作品タイトル不明
第三百三十三話 遺産
「——寝る子は育つか」
夜の12時だった。ずっと起きてて、ずっとはしゃいで、そして二人とも急に電池が切れたみたいに眠ってしまった。探索者でないなら、夜になれば睡眠が必要になる。レベル10を超えてくると少々徹夜したところで全く平気になってくる。
だが、今は普通の子供と変わらない。俺が祐希丸をベッドに運んで寝かしつけると、弁財天がその横に玉姫を仲良く並べて寝かしつけた。俺たちは一息ついた。窓の外はすっかり暗くなり、月明かりが降り注ぎ、静寂の中に穏やかな時間が流れていた。
弁財天はベッドに座る俺の横に腰を下ろした。
「この子たち祐太君に遊んでもらえるのが今日しかないって、分かっていたのでしょうね。1分1秒でも一緒にいたそうだった」
「親父よりはマシの父親になりたいと思ってたんだけど、結局俺もほとんど育児放棄だな」
それだけは本当に申し訳ないと思った。自分の思いを口にするたび、心の奥に沈んだ罪の意識がくすぶっているのを感じる。
「私があなたに何も聞かずに産んだ子供だもの。何の責任もないわ。ちゃんとこの子達は私が責任を持って育てるから、心配しないで」
「そんなわけにはいかない。産まれてきて俺が父親なら、父親らしいことしてあげたい。まあ16歳じゃ頼りなさすぎると思うけど、授業参観の日はちゃんと教えてよ。本当に必ず行くから」
「分かった。その時は使いを出すわ」
寝顔が二人ともとても可愛くて、いつまでも見ていたかったが、立ち上がり「おやすみ」と言葉を残して部屋から出た。ドアが静かに閉まると、ほのかな温もりが部屋から漏れ出す。俺はその温かさを背中に感じながら、廊下を歩いていくと、弁財天がついてきた。
「祐太君。迦具夜のことなのだけど」
子供のことから話題が変わり、弁財天の表情もキリッとしたものになる。弁財天にとって迦具夜のことだけは、子供以上に考え続けてきたことかもしれない。
「私からちゃんと桃源郷神の争奪戦がどうなったのか説明しなきゃいけないわね」
気が重そうに弁財天が口を開こうとした。しかし、
「いや、弁財天。桃源郷神の争奪戦のことはともかく、迦具夜のことは弁財天よりも”俺の方が分かってる”と思う」
「どういう意味?」
「ああ、本当は黙っておかなきゃならないらしいんだけど、弁財天だけには話しておくよ」
赤い絨毯の長い廊下を歩いていく。俺が見てきた中でもトップクラスに広い建物。こんなに広い城なのに俺と弁財天と2人の子供しかいない。この静寂の中で、俺たちの声だけが暗がりに響き渡る。
「祐太君。慌てないで聞いてね。そう言うならもう言ってしまうけど迦具夜は肉体をどこにも残さず消えてしまった。実のところ迦具夜の生死がわからない状態なの。祐太君の言いたいことってそれと何か関係のある話?」
「ああ、あるよ」
「祐太君が知ってるわけないことよ?」
「確かにさっきまで知らなかった。でも千年郷で迦具夜に会ったんだ」
「か、迦具夜は生きてるの!?」
思わず弁財天の声が大きくなった。その反応に、俺は少し驚きつつも、彼女の期待に応えることができなかった。
「いいや、死んでる。ただ 翠聖(すいせい) 様が迦具夜のために戦いに関係のない範囲で、迦具夜の望みを叶えたんだ。迦具夜のやつ、10年前に別れた約束通り、帰ってくるまでちゃんと俺を待つことが望みだったらしい」
「ちょっと待って。迦具夜は死んでるのよね? どうやって待つの?」
「クミカ」
「はい」
俺の影の中からぬるっとクミカが出てきた。群青色のゴスロリ服を着たクミカは、スカートの裾をつまみ上げて弁財天に会釈した。
「この子……ああ、迦具夜に取り込まれてた」
弁財天とは面識がないはずだが、迦具夜から聞いたのだろうか。クミカを知ってるようだ。その目が曇る。神にまで登り詰めた弁財天の頭の回転は相当に早い。クミカがここにいることが、迦具夜にとってどういうことか。
「そう。迦具夜の死体はなかったからもしかしたら生きてるのかもと思ってたんだけどね。この子が表に出たのなら、迦具夜は本当に死んだのね」
「ああ、迦具夜が完全に死んだことでクミカが表側に出てきた。今から事情をまとめて送っておく」
俺は情報を圧縮して【意思疎通】で弁財天に送る。彼女の目が一瞬驚きに見開かれ、その後、柔らかな表情に変わる。
「——そう。迦具夜は決めたのね。自分が死んでもそれでもまだ……祐太君と生きていくと」
ほとんどタイムラグもなく会話が続く。弁財天の声には、少しの温もりが混ざっている。その温もりを感じながら、俺は話を続ける。
「それなら祐太君。私からもあなたに渡しておかなきゃいけないものがあるの。いえ、迦具夜とクミカさんの件がなくても、祐太君には渡さなきゃいけないものがあるのよ」
「何?」
「あなたが当然受け取るべきものよ。ずっと渡したかったの。迦具夜が望み、私はそれを棚ぼたで手に入れた。神になった報酬」
「くれるの?」
「ええ、だってあの子、こうなることをほとんど予見してたみたい。私たちに何も言わずに全部ちゃんと整えてたの。私が信長に勝てる前提で動くなんて、本当、強気よね」
「迦具夜、何もかもお見通しだったのかな」
「どうかしら……少なくとも私の目から見て、祐太君が帰ってくるまで生き残る気なんだって思ってたけど。いえ、だからこそこうしたのかしらね。祐太君、もちろんあなたが受け取るべき当然の報酬、受け取ってくれるわね?」
「ああ、正直喉から手が出るほど欲しい」
そんな遠慮などしない。子供がいるなんて知らなかったから、一番の目的はそっちだった。迦具夜が神になれた暁には、とある報酬を約束されていた。神は弁財天に変わったが、だからといって報酬が反故にされるとは思えなかった。
「現金な話だと思われるかもしれないけど、今の俺にはどうしても必要な報酬なんだ」
「現金だなんて思わないわ。むしろそう言ってくれないと迦具夜が報われないし、欲しがってくれる方が嬉しいわ。——それで、報酬は2つあるの。1つは探索者なら絶対必要なガチャコインね」
「ああ、それもくれるの?」
俺がメインで欲しかったのはもう1つの方だ。もう1つの方を迦具夜が約束してたからだ。ただ、もう一つの報酬を受け取った場合、ガチャコインを持っていないことが悩みの種だった。
「もちろん」
「あいつそのこともちゃんと考えてくれてたんだ」
「そうみたいよ。ガチャコインがなければ今回の報酬の魅力は半減しちゃうもの。でも申し訳ないのだけど、ガチャコインは迦具夜が遺産として残した中の半分になるわ。その分は幾分か私が補填するから許してちょうだい」
「いいの?」
「もちろん。ただ、私、探索者として怠けてた期間が長くてあまり持ってないの。 隠神刑部(いぬがみぎょうぶ) 様の遺産も引き継いだのだけど、翠聖様が処分した遺産を引くとほとんどお笑い道具ばっかりなのよ。そこだけはごめんなさい。それと半分になる理由も話しておくわ」
「うん」
「月城家は祐太君も会ったことがあると思うのだけど、迦具夜の家臣で一番伸び代が大きかった 八代(やしろ) が受け継いだの。だから月城家を継いだ八代にほとんど全ての迦具夜の遺産は本来渡さなきゃいけないの。でも、迦具夜の残した遺言で『ガチャコインは半分にしなさい』ってことになってるの」
「それは良かったのか?」
「もちろんよ。八代もそのことについては問題なく譲ってくれたわ」
弁財天は先ほどから先導して、別の部屋へと移動していた。クミカはもう影の中に戻った。やはりその方が落ち着くようだ。俺は2人の自分の子供、未だに自覚がわかない父親としてもう一度振り返り、「またな」と声をかけてついて行った。
応接室だという部屋に入る。天井につながられたシャンデリアから魔法の炎が揺らめき、部屋全体を光で包み込む。テーブルには1輪だけ綺麗なバラが飾られていた。その鮮やかな赤色は、奇妙なほど印象的だ。
壁は深いエメラルドグリーンやクリムゾンレッドの絹地で覆われており、絵画が飾られていた。窓からは、庭園の美しい景色が広がり、外の光を柔らかく取り入れていた。俺と弁財天が豪華なベルベット生地の椅子に隣りあって座る。
弁財天は俺が洋室の方が好きだと聞いたから、こんなイギリス全盛期の時代にすら存在しなかったような城を建ててしまったのだとか。俺が望んでいる洋室というのはこういうのではないのだが、まあこれはこれでいいと思った。
弁財天の行動が可愛くて愛おしくなる。この部屋に来るまでに何度もこの建物のことを喜ぶと、弁財天はすっかり上機嫌になっていた。それでも、これから話すことは真剣な内容なのだろう。表情を戻すように緩んだ頬を揉んでいた。
「じゃあ迦具夜が残したもの。準備していたこと。それを話していくわね」
「頼む」
「まあその前に聞いておきたいのだけど、クミカさん。あなたは迦具夜が姿を消したあの時点で、迦具夜が所持していたアイテムを全て持っているわね?」
「はい。所持してます」
呼ばれたのでクミカは俺の影を魔法で伸ばした。その結果光が当たっている場所なのに影ができるという不思議な現象がテーブルの上に起きて、そこからクミカの首だけが出てきた。生首状態なのに、どこか愛嬌を感じさせる。
「クミカ……」
「だめでしょうか?」
俺が呆れる。さすがにちゃんと出てこいと言おうとしたら、
「いいわよ。そのままで聞いて。あなたがとても不思議な状態だから聞くのだけど、迦具夜の専用装備【国水】はもうないわね?」
「はい。迦具夜の専用装備は、迦具夜と共に全てなくなりました。ただ、迦具夜の専用アイテムは残ったままです」
専用装備には魂が宿る。それは使用者とリンクされ、使用者の死とともになくなる。実際、メトが死んだらしくアグニは俺のマジックバッグから消えていた。しかし、【三種の神器】に見られるように専用アイテムは別枠となるらしい。
「迦具夜は専用アイテムをブロンズ、シルバー、ゴールド、ルビーの4種類持ってたはずだけど、間違いなくそれはそのままあなたが全部持ってるわね?」
「はい。間違いありません。迦具夜から引き継いだマジックボックスに入ったままです」
「じゃあ、そのまま持っていなさい」
「いいのですか?」
クミカは生首状態で目を瞬いた。月城家を継いだ八代に全部とは言わないまでも、重要なものは分けなくていいのかと俺も思った。
「それは当然よ。三種の神器のように、使用者が変わっても使えるアイテムは非常に少ないの。実際に、迦具夜の専用アイテムである【水龍の導き】は、彼女でなければ使えないわ。でも、迦具夜の魂が残っているクミカさんなら、それを使うことができるのよね?」
「はい、使えます」
「でも八代では使えないから受け取っても意味がないの。迦具夜の専用アイテムは、他にもすべて彼女でないと使えないものばかりだったはずよ」
「しかし、遺産という意味では迦具夜のマジックボックスが一番価値の高いもののように思えますが……」
「もちろん迦具夜は死ぬ直前まで探索者として第一線で活躍し続けていたし、その中身は、専用アイテム以外にもあるでしょう。それは八代にも分配してあげたいところよ。でも、ここにいる3人以外は誰も迦具夜がどうなったのか知らないのだし、下手にマジックボックスの中身まで遺産分配できないわ。すれば余計な詮索を招くもの」
「それは確かにそうだな」
翠聖様がしたことは桃源郷神の争奪戦に直接関わることではない。とはいえ自分の娘だからといって、一時的に命を助けた。そこを誤解されると弁財天が神になったこと自体が不正によるものかと疑われかねない。
「言うまでもないことだけど、迦具夜は本当に強かった。そして、彼女のマジックボックスの中には非常に強力なアイテムが入っているの。それをクミカさんが持っていることで、私としては夫が生きて帰ってくる可能性を少しでも高めたいと思っているのが本音よ。桃源郷神の決定が下された今、私たちは落ち着いているから心配する必要はないわ。むしろ、祐太君のためにその力をうまく活用してほしいの」
弁財天はクミカの顔をまっすぐ見つめていた。彼女の眼差しには、迦具夜への思いと期待が混ざっているように感じた。生きているようでいて、やはり迦具夜は死んでいる。悲しんでいいのか喜んでいいのか、複雑な心境だ。
「そういうことなら私がこれを使わせてもらいます。私が混じり合った2人の心は、祐太様の助けになることを望んでいます。きっと私もそうでなければ、2人は私に反逆するでしょう」
「きっとそうでしょうね。ふふ、迦具夜は一番自分の望みに忠実に動いたのかもしれないわね。だって私の立場になっていれば祐太君のそばにはいたくても、ほとんどいられなかったもの」
迦具夜が何を考えていたのか俺にもわからない。それぐらい、迦具夜の意思はクミカの奥底に沈んでいる。それでも迦具夜の執着心の強さを考えると、ありえない話じゃないと思えた。
「じゃあ確認も終わったところで、お楽しみのガチャコインね」
このガチャコインだけは、どの探索者にとっても一番楽しみだろう。レベル1000を超えたサファイア級でも、真性の神となってゆくダイヤモンド級であったとしても、ガチャコインだけは探索者である限り外せないんだ。
迦具夜は500年の長い人生の中で、どれだけのガチャコインを貯め込んできたのだろう。正直なところ、かなり期待してしまったし、期待が裏切られることはないだろう。
「通常、ガチャコインの譲渡はパーティーメンバーにしかできないのだけど、あなた達ならその心配もないわね。——ではまずゴールド級ガチャコインから。これは祐太君とクミカに249枚ずつね」
机の上にゴールドでできたガチャコインが、クミカと合わせて498枚。カジノで使われるコインのように積み上がった。1枚持ち上げて確かめてみる。ティラノサウルスのような、それでいて目つきの怖いモンスターが刻まれている。
「刻まれているモンスターの名前は暴君竜よ。ゴールドコインはコインをもらう国のエリアによって刻まれているモンスターは違うの。このコインは大八洲国のもので、暴君竜はティラノサウルスの100倍は強い恐竜だって思えばいいわ。ゴールドエリアでの代表的なモンスターね。まあ、祐太君、クエストでモンスターに当たることがあまりないから、ブロンズもシルバーもゴールドもほとんどモンスター知らないでしょ?」
「確かにほとんど戦ってないな。【翠聖兎神の大森林】にいるモンスターとまた違うのか?」
あそこにいるモンスターとは少しぐらい戦ったことがあった。
「あの森は翠聖様の気に当てられて極限まで強化されたモンスターよ。正直、大森林にいるモンスターの方が強いわね」
「白虎様みたいなのは?」
「いるわけないわ。あれは翠聖様の"召喚獣"よ」
「お、おう……」
考えられる限りのさらにはるか上の存在と、ブロンズエリアに来てしょっぱなでエンカウントしていたのか。そんなの弁財天ですら、頭を下げなきゃいけないような存在じゃないのか。あの時、様付けして土下座した俺は超正しかった。
というか、近藤局長がそんなのと戦いたいって言ってたのか。命知らずにもほどがあるぞ。
「大森林には翠聖様の召喚獣、朱雀、白虎、玄武、青龍がいるわ。その強さは正直私でもよくわからないわ。伝説では白虎様はその昔、海の魔物と戦い、腕の一振りで海底まで切り裂いたとか言われてるわね」
地球がすっぽり沈むと言われるほどの深さを誇るブロンズエリアの海。その海底まで切り裂くってことは、白虎様の腕の一振りで地球が真っ二つになるということ……。
「ゴールドエリアよりブロンズエリアの方が強い存在がゴロゴロいるのって何で?」
「ブロンズエリアはね。その下にあるシルバーエリアとゴールドエリアが合わさった世界の卵。その卵のエネルギーが大きくなって浮かび上がって島国となって現れると言われてるわ。つまり下に卵があって、それがどんどん孵化してきてブロンズエリアに到達するってイメージね。階層的にはちゃんと下にシルバーエリアとゴールドエリアがあるのよ」
「なるほど」
「だから基本的には存在するモンスターも探索者もブロンズエリアの方が質が高いのよ。そしてそのブロンズエリアはストーンエリアから上がってきた探索者の導き役みたいな役割だってことは説明しなくてももう知ってるわね」
「ああ、それは知ってる」
「そして、ふふ、これがルビー級コイン85枚ずつね」
ゴールドコインがこれほどあったことにも驚いたが、何よりも驚いたのがルビー級コインだ。そのコインは見事なほど赤いルビーでできていて、燃え上がる不死鳥のようなものが刻まれていた。
「……迦具夜はルビー級コインを自分で使ってしまわなかったのか?」
「ええ、ゴールド級のコインにしろルビー級のコインにしろ。自分の専用装備が揃った後は、家臣への報酬にも使えるから、使わずに貯めておいたりよくするのよ。まあ、そんなことができるのは、本当に一部の最高位貴族だけだけどね。ゴールドコインを986枚、ルビーコインを340枚なんてよく溜め込めたものよ」
「本当だな」
コインを上に掲げる。シャンデリアの魔法の炎に照らされ、その輝きはまるで生きているかのように感じられた。一枚だけでも美術品としての価値がありそうなぐらい見事なルビーのコインだった。刻まれている不死鳥が今にも飛び出してきそうで、なぜか不思議な興味がわく。
「綺麗なコインだ」
「たとえ貴族でもルビー級コインは1枚手に入れるのに死にそうになるとも言われてるわ。手に入れるのが難しすぎて逆にガチャの当たりの確率は高くなるの。だから85枚もあれば、祐太君ならルビー級カプセルをかなり出せるはずよ」
「それは嬉しい……でも複雑だな」
「どうして?」
「うん……残念だけど、ルビー級のガチャを回すにはルビーエリアに行かなきゃいけないし、今はマジックバッグの中で大事に保存だ」
これを戦力に変えたい。しかし、回す方法がない。それに、もし回せたとしてもガチャ運はレベル100ごとに上昇する。そう考えると、レベル400で回すのはかなりもったいないことになってしまう。
「そんなに慌てなくてもいいじゃない。伊万里さんのことを解決する前に、ルビーガチャも回しに行った方がどう考えてもいいと思うけど」
「でも、どうやって?」
「祐太君。迦具夜が口にしていたあなたへの一番の報酬を忘れたの?」
「いや、忘れてないけど」
それはもちろん覚えてる。探索者にとって一種の到達点。極みの一つ。迦具夜は俺を、
「迦具夜は自分が神になった暁には俺をルビー級にしてくれると言っていた」
「そう。あなたへのもう一つの報酬よ」
弁財天が微笑む。その笑顔はどこか神秘的で、まるで何か特別な力を秘めているかのようだった。
「ルビー級になったからって、ゴールド級をクリアしてないのにルビーエリアに入れるのか?」
「大丈夫よ。ルビー級になりさえすれば、ルビーエリアには入れるわ。だから先にそちらを見てきたらいいじゃない」
「ルビーエリアを見に行く」
それはかなり楽しみなことだった。何よりも戦力としてルビー級の専用装備はどう考えても必要だ。そして今ここで俺がルビー級になることができれば、俺は転生した体でゴールドエリアに入れる。
それは伊万里を探す上でとても明るい材料だと思えた。