軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百八十四話 Side小春 ギガノス大陸地下都市

Side小春

私たちは全体会議が終わった後それぞれに、自分の戦場へと向かいギガノス大陸に入り込んでいた。天災獣ギガが支配する大陸。モンスターが栄えていて人はほとんどいないという噂の大陸である。

あまりにも強いモンスターがゴロゴロいて、人が住むには不向きな土地だと聞いていた。なんでもシルバー級以上のモンスターがかなりの数いるらしい。

でも、そんな中でも人の逞しさというか、ずる賢さというか、そういうものは健在なのだそうだ。このギガノス大陸でも天災獣ギガが決して手を出してこない場所に、人は自分たちの陣地を築いていて住んでる。

それがどこかといえば、ラフォーネが教えてくれた。

『私も行ったことはないのだがな。ギガノス大陸には“地下都市”があるそうだ。あの大陸に行くなら、作戦開始までそこを拠点にすればいい』

『なんだか窮屈そうなんだけど』

そう聞いて、私たちは、

「……おお!」

場所はギガノス大陸のはるか深く、暗号魔法を知らないと入れない洞窟の奥にある奇妙な円盤。それに乗って地下に降りた先、目の前にはるか古代、まだギガもいない頃に造られたという地下都市が姿を現す。

それは地上でも見たことのあるレンガ作りの建物。

こんな場所に都市を築き上げたというのに、建物自体のレベルは低い。玲香さんの領主館があった街の建築と同レベルで、そこまで発達しているとは思えなかった。そしてそれとは別にこの地下都市に、見覚えがある。

いや、きっと探索者であれば誰でも見覚えがある。

「美鈴、ここ、1階層を造る技術で造られたみたいね」

その範囲は広く私の感覚器官でわかる限り、どうもダンジョンの1階層と同じぐらい広さがあるようだ。見た目も非常に似通っており、都市がある場所以外は私たちにとってはとても見覚えのあるサバンナの大地が広がっていた。

「本当だ。広さは同じだし、私の知ってるサバンナだね。そこに建物だけ生えたって感じ」

ギガの支配地域はアフリカ大陸並みの広さがあるそうだ。ギガをはじめ強いモンスターがたくさんいる。しかし、人が諦めるにはあまりにも広大な土地だ。そんなことから先住民は、自分たちが安全に生きるために考えた。

とにかくモンスターが怖い。シルバー級以上のモンスターがゴロゴロいる。強い冒険者ならいいが、ここで生活をしているだけの人間にとっては安全圏はどうしても必要だ。そうして生まれたのがこの地下都市らしい。

「あれってダンジョンの中でも見たことのある太陽よね?」

人工太陽が常に辺りを照らし、ダンジョンは1日中真昼だが、こちらは朝と昼と夜もある。一部でダンジョンの技術が使われている。そして使われていない部分は地上と変わらない技術力。

ここに降りてくる円盤に乗った時、ダンジョンの1階層を降りた時と同じ空間転移したことを感じた。

「誰がこんなものを造ったのかしら。それとも元からあった?」

目立つことを避けるためか、黒髪黒目に戻している美鈴に話しかけた。

「私たちのところにはなかったよ」

「私たちが知らないだけだったり……」

「全部の【管理球】を握ってるのに知らないなんてことある?」

「まあそうよね」

ギガの居場所ははっきりしていて、聖勇国侵攻作戦開始まで余裕があったこともあり、地下都市を観光気分で回った。街は一通り見て、食べ歩きをする。七猫国の街と違うことを楽しんだり、夜は美鈴と2人で酒を飲んでゆっくり寝た。

私たちは翌日、散歩がてら街から出て外のサバンナを探検することにした。サバンナには1階層と同じくゴブリンがいることに謎の感動を覚え、他にも建物があるのに気づいた。

「遺跡かしら?」

そんな時、見つけたのが古代遺跡だった。人が住んでいる場所とは結構離れていた。それは1km平方メートルほどのもので、私たち以外の人などいなかった。誰にも管理された様子などないのに、ゴブリンが棲み着いてる様子もない。

「なんかこの建物ってさ。新しくない?」

美鈴が言い、私もそう思った。その言葉の意味は新しく建った建物という意味ではない。人が住んでいる場所側から考えて老朽化はしている。しかし、すっかり苔むして、蔦も張っていたが、四角いのっぺりした建物だ。

「小春、何かわかる?」

こういう場所で能力を発揮するのは私である。

「うん。ちょっと待って」

私は呪い猫という種族になってから、物に触れるとそのものから音が聞こえる。そして私の元からあるジョブは呪師であり、呪師とは人の思いを操る。だから物から聞こえる音は、ちゃんとした言葉になっていて、私に教えてくれる。

それは、

【物質思念測定】

そんな名前の種族スキルだった。

骸骨……、怖い怖い……

それは人の思いがエネルギーとなってものに宿り、声として残ったもの。

白い服……、

一般にはサイコメトリーという能力として知られている。

人じゃない……、

呪師になってから本当にサイコメトリーが使えるようになった。

怖い……、

それを使えるようになった時、本当に探索者って何でもありだなと思うようになった。

何をしている……、

それを聞き取ることで私は今までいろんな状況で、人よりも情報をたくさん仕入れることができた。人の心は読めないけど、人の残した思いは読める。そんな能力で私はあちこちの遺跡の残骸に触れて調べてみた。

美鈴にも能力で心霊系のものがあり、私も気配を隠すのが得意だったりする。美鈴と私の能力は被ってるところが多い。コンビの相性としては多分悪い。それでも美鈴を見捨てずに来た。それはなぜか?

自分でもこの辺は理解できない。私は六条の顔が好きだ。それと美鈴を見捨てずにいたことは繋がりがあるのか。正直、美鈴に探索者を諦めることを勧めてても、六条の私への評価は変わらなかった気がする。

そうするとやっぱり美鈴への友情……。

「美鈴、ここってずいぶん前に滅んだんだけど、その滅びた理由がね。白い服を着た骸骨に捨てられたからなんだって」

「白い服の骸骨? なんか“米崎博士”みたいだね」

美鈴は本当には思っていないのだろうが、そんなことを言ってくる。でも実際のところ私が感じ取ったのは、ここに博士がいたということ。感じ取った映像は確かに博士の【転生】した今の姿にそっくりだった。

ここを造ったのは博士……何らかのダンジョンアイテムを使用して造った……。

「美鈴、ラフォーネはこの地下都市がいつ建築されたものか、言ってたっけ?」

「それは聞いてないけど、気になるの?」

「そうね……」

玲香さんからここの超越者の情報を聞いて、気になっていた人物がいる。それはローレライだ。ローレライの見た目は白い聖衣に不健康そうな男。そいつのせいで六条の元義妹の伊万里が、かなり早い段階で六条を裏切った。

それと昔ここにいた白い服の骸骨男。両者は何の繋がりもないのだろうか。

「美鈴」

「な、なに?」

この子、妙に勘のいいところがあるのよね。私が考えていることに少しは気づいてそうだ。でも怖がりだから深くは聞いてこないか。

「そんな顔しない。白い服を着た骸骨の男が、何のためにここにいたのかちょっと興味があるのよ。ちゃんと調べたいから、あなたは地下都市の方でギガの情報収集しといてよ」

「え、ええ……。そんなことよりギガに集中した方が良くない?」

「美鈴、私が何かを心配してること、それは何となく感じてるでしょ」

「まあ詳しくは聞かないけど、小春は“ふんすっ”って顔する時は大抵あんまりいい時じゃないもん。そんなの関わらなくてよくない?」

「この世は目を逸らせば何でもうまくいくわけじゃないのよ。大抵のことはそらした分だけ後で腐って現れるの」

「祐太がちゃんと対応すると思うんだけどな」

美鈴のやつ何か知ってるのか? この子、正直じゃない時は本当に正直じゃないからな……。

「美鈴、あんたね。何の手柄もなしに弁財天様や、英傑になっちゃったエヴィーを押しのけて正妻にちゃっかり収まるつもり? ちょっとそれは無理筋だと思わない?」

「な、何よ急に」

「目をそらしてる間に誰かに追い抜かれるんじゃないわよ」

「それは分かってる」

「こっちは私しかできないから私がやるわ。美鈴は耳がいいんだしギガのこと調べてきてちょうだい」

それから美鈴と別行動をして古代遺跡のあちこちを回った。ここで何が起きたのか、白い服を着た骸骨は何を考えていたのか。私はどんどんと調べていく。調べていくほどにだんだんと私の顔色が悪くなってくる。

博士がどうやらここにいたのは間違いないようだ。何の目的かまでは残留思念が曖昧でわからなかったけど、どうもこの土地でかなり長い年月強いモンスターを造り続けていたようだ。

そして、

「——調べ終わったことは全部六条に送るわよ」

「こんな内容、祐太に送るの?」

「当たり前でしょ。あいつはリーダーなんだからこれを見る責任があるわ」

「それはそうだけどさ」

美鈴はエヴィーに捨てられたことが相当堪えてるようだ。あの日以来妙に人との関わりに怯えるところがあるし、六条に同じ目に遭わせたくないのだろう。でもこんなこと先延ばしにしても同じだ。

この世界の昔に博士がいて、今もローレライという存在がいる。それは変わらない。六条が10年もいなくなったことから言っても、ダンジョンの中は時間移動が可能なのだろう。そして博士は相当大きな時間移動をしている。

その結果、博士は聖勇国の昔に関わってる。六条はどの道それを知っておいた方がいい。中心は六条だし、私たちはサポートでしかない。

「美鈴、あんただってこれが終わったらエヴィーよ。六条がもし、究極系で面倒のことに巻き込まれたら、またいなくなる可能性だってあるのよ。その時はあんたがなんとかしなさいよ。あんたが何もしないなら私は何もしないわよ」

「うん……」

「ほら行くわよ」

調べ終わるのには4日ほど、ここに来てからで考えると5日目だった。侵攻作戦の発動まで、1週間ほどと聞いていて、まだ時間的には2日ほど猶予がある。私たちはともかく地上に戻るために本来の地下都市の方へ歩き出した。

そうすると自分で言うのもなんだけど、私は綺麗になっている。どうも地下都市をうろついている時から目をつけられていたらしく、ごろつき風情が、

「ちょっと姉ちゃんたち、俺たちと仲良くしようや」

「悪いようにはしないって。素直にしてたら天国に行かせてやるよ」

「とってもとっても気持ちいいぜ。俺たちがな」

そんな声をかけられてとりあえずボコした。でも正直ちょうどいいなとも思った。こういうことをする輩には何を命令しても良心がいたまなくて済む。なので正座させて、私たちもこの都市には不案内なので、聞いた。

まず、

「は? 天災獣ギガと戦いに来た?」

「そうよ」

「姉さんたち。観光じゃなくて、マジで戦いに来たの?」

「モンスターを観光するやつなんていないでしょ」

「いや、いるんだよこれが。姉さんたちは身なりもいいから、てっきり金持ちの女かなんかと思ってだな」

かなり狼に近い見た目の狼人間と普通の人間二人だった。実力はなかなか高くレベル200ぐらいはありそうだなと感じた。しかしそれでもここで活動する冒険者の中では低レベルだった。

外からだともっと強くないと入って来られないから、どうやら地下都市生まれの冒険者らしい。

「そう見える?」

瞳に少しだけ力を入れる。

「い、いや、姉さん、全く思いませんとも」

「いいわよ。貧乏じゃないのは確かだから。ところでこんなところに金持ち女で呑気にしてるのがいるの?」

「この地下都市は安全だってことは結構有名だからな。一度は地上最大生物にして最強生物ギガを見てみたいって、観光客はまあそこそこいるんだよ」

「でもギガなんて観光で見に行って襲われないわけ?」

ギガノス大陸に最初上陸した時、その姿を見てあまりの大きさに私でもビビった。その上、レベル999の生物というのは、知能も上がっているはずである。超巨大生物で最強生物だからと言って、命をかけてまで見たいものか。

「もちろん見つかったら襲われますよ。でも何しろでかい化け物っすからね。100㎞ぐらい離れて見ても、20cmぐらいはあるんっすよ。それを対象物の見え方を拡大する魔法で、ちょいちょいとやると、目の前に200mの化け物が現れるってわけだ」

「それでも危険でしょ。この大陸自体かなり強いモンスターだらけよ。ギガは100㎞先でも、そこから見物する自分たちの足元にはモンスターがいないわけじゃないでしょう」

「まあそんな酔狂なことするのは、護衛をガチガチにつけられる金持ちだけですし、ここに来る強い方々も小遣い稼ぎにぐらいにはなると思って結構護衛を引き受けるみたいですよ。だがここじゃ護衛をつけたぐらいじゃ命の保証なんてどこにもない。それはわかんないんだよな」

「ふーん」

ゴールド級以上の人間は、確実に支配階級であり、護衛仕事はお金では滅多にやってくれない。お金で動かせるとしたらシルバー級までだろうが、それでも一流どころは難しい。

昔のゲームなら一定以上の強さのある人間は支配とは何の関係もない場所にいるケースがままあるが、ダンジョンの中では逆である。強いと支配階級になれる。ダンジョンが現れる以前の地球は強いと言っても限界があった。

相手が拳銃を持っているだけでも、どんな達人もまず勝つことができなかった。しかし探索者は違う。レベル200を超えてくると、核兵器ですら有効かどうか怪しくなってくる。

何しろミサイルの音が近づいてきたら、その時点で着弾するまでに逃げてしまう。ゴールド級以上に至っては直撃してもまず即死しないと言われている。これぐらい強くなってきてしまうと、軍事力が効力を発揮しない。

「あんたら冒険者は何をしてるの?」

ギガノス大陸に築かれた地下都市は確かに広大ではあるが、冒険者としての仕事をするにはこんな地下では何もできない。まさかゴミ拾いとか町の困りごとをこなすわけではあるまい。

「かっぱら……」

「へえ、違法なことしてるわけ?」

「じゃ、冗談ですって。真面目に生きてますって。冒険者は上ですよ。地上でモンスターを狩って金稼ぎ、レベル300とか400超えたモンスターは死体でも億の金が動く。一発大きく儲けたいやつが、ここにやってくるんっすよ。それにレアモンスターってのもいて、希少種のアンドロメダっていうモンスターとかは皮膚が稀少鉱石でできてるんですよ。これがまた普通の岩に隠れるのが上手なやつでね。まあ滅多に見つからないんっすけどね」

「見つけたらいくらになるのよ?」

「100億とか言われてますね」

「へ、へえ」

ダンジョンの中の金銭的な価値観は、単位が違えども基本的には統一されている。世界のレベルによっての貨幣価値の違いはあるが、少なくともこの世界にとっての100億円の価値はあるということ。

六条の今年だけでも2兆円の報酬がなければ、正直そっちも探索目的に入れたかもしれない。でもそんなことよりこの仕事を成功させるのが何よりも大事だ。何しろトータルで20兆円の報酬。こんなもの絶対に逃せない。

《なんか100億が高いと思えなくなっちゃったね》

《まあね。【千年郷】の運行システムそのものとも言われる桜千は、完全に六条の信奉者だと言われてる。【千年郷】の利権関係をほぼ全てを掴んでる桜千だと、そんな報酬目じゃないものね》

《彼氏がすごくてビビっちゃう》

《美鈴の場合正妻予定でしょ。頼んだら何でもしてくれるんじゃない?》

《そんなこと言わないよ》

まあこの辺はわきまえてる子なので大丈夫だとは思う。それに六条に舐めたことを要求すると他の嫁候補たちが怖い。主に千代女様とか千代女様とか千代女様だ。

《それより小春。祐太に連絡するんでしょ?》

《うん、まあそのつもりだけど》

天災獣ギガを倒さねばいけないことに変わりはなかったが、ともかく私達はクミカから渡されていた光の精霊に連絡役を頼み、六条への知らせだけは先に終わらせた。その情報をどうするかはあいつ次第だ。

《——やっぱり米崎か》

《何か掴んでたの?》

《まあ少し》

六条からは良い感情は何一つ伝わってこなかった。かなり考えているようだ。

《私としては博士が長生きすぎるのが気になるわね。遺跡も私の感じだと900年は昔だと思うわ。博士が神なんてちょっと想像できないし、博士の後継者的な人間が、何か勘違いしてこんなことしてる可能性もあるかもね》

《それだと伊万里が言うことを聞くわけない》

《ああ、それもそうね。やっぱあんたは死んだ方がいいって博士に思わせるぐらいの何かがあったのかもしれないわね。博士ならタイムマシンぐらい造りそうだし》

《ひどいこと言ってくれるな》

《本当のことは言うわよ。でも私の20兆円がかかってるんだから、こんなことで泣き出してもうやめたとか言わないでよ》

六条の博士に対する信頼度はかなりのものだ。最初は疑ってかかっていた部分がかなり大きいらしいが、最近はどう見ても信頼している。そのために会議からは外さなかったのだろうし、この作戦からも外していない。

少なくとも六条は今の博士が裏で色々してるとは考えていないようだ。私もなんとなくそう思う。何と言うか博士自身も六条を助けようとしている。そんな風にしか見えない。あれが演技ならすごいものだ。

「祐太、なんて?」

美鈴が心配そうに聞いてきた。

「ちょっとは気づいてるみたいね。でも今回の私の話でかなり確信したみたい。このままじゃうまくいかない。だから六条は出口を探してるはずよ。私があいつと行動を一緒にしたのは迦具夜の時だけだけど、あいつがそういうやつだってことは信じてる」

「むう、なんか小春の方が祐太のこと分かってそう」

「どうかしらね。少なくとも六条は私と一緒にいても気は休まらないんじゃないかしら。私ってほらはっきりしてて厳しいから」

「ああ……」

それは納得という顔を美鈴がした。

「そこは否定しなさいよ」

そう言ったけど美鈴はクスクス笑ってた。

そんな時、ついに来た。

私達はもうすぐ六条から合図が来るという1日前から外で待機して持っていた。

そうすると、六条から、

【各地、戦闘開始!】

光の精霊による知らせが来た。

超巨大生物ギガとの戦いが始まろうとしていた。