに、逃げてもホロスがセラスに俺たちのことを報告したら、その時点で計画を最初から練り直さなきゃいけなくなる。【明日の手紙】の効力がそこまで期待できない以上、それは俺の負けを意味する。

負けたくないならドルティラノはここで仕留めなきゃいけない。俺は再び鳳凰に変化し、【強制転移】されて、1㎞ほど離れた街の真ん中に現れた恐炎竜に飛翔して迫る。体が消滅していこうとしているドルティラノ。

ホロスもこれほどの巨大な恐炎竜をこれ以上遠くには飛ばせなかったのだろう。街中にいる一般の巨人たちを踏み潰していた。ドルティラノの体はだんだんとなくなってきている。それでも自分が使ったスキルだからわかる。

これだとドルティラノの消滅は途中で止まる。止まればこのモンスターは一気に体を再生させてくる。どうしても絶対に、殺しきらなければいけない。

【強制転移】

巨人にして皇帝ホロスが再び俺から離れさせるために、魔法を唱えた。地下にドルティラノの部屋でもあるのだろうか。その気配が地下に潜ったのが分かる。俺も【転移】した。ホロスが少し驚いた気配がした。

【転移】を俺も使うと思ってなかったのだ。ホロスの対応が一瞬だけ遅れた。ホロスがここに来るのに一瞬のタイムラグが生じる。

「悪いがどうあっても死んでくれ」

【時間停止】

全ては流れる作業のように進めた。

【全ての熱を消し去れ 我こそ炎帝 炎の王者 全ての熱は ただ我が前にひれ伏すべし】

言霊を繰り返す。

【絶火】

今度はできるだけ距離をゼロにして、羅刹を振り抜く。再び時が動き始める。全ての熱を奪い去り、斬り裂く刃は今度こそドルティラノの体を真っ二つにした。ドルティラノが口に力を貯めていき、消滅する体の中でそれでもエネルギーを貯めている。

こちらに放とうとしているのがわかる。

【恐王砲】

きっと最後の断末魔。こちらに向かって放つエネルギー砲が、視界を埋め尽くす。【転移】で逃げたいが、俺がここから離れたら、その間にホロスがドルティラノを復活させる可能性を否定できない。だから踏みとどまった。

だからってまともに受けたらダメな攻撃だと見れば分かる。俺が使える【絶火】の次に強力なスキル。

《もう一発行くぞ。羅刹!》

《そうでなくては! 任せろ!》

【 金華火繚乱(きんかかりょうらん) !】

翠聖様に頂いたスキル。何者をも砕くスキルをくれたと言っていたが、ゴールド級をすぐに通り過ぎてしまって、結局一度しか使えなかった。しかしスキルが成長してさらにルビー級でも上位のスキルになってくれた。

【絶火】の次に威力のあるスキルでありながら、言霊の詠唱が必要なかった。

「さすが翠聖様。とても使いやすい」

羅刹の刃から金色の光が溢れ出す。エネルギー砲のできるだけ下腹を打ち上げる。単純な威力で言えば向こうの方が上。まともにぶつかってはいけない。方向をずらすだけでいい。腕が折れるかと思うような重みのある攻撃。

金色の火に包まれ、その攻撃が上に登っていく。そうするとホロスがドルティラノを移動させたのは城の地下。当然のように巨人の皇帝ホロスの住む城が消滅していく。天井が完全に開けた。そして俺の腕がなくなっていた。

羅刹が地面に落ちていき、念動力で止めて拾う。

「面白いことをしてくれたな小人」

腕を再生する中で、開けた空に皇帝ホロスがいて、俺を睨んでいる。格上であることは承知している。このままじゃ勝てないこともわかってる。

「我が城に人がどれだけいたと思っている?」

「わざとじゃないんだ。許してくれよ」

姿に圧倒された。身長5メートル、まるで天空から降り立った神のような存在感。肌は通常の人と同じく肌色で、太陽の光を受けて輝いている。ホロスの目は黒眼で、どちらかと言うと東洋人だが、その顔は堀が深くいかつい。

じっとこちらを見つめると、視線に呑み込まれそうになる。こちらに指を向けた。丸太でも生えているのかというような太い腕。俺など簡単に握りつぶせそうだった。

「許すわけもないがな。貴様を殺すよりドルティを生き返らせてやる。どけ」

「やだね」

「なぜだ?」

「でかい頭は飾りか? そんなこと自分で考えろよ」

「どけないという返事だな。理解した」

この程度の挑発で人間の超越者が怒るわけもない。

「でかぶつ。俺をどかしたいならお前が死ね」

「余計なことを言いながら、こちらを常に牽制しているのがわかるぞ。なるほど。お前はなかなか良い戦士だ。ドルティにこちらが気を取られる間に、2手、3手と先に進む。そのための方策を常に頭に巡らせているな」

「どうかな」

だめだな。こいつ頭もよく回る。マジで強そうだ。強そうなやつは嫌いだ。池本の馬鹿を思い出す。本当に強いやつはもっと嫌いだ。自分が死ぬ心配をしなきゃいけなくなる。

「久しぶりに 戦(いくさ) ができそうだ。ドルティは小人と楽しんでから蘇らせてやろう。きっと自分も遊びたかったと後で残念がるであろうな。おお、そうだ。小人も生き返らせて欲しければ言っておけよ。服従を誓うならば生き返らせてやる」

「それはこっちのセリフだ。お前が負けたら服従を誓うなら、生き返らせてやるよ」

「小人、お前小さいくせに愉快だな」

皇帝ホロスは豪華なマントと衣装を着ていたが、それが専用装備なのだろう巨大な甲冑と戦槍が現れる。左手には巨大な盾も握っていた。玲香とラフォーネから聞いてはいた。あの二人曰く、

『皇帝ホロスは完全に正攻法で戦い、余計な攻撃をしてこない』

『それをひたすらに極めてるの。とても有名な話よ。ホロスは“皇帝にして最強のセラスの騎士”だと』

逃げも隠れもしない正統派の騎士。さて、俺のアイテムと実力でどこまで通用するかだ。