軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百四十一話 ゴールドガチャ

ガチャのレバーを回すと、ガチャコン、ガチャコンという心地よい音が響き渡り、目の前のガチャが色とりどりの光を放ち始めた。その光に合わせて、俺の心拍数も高まっていく。この瞬間が運命を決めるかのような緊張感に包まれていた。

「お願いだ。良いものが出てくれ……」

心の中で願いを込め、レバーを回しきる。かつて迦具夜から教えてもらった。ガチャ運が良くなると白カプセルが出てこなくなるという。期待と不安が入り混じる中、出てきたのは、最初の石のカプセルだった。

「は、外れたじゃないか」

正直言ってがっかりだった。

「1つ目が外れたぐらいで何を悩んでいる。さっさと次を回せ。ガチャなど、ほとんど当たりが出なくて当たり前だ」

俺の体内にあるその場所は、まるで夢の中のようなレダの部屋だった。ふと、声がかけられる。レダは俺を招き入れるために、ここに特別な部屋を作ったのだ。今では、俺の思考の一部が常にこの部屋に留まっている。

緊急時ではない状況では、俺は分割思考を使ってレダにリソースを割くことができる。だから、レダの部屋から見える景色は、俺の頭の中に絶えず流れ込んでくる。そこには、息を呑むほどの美しさを持つ女の俺が動いている。

レダは、俺の瞳を通して見る景色と、第三者の視点から見る俺。様々な姿の俺を、優雅に椅子に座りながら観察している。VIP席から舞台を見守る観客のようだ。俺の中から、俺自身を見つめる視線。奇妙な感覚だ。

美しい女性の指が再びガチャのレバーを握った。自分の行動なのに、あまりに綺麗な女性がすると何か特別な意味があると感じられる。自分の運命が、彼女の手の中で揺れ動いているような気がした。

「でも回してるのは自分なんだよな」

再びレバーを回した。次も石カプセルが出てくる。つまり、ストーン級ということだ。俺がストーン級だった頃は、これが最も大きな当たりだったはずなのに、今となってはおそらくこれが俺にとっての一番のはずれだ。

「なかなか当たらないな」

「贅沢なやつだ。いくらゴールドガチャでも、白カプセルが出ないだけでもガチャ運6はいるのだぞ」

レダの声が俺の心の中で響く。最もな言葉に俺はさらにガチャを回すことにした。次のカプセルもまた石カプセルだった。

「最初の頃は、あんなに嬉しかったのにな……」

俺はため息をつく。ストーン級が出ても、今の俺にはそれがあまりにも価値のないものに思えてしまう。次に出てきたのはシルバーカプセルだった。

「なんか良くなってきた」

そこからさらに回していく。

「お前、ほとんど銀が出てないか?」

隣にいるレダが、少し困惑したように俺を見つめる。

「確かに」

その次はストーンカプセルだったが、すぐにブロンズカプセルが出てきて、その後またシルバーカプセルが出る。ストーン、シルバー、ストーン、ブロンズ、シルバー、ストーン、ブロンズ……その繰り返しに、俺は徐々に興奮を覚え始めた。

「お、おお、なかなか当たりが出ない!」

俺は興奮を隠せず、ガチャの前で声をあげた。期待が高まり、心の中で何かが弾けそうだ。

「何を喜んでるんだ?」

レダの問いに、少し照れくさくなった。

「いや、いつもすぐに大当たりだからさ。さすがゴールドガチャ。俺のガチャ運でも大当たりを出せないなんて! これこそガチャの醍醐味だな!」

だけど、未だに金色に光るものが出てこない。ゴールドガチャからは必ずゴールドカプセルが出るはずなのに、いまだその姿を現さない。ガチャ運9を持つ俺でも、かなり手こずっている。それを1周回って楽しいと思ってしまった。

「当たりすぎてなかなか当たらないことが嬉しくなるとは、お前は変態か?」

「変態じゃないから!」

それにしても、こんなに金色の光が見えないとは。俺のガチャ運がこんなに悪いとは思わなかった。これでは、俺よりも低いガチャ運を持っている者たちには、専用装備を揃えるのはかなり困難を極めるのではないかと心配になった。

「頼む。ガチャ神様、次こそ!」

気合を入れて再びレバーを回す。すると、コンコンと金色のカプセルが出てきた。輝きがまぶしい。気のせいかもしれないが、その輝きはストーンガチャのものよりもはるかに質が良く、美しく感じられた。

ゴールドカプセルを出すのにこんなに苦労するとは。俺は今この瞬間美鈴の気持ちが痛いほどよくわかった。

「お前の今の心は美鈴というものに謝るべきだな。きっとただの嫌味にしか聞こえんぞ」

何気に怒っているように見える。ひょっとしてレダってガチャ運悪い? もしくはガチャ運1の人? だからさっきガチャ運を俺に教えなかったの!?

「余計なことだけすぐに思いつくやつだ。不快だぞ。さっさと回せ」

「怒るなよ」

「お前のようなやつには一生ガチャ運のことを語って欲しくないな」

「そういうこと言わないで。ほら肩揉むから」

俺はレダの部屋で、レダの肩を揉んでやる。ゴールドカプセルが出たその瞬間、開けるのが待ち遠しくなった。だが、回さなければいけない枚数が多い。299枚分、俺はガチャを続けていく。

出てくるものに一喜一憂しながらも、次に何が出るかという期待感が俺の心を躍らせていた。

「まだまだ、行くぞ!」

ガチャを回し続けると、時にはゴールドカプセルが出にくい時もあれば、比較的すぐに出てくれることもあった。心の中の緊張感は高まり、俺はその瞬間を楽しむことができた。最後の299回目のガチャを回した。

ガチャコン、ガチャコンと回り、最後に排出されたのは……またストーンカプセルだった。

「俺のガチャ運って、頭おかしいのかってぐらい、あたりばっかり出るんだけど、ゴールドガチャまで来ると本当に違うんだな」

「何の嫌味だ阿呆。私が見てきた今までのゴールドガチャよりも破格に良い結果だ。これだけ出せれば専用装備は相当数出てきたはず。まだルビーコインが残っていることを考えると、おそらくゴールドの専用装備は揃ってしまったな。これだから女神に好かれたものというのは羨ましい」

「開けてみる」

このままルビーガチャを回すことも考えたが、この部屋が個室になっているのなら、一旦ゴールドカプセルの中身まで確認するのが一番いいだろう。俺はカプセルを開ける決意を固めた。

そして今回大当たりしたカプセル。金カプセルの個数を確かめる。

「1、2、3…7、8……16…19…21個か。299枚分回して21だから、ゴールドカプセルが出る確率は14分の1ぐらいだな」

「ゴールドカプセルが21個……破格だ。この時点で、通常のガチャ運のものが回した場合、ゴールドカプセルが出る確率は60分の1ほどと言われている。そのため、ゴールドの専用装備を揃えるには、ルービー級になってからでも100年はかかる」

「そんなにか」

今回大当たりしたゴールドカプセルを一つ手に取る。緊張しながら、蓋を開けると、そこから現れたのは、星の輝きのように光る粘土のような物質だった。その粘土の量もかなりあり、見た目にも美しい。

「レダ、これ何?」

「ふむ、なかなか良いものが出たではないか。【金星粘土】だ」

「【金星粘土】……それって何に使うんだ?」

「からくり族を造る時などの素材に使うと、非常に良いものができるのだ。お前の場合、ルビー級魔法で【自動人形】が生えているだろう?」

「ああ、うん。それに使えばいいってことか?」

「そうだ。あれはからくり族を造る魔法の一種だ。どんなものを造るにしても、素材が優れているほど、出来上がるものの品質も高くなる。【金星粘土】はその中でも、からくり族の人工筋肉を形成して力のステータスとなって発揮される」

「からくり族にとって粘土が力なんだ」

「そうだ。ちなみに金星シリーズは全て揃えようと思うと10種類ある」

「揃えば揃うほどからくり族の質が高くなる?」

「当然そうなる」

専用装備に続いてゴールドガチャから新たなコレクション性が出てくるとは、沼ガチャだ。是非とも揃えたいがさすがにそれ無理か。ともかく俺はクミカも待ってるから次のカプセルを開けた。

すると、今度は一本の赤い糸が現れた。目にした瞬間、何か理解できなかった。

「ほほお、これ以上女を作ってどうするのだ?」

「どういう意味?」

美しすぎる女性が小首を傾げる。めっちゃ様になっていて見とれるな。レダのことではない。レダの部屋から見ている俺のことだ。俺は俺自身に惚れそうだ。男の俺の顔を鏡で見ても惚れそうなのに、女の顔などやばすぎる。

赤い糸を持ち上げる。しかしその瞬間、奇妙なピンク色の気配を感じる。下半身がピクリとするような感覚。何となくこのアイテムが理解できた。

なんとも言えないセンシティブな雰囲気が赤い糸から漂ってきた。このアイテムに関しては、俺は覚えがある。今まで数々回してきた俺のガチャ人生の中で、いつも必ず1つ入っているセンシティブなアイテム。

間違いない。俺の勘が告げている。こいつ。性的なアイテムだ。以前は【性別改変薬】だった。その前は【媚薬】だった。

「そのアイテムの名前は【赤い糸】。アイテムの見たままの名称だ」

「確かに赤い糸だけど……」

俺の女の胸がこれの効果が気になってちょっとドキドキしてる。

「まさにそれだ。自分にとって非常に有用な異性との縁をつなぐ【赤い糸】と呼ばれるものだ。お前は女性がいいだろうから、今の状態で使うと男に縁が繋がるぞ。しかし、男の状態で使用すれば、お前にとって最も心も体も満たしてくれる女との縁がつながる。糸の先はお前の小指から異界の中へと消え、お前にとって大切な誰かと繋がる。繋がった相手はお前に恋心を抱き一両日中に会いに来る」

その言葉を聞いた瞬間、伊万里のことが頭をよぎる。

「それって知り合いでも誰でもか?」

「現在お前がまだ出会っていない誰かだ。それに、あくまで恋心であり、恋が実るかどうかはお前次第だ。つまりその赤い糸は人を操るというよりは、お前への好意を芽生えさせて、お前との縁がつながる。まあ、とはいえお前は魅力が90だ。繋がればほぼ間違いなくその異性はお前を好きになるだろう」

「どんな相手でもいいのか?」

「効果が本人次第という弱さがある反面、繋がる可能性のある異性に上限はないと言われているな。だが、お前に対する好意を抱く可能性がある場合に限る。極端な話これから先、お前に恋心を抱く可能性がある女がゼロなら誰とも繋がらない」

「変わったアイテムだな」

俺は一瞬、伊万里の顔を思い浮かべた。しかし、伊万里は南雲さんの話を聞く限り、俺のことを忘れているわけではないようだった。だとすると、このアイテムを使っても伊万里には繋がらない。

じゃあ誰に繋がるんだ? 相手が俺を好きになる可能性があればそれでいい。しかし俺ってレダの言う通り、これ以上異性から好かれるのは正直言って怖いんだけど。

使わなきゃいいんだけど……でもそんな贅沢言ってられない。恋心を抱いてくれる有用な女性が、俺の味方になってくれるアイテムだろ。とても助かることになる。だが、とりあえず俺はいつもの通りだ。

この系統のアイテムは倫理的な意味で使いにくすぎて、そっとアイテムボックスの中にしまっておいた。ともかく次のカプセルを開けることにした。今まで全部変わったものだったが、今度は、見慣れたものが現れた。

出てきたのは、ステータスアップの果実だった。まるで、俺の成長を祝福するかのように輝いている果実。果実シリーズが光ってるのは初めてだ。

「光ってる果実って食欲そそられないな。ゴールドガチャでもまだあるんだ」

「まあ、効果は言うまでもないが、ゴールドカプセルから出てきたのなら、一つで+200だ」

「お、おう。さすがゴールド様。すごいな。即食べよう」

現状のステータスが高ければ高いほど、次のレベルアップでの伸び率は大きくなる。これは俺にとって非常に重要なことだった。だからそのまま遠慮せずに果実にかじりついた。光ってるけどおいしい梨だった。

食べ終わってさらに次のカプセルを開けると、赤い色が基調となり、金色の装飾が施された見事な一振りの刀が現れた。見た瞬間、心が躍るのを感じた。間違いない。俺がずっと欲しくてたまらなかった武器だ。

手に取った瞬間、その感触は驚くほど馴染み、まるで自分の一部のように感じられた。冷たい金属の感触が手に伝わった。そのとき、少し驚くことが起きた。刀が低く、古びた声で語り始めたのだ。

《残念。もうそこまで行かれているのか……》

その刀から聞こえてきた声は、どこか寂しげだった。男の声だ。理由はすぐに理解できた。これはゴールド級の専用武器であり、俺は現在ゴールド級を超えてルビー級になってしまっているのだ。

《ゴールド級の間に手に入れられなくて悪かった。でも落ち込まないでくれ。蔑ろにすることは決してない》

《ありがたき言葉、嬉しく思う。しかし、そなたが最も強くなるべき武器を持ち戦ってくれることこそが、私の望みだ》

その声には力強さが宿っていて、俺は自然と心を奪われた。名前は、

《僕の名は赤竜・ 垓(がい) 。垓と呼んでくれれば良い》

《ああ、分かった。俺は六条祐太だ。これからよろしく頼む》

華もあまりちゃんと使ってあげることはできなかった。焔将、華、垓とストーリーも開放させられるかどうかわからない。せめてそれだけでも見てあげられたら、そんなことを思いながら、次に開いたものの中に果実があり2つ続いた。

俺は光る果実を食べながら、次のカプセルを開ける。今度は金色の装飾が施された赤い籠手が出てきた。再び専用装備が出てきてくれたのだ。身に着けると、華よりも圧倒的に力を感じる。力が溢れ出してくる。

体全体にエネルギーが満ちていくのを感じ、心が躍った。次のカプセルを開けると、今度は木箱が出てきた。興味をそそられ、すぐに開けると、そこには金色の小さな玉が入っていた。

「レダ。これ何?」

レダの部屋でレダの肩を揉んだまま尋ねる。

「ゴールドガチャに入っている蘇生薬だな」

「蘇生薬……ついにガチャから蘇生薬が出てくるようになったか」

「そこまで質の良いものではない。有効期限は死んでから1日。生き返らせるとレベルが3下がって生き返るという仕様だ」

自前の種族スキルの方が質はいいし、クミカの種族スキルの方が蘇生としても良い。使用方法から言っても、俺ではあまり役に立たないかもしれない。俺たちと別行動するパーティーメンバーの誰かにあげるか。

そんなことを考えながら、マジックボックスの中に入れ、次を開ける。神社でよく売っているお守りが現れた。【赤竜垓 守護】と金色の文字で記されている。これにも非常に見覚えがあった。専用装備の物理のお守りだ。

手に取った瞬間、その存在感が俺に安心感を与えてくれた。これをしていると、アリストと同じような役目を物理攻撃に対して行ってくれる。そうすると、大抵の攻撃は俺の体に到達せずにバリアのように防がれる。

これに自前のバリアの魔法も合わせれば、大抵のことでは傷つかない体ができる。

次に開けたものは、また【金星の粘土】と似ているものが出てきた。今度は大きな瓶に星のように輝く紫色の玉が入っていた。見るだけで、その美しさに心を奪われた。

レダによれば、これもからくり族の製作に使える材料の一つで、【金星の魔玉】と呼ばれるものらしい。【金星の魔玉】があれば、からくり族を造った時にこちらが供給しなくても、自前でMPを作り出せるようになるらしい。

「すごいな」

シルバーガチャもかなり良いものが出てくると思ったが、やはりゴールドになるとさらにすごいと感じさせられる。

「当然だ。ゴールドガチャからゴールドカプセルはなかなか出てこないだけに、出てくると破格の強さを見せるのだ。まあ私にとっては忘れるほど昔のことだが、当時はお前どころの喜びではなかったと少しは覚えているぞ」

レダのゴールドガチャを回している頃といえば、何千年前のことになるのか。よく考えたらガチャってそんな昔からあるのか。それがどうにも奇妙に思える。南雲さんの話を聞いたから余計だ。

南雲さんは100万年前の地球に戻るようなことを言ってた。だとするとダンジョンはずっと地球に張り付いていたのだろうか。分からないことが多くて、一瞬そちらに思考を奪われそうになる。

それでもゴールドガチャのカプセルを開く俺が、米崎に聞きながら、からくり族を造ってみたいと考えた。そして順調にカプセルを開けると、金糸で竜の刺繍が入った赤い肌着が現れた。

専用装備の肌着に違いない。これで専用装備が3つ揃うことになり、その時点で華の性能をかなり超えた。俺は新たに手に入れた装備を肌に感じながら、どれほどの力を発揮できるのか、期待に胸を膨らませた。