作品タイトル不明
第三百五十三話 煉獄獣バルガレオル
「かなり前からずっとついてきていたよ」
「教えろよ」
「敵意がなかったしね。教えるとどうしても君の行動が不自然になる。だから教えなかった」
魔法の力で音を響かせた骸骨が口にした言葉。周りの景色はもう完全に溶岩に包まれていて、その熱はどんどんと増していく。溶岩すらも蒸発するほどの熱に包まれ、もうすぐそこに敵がいる。
向こうもこちらに気づいているに違いない。それでも俺たちは止まっていた。地上で街の人間が避難するのを待っている。その間のことだ。1時間ほどは経過しただろうか。予定通りならダンジョンの中にもう冒険者はいない。
「敵意がないなら何の目的だ?」
俺の探知系の能力は、千代さんによって鍛え上げられているものの、常に気配を消すことを趣味にしている米崎には敵わない。何よりも、米崎の警戒心の高さは俺とは全く違う。基本的に米崎は自分が死なないように動く。
そしてできるだけいつも気配を消す。米崎はそういう自分を気に入ってるみたいだった。
「多分、君の味方をしようかどうかずっと悩んでたんだと思うよ」
「それで隠れてついてきていたのか?」
「まあやっぱり炎属性だね。気配の消し方は若干下手だ。長く生きてる割に君とどっこいどっこいと言ったところかな」
「俺って下手か?」
「上手な人間からすると下手だね。まあ炎属性で君もまだよくやってる方だよ。と、今は君のことはいい。ラフォーネの話だよね」
「そうだな。今はもういないのか?」
こうして米崎が骸骨の姿を現し、喋っているならそういうことかと思った。
「君と話し合う時ゼオンはおそらくラフォーネにはいつも【意思疎通】を繋いでいるんだろう。間接的にゼオンから君がこれからバルガレオルと戦うと聞いて、上に帰って行った。わずかに動揺が見えたからそういうことだと思う」
「理由は?」
「想像になるけど、君がバルガレオルと戦うと聞いて、ルビー級がそれだけで怯えるわけもない。理由があるとすれば煉獄迷宮の街に家族でもいるんじゃないかな」
さすが米崎。推理することがほぼ予知に近い。焔将のストーリーで見る限り、ラフォーネは街に家族が住んでいる。俺が今日、煉獄迷宮に入って、即行でバルガレオルに挑むなんて選択をするとは思ってなかったんだろう。
家族を避難させるために慌てて帰った。そんなラフォーネが気になる。だが、ふとした瞬間に感じる熱気が心を引き戻した。周囲の溶岩よりもまだ熱い強烈な空気が奥から溢れ出てる。これほどの熱を持ちながら生き続けられる怪物。
「今いなくなったところだから追いかけようと思えば追いかけられるよ。どうする?」
「どの道一人で戦う。ラフォーネの家族を殺すのは、万が一にもやっちゃいけないだろうし、さっさと安全なところに逃げてもらおう」
その一方で俺は【探索糸】をどこまでも伸ばしていく。街の中で逃げ遅れた人がいないか、全て確認するためだ。SPの消費が極端に少ない探索手段。【探索界】ほど全ての物質を認識することはできない。
だが、【探索糸】に少しでも触れたら、その物体がどういうものか、かなり正確にわかるようになっていた。【探索糸】を究極まで細くすることで煉獄迷宮の岩盤を突き抜けさせる。
糸がまっすぐ上へと素早く登っていく。そこからさらに蜘蛛の巣を思わせるように街の地面にどんどん広がっていく。玲香はかなり早い段階でクミカとともにダンジョンを出ている。そして街の住人の避難を手伝ってもらっていた。
そのおかげもあり街からほぼ全ての人の気配が消えていた。この街の人間は何年かに1度、バルガレオルが暴れるから、避難には慣れてるようだ。それでも逃げ遅れるものはいるものだ。糸が反応する。人の感覚が伝わってくる。
昔使用した時よりも鮮明に【探索糸】から人の情報が伝わってきた。
《クミカ》
《はい》
全部で86名。あの大きなダンジョンの街で、正確には16人まだ逃げられずに街の中にいて、残りは火事場泥棒をしているアホだ。
《火事場泥棒がかなりいるがそいつらは無視していい。それより逃げ遅れた人間が、街から人が消えて、自分達だけになったことに焦っている》
《どこにいますか?》
《逃げ遅れた子供が4人、大人が2人いるエリアがある。両親が2人とも怪我をしているようだ。大人は子供たちだけ逃がそうとしているが、子供達が逃げようとしていない。クミカ。大人を回復させてやれ。あと10人同じような奴らがいる》
《全ての場所を送ってください。すぐに助けます》
クミカはすぐに街に戻り、俺が指示する場所へと走る。クミカ自身は回復魔法は持っていないが、水の精霊が回復魔法を使える。精霊魔法で相当な範囲の治療が簡単にできるのだ。玲香も避難を手伝ってやり、またしばらく時間が過ぎた。
街の中から完全に逃げ遅れていた16人も消えた。火事場泥棒はまだ街の中に残っている。これらは死んだところで文句はあるまい。人も通り抜けるほど細くした蜘蛛の巣を空中に浮かべていき、人間に接触しないか確かめていく。
犯罪者以外はもう残っていない。ただ避難している人間たちは、まだそこまで遠くに離れていない。全てとなると5万人ほどいるらしく簡単にはいかない。それでも必死に逃げていた。超越者がバルガレオルと戦う。
それがどんなことになるのか。何度かバルガレオルとラフォーネが戦った記録があり、そのたびに地上にまでかなりの被害が出ていた。だからみんな嫌というほど分かっている。大事なものはすぐに持ち出せるようにもしている。
そうした時だった。最奥でじっとしていたものが動いた。強烈すぎる熱気が最奥から大きな気配とともに近づいてくる。
「虫けら。お前はどうして止まっている?」
ここまで聞こえる声が響いた。低音で重圧感があり、苛立ちを含んでいることも分かった。バルガレオルが動かない俺に怒っている。こちらとしては避難を待っているだけだが、バルガレオルは地上で人が避難しているのは知らない。
だからこんなところで止まって何もしない俺に怒りを覚える。6時間はまだ経過していなかった。せいぜい2時間ほど。ギリギリ街からみんな離れた。それぐらい。少人数の移動とは違う。整備されていない道が渋滞していた。
5万人もの移動となるとえげつないほど時間がかかる。自分が移動しようとしても前に人がいれば簡単にはいかない。全員冒険者ならば有り余る体力で避難するが、ほとんどの住人は街の機能を維持するための人間だ。
熱の塊がどんどん近づいてくる。何百年も生きてきた獣だ。馬鹿ではない。虫けらと口にしていてもこちらが弱いと侮ってはいないだろう。そして侮れない相手がずっと自分の縄張りにいる。
「苛立つのは当然か」
瞬間、溶岩湖の向こう側から、目の前を埋め尽くすような巨大な火の玉が飛んでくる。俺はそれを翼を羽ばたかせてよける。これ以上時間をかけるのは無理だ。俺がよけた後ろで爆発が起き、地面が揺れ動く。
《お、おい! まだ避難が完了してないぞ!》
地響きに気づいたギルド長から【意思疎通】が来る。
《10kmも逃げるならせめてあと2時間は待て! なんとか逃げさせるから!》
《無理だ。向こうが動き出した。誰も死なないように配慮はする。引き続き逃げ続けてくれ》
俺は【探索糸】を避難する人間たちの足につなげる。そうすることで最後尾の者がどこにいるのか把握し続ける。
「お前か!?」
炎の中からその姿が現れた。あまりにも圧倒的な存在感。どこまでも燃え上がる炎を固めた獣。普通の炎ではなく、赤い鬣が生え、その姿はまるで神話の中の獣のようだった。色合いは赤が多く、黒も混じっている。
そして一層の熱量を吹き出した。あまりの大きさと圧力。全力を出せる予感に心臓が大きなドラムのように脈打つのを感じた。頭には鋭い角が1本生えており、体中から太陽のようなプロミネンスがふき出ている。
これがルビー級でも上位の化け物。その瞳は赤く輝き、俺たちがここに来たことを喜ぶかのように口の端を釣り上げていた。
「鬱陶しい虫けら」
「虫なんてどこにもいないぞ木偶の坊」
俺の挑発的な言葉が、バルガレオルの耳に届く。
「今回の虫はなかなか燃えにくいようだな。いつもなら近づくだけで燃えるのだが、燃えないのはいつも女だ! あいつじゃないのは珍しい!」
火の玉がいくつも無数に浮かび、俺に向かって飛んでくる。それを一つ一つ避けながら、俺は冷静さを保とうとする。心の奥底では怖さもあるが、それを顔に出すわけにはいかない。
「人間どうしてここに来た!」
「お前はしょっちゅう人を殺しまくるんだろ!」
「それがどうした!? 復讐でもしに来たか!」
「いいや、この世界じゃ弱いままでいることの方が悪い。ただ俺的に悪いと思わなくていい相手で強くなれるのは気が楽でいい!」
俺の言葉に、バルガレオルは一瞬驚いたように目を見開く。しかし、その表情はぐっと引き締まり、冷酷さを増していく。
「ほお、近づくだけで燃えてばかりのか弱いお前たちがそんなことを言うとは!」
次の瞬間、バルガレオルが吼えた。その声は、地面を揺らし、耳を破るほどの威圧感を持っていた。巨大すぎる鋭い爪の生えた腕を振り上げ、振り下ろしてくる。それだけで質量爆弾だった。溶岩湖の底まで見えるほど衝撃が走る。
地面が2つに割れ大きく捲れ上がる。
俺は背中の炎の翼を羽ばたかせた。
「使うぞ」
そして"羅刹"に声をかけた。
《当然だ。このような相手、我でなければ力不足だ》
一瞬、"垓"にしようかとも思った。しかしそんな中途半端なことは垓に対しても侮辱にしかならない。俺は羅刹をしっかりと握ると右手に力を集中させた。熱の塊が凝縮されていく。その上で、さらに集まり、まだ凝縮していく。
いきなり今俺が使える最高の装備スキルを唱えようとしたが、何か危険な感覚がして、そのまま羅刹のスキルレベルを下げて振り抜いた。
【 紅炎鳥(くれないえんちょう) 】
光と熱がきらめき、バルガレオルの体に炎の鳥が翼を広げて襲いかかった。その効果範囲はどこまでも長く伸びていき、そしてそのまま岩盤を突き抜けて地上まで炎の鳥が飛び出した。バルガレオルの山のように大きな体。
そのまま地上にまで浮かび上がらせる。
地底深くにいたバルガレオルの巨体を岩盤ごと空に打ち上げてしまう。
これでもまだ手加減した。これがルビー級【炎帝・羅刹】の威力。空は黒くなっていた。それをバルガレオルが明るく照らしていく。バルガレオルが地上にいるだけで辺りの全てが明るくなり、太陽が地上にあるようだった。
一気に家という家が燃え上がりだす。バルガレオルの熱が避難している人たちの後ろにも襲いかかりそうになり、
【水の精霊よ 守護の壁を築き上げよ】
その直前で水の精霊が姿を現し、どこか迦具夜のような姿をした精霊の周りには細やかな水滴が舞っていた。クミカの手が空中にかざされると、バルガレオルの炎の中で、透明な水がしなやかに流れ、生きているように動き回る。
次第に、その水は高く立ち上がり、透明な壁を形成していった。水の壁は、まるでクリスタルのように輝き、人を守る絶対の壁として君臨する。
「羽虫が増えたか!」
バルガレオルの体も例外なく炎の鳥によってえぐられていた。だが、ルビー級というのは、これで死なないからルビー級なのだ。俺の攻撃が全くの無駄であるかのように、バルガレオルは傷口があっさりと閉じていく。
「おい、羽虫」
「六条祐太だ」
「炎の攻撃をこの煉獄の獣に仕掛けるとは何のつもりだ?」
「何か悪かったか?」
「悪いではない! よもやこの煉獄の獣に炎で勝つなどと言うまい!」
怒りを露わにし、声を張り上げた。ギルド長から情報をもらっていたから知ってる。煉獄獣に対する攻撃として、これまで挑んできた者たちが炎を使ったことは一度もない。灰燼ラフォーネもいつも苦手な水属性か氷属性を使った。
何しろバルガレオルは炎を吸収し、栄養としているのだ。どれだけ攻撃しても、炎で攻撃する限り、余計にバルガレオルは強くなる。
「そのつもりだと言ったら?」
「その傲慢なる考え! 万死に値する! 死ね!」
バルガレオルが炎の息を吸い込むと、まるで怒涛のような炎が俺に向かって吐き出された。目の前が全て炎に包まれ、燃え上がっていた街全体が俺ごと熱気で加熱されていく。完全に体がバルガレオルの超高熱の炎に包まれる。
「おいおい木偶の坊、ちょっと暑いじゃないか。夏かと思ったぞ」
炎の中で俺は、余裕を見せた。実際のところ攻撃が効かないわけじゃない。俺の【炎無効】を突破して腕が炭化した。そして体も焼け焦げていく。それでも【超速再生レベルMAX】の効果で炎で包まれ続ける体を、再生し続ける。
鳳凰の種族スキルである【超速再生レベルMAX】の効果はすごい。炎が晴れた時、肉体的には完全に再生を終えていた。ついでににやりと笑ってやる。家の中にいた火事場泥棒が出てきて炎で燃えて苦しんでる。
そばにいるだけで、本来なら骨も残らないほどの、炎よりも熱い空気に包まれ街の全てが灰になると地面が溶けてゆく中だった。
「虫けら……これが平気なのか?」
バルガレオルは驚きを隠せないようだった。
「平気以前に何かしたか?」
俺は鼻で笑ってやった。余裕はない。避けずにまともに受けたからSPがごっそりと削れた。何しろ【超速再生レベルMAX】を全開で使い続ける必要があったのだ。超速再生は体を無限に再生してくれるわけじゃない。
使えば使う分だけSPが削れる。こういうやり方を続ければ、SPが尽きた瞬間に俺の体は炎の中に消える。やはり煉獄獣の方が"強い"。俺はあまりに嬉しくて口角が上がってしまう。
「ハハハ! 今まで見たことのない珍しい虫けら! 強がってこれでも笑うか! 分かっているぞ! 肉を焼いた感触は確かにした! 平気そうに見せているだけだろう!?」
「見せられる程度のぬるい風だから笑ってるだけだ」
「抜かせ!!!」
バルガレオルは飛び上がってきた。山のようにでかいというのに、当然のように飛べる。山が空より落ちてきた。そんな印象で体当たりをぶちかましてくる。俺と衝突する瞬間、頭の角にエネルギーの集中を感じる。
繊細な魔法制御能力が感じられ、ただの馬鹿力ではない。俺の体を角が貫く。衝撃が走り、骨が潰れる。さらに魔法で体が圧縮された。そのまま上空から地下へと俺の体が押し込まれ、溶岩湖に体がぶつかる。溶岩の中へと潜る。
意識がなくなっていく。このダメージは死ぬのだとわかった。しかしギリギリで踏ん張って【超速再生】で命をつなぎとめる。俺が溶岩湖から出た瞬間だった。まだ山が動き続けている。
本当に虫けらを叩き落とすように、獲物を狙う猛禽類のように、迷いなく前足が振り下ろされる。俺はそれを避ける暇もなく、再び溶岩湖の中へと叩き落とされた。
「少しは楽しめたぞ」
【煉獄の太陽】
魔法を唱えてきた。バルガレオルの体全体が炎に包まれ煮えたぎる。
「くそっ!」
俺は深く沈んでいく。押されてる。バルガレオルが溶岩湖に突っ込んできた。溶岩湖が激しく波打つ。自分を追いかけてくるのを感じながら、俺は魔法の力を集中させた。その瞬間、バルガレオルの瞳が怪しく赤く輝く。
さらに何か大きく攻撃を仕掛けてくる。
煉獄獣によって魔力と炎が融合し、周囲の空間が歪むほどのエネルギーが凝縮されていく。俺はその圧力を感じながら、思わず身震いした。どれほど俺が強力な【炎無効】を所持していても、これをまともに食らったら死ぬ。
「耐えられそうにない」
俺は自分に言った。【復活】は出来る。だがやはり自力はレベルの高い向こうの方が上だ。種族スキルはかなり優秀だと思うのだがルビー級の上位に来るような存在はどれも特別だ。どれほど種族が優れていても、単純に戦えば負ける。
バルガレオルは高笑いをする。
一瞬の静寂が訪れた。その後、バルガレオルが魔法の名を叫ぶ。
【 煉獄滅炎火(れんごくめつえんか) !】
その瞬間、モンスターがはっきりと魔法を唱えた。溶岩の中でその炎の塊に触れた全てが蒸発していく様子は、まさに恐怖そのものだった。俺は再び羅刹を握りしめた。こちらも本気だ。
俺は周囲の熱を消し去るために、魔法の言霊を頭の中に浮かべながら叫んだ。
【全ての熱を消し去れ 我こそ炎帝 炎の王者 全ての熱は ただ我が前にひれ伏すべし】
その言葉が俺の力を引き出し、羅刹を振り抜いた。
【 絶火(ぜっか) 】
瞬間、世界から熱が奪われた。溶岩湖は一瞬で凍りつく。バルガレオルの技も例外ではなかった。全てが反転する。周囲の熱が吸収され、静かな静寂の中で、バルガレオルは驚愕の表情を浮かべていた。
「ほお……」
煉獄の獣が面白そうに笑う。その体が二つにずれていくのを見て、俺は一瞬戸惑った。ゆっくりとずれて行くその姿は、まるで俺の攻撃に耐えられないかのようだった。そして斬りつけたその体が、砕け散る。
砕け散るというより粒子のようになって消滅していく。斬りつけた範囲全てがその熱のつながりを保つことができずに分解して目の前に広がる光景すべてが消滅していくのだ。あまりの威力に呆れる。
炎帝・アグニを使用した時も思った。やはりルビー級の専用武器による攻撃は人智を超えている。迂闊に使うことがないようにと俺は鞘に納めた。
《見事だ我が主君、主君の思うように相手は動いた。敵から型に嵌まった攻撃をさせるのは簡単なようで難しい。またうまく使え》
羅刹の声が頭の中に響く。俺は深いため息をつき、戦いの後に訪れる静寂を感じながら空へと舞い上がった。
「この土地は俺のものになったんだよな?」
下を見つめると溶岩湖から数キロに渡って地下から地面まで、熱を奪い去られて全てが消失していた。改めてやはり羅刹の威力の高さを思い知らされる。ルビー級の専用装備を使いこなすとここまでの被害が出るとよく分かった。
俺が物思いに耽っていると、拍手の音が響いた。
「見事だ、六条」
上を見上げると、雷神様が手を叩いているのが見えた。
「炎で挑まれたらどうあっても、炎で返したくなる。煉獄の獣だからこそ、躱したくもない。お前が煉獄の獣の攻撃をよけなかったからこそ余計だ。結果として、正面から受けてはいけない一撃を受けてしまった」
雷神様が興味深そうに言った。
「で、今のは何だ?」
「全ての熱を奪い去り、その熱を斬るだけの能力に使い切る。簡単に言うと、そんな技です。熱を奪うだけではなく、物体同士の繋がっている力すらも奪い去るみたいです」
聞かれて俺は説明した。分子同士の結合まで完全に解体する。その結果として地面には巨大な大穴ができていた。
「シンプルだ。そして美しかった」
雷神様は頷き、目を輝かせた。
「さて、勝者の権利を履行するべきだね」
そして米崎がそう口にしたのだった。