軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百十八話 Side田中 八年 鈴を訪ねて②

Side田中

鈴さんをいざ探してみるとなって、その居場所を考えてみて正直困った。鈴さんはどこに居るのだろうか。鈴さんは僕が知る限り、僕と出会う前ずっと引きこもっていた。どこかに出かけた話を聞いたこともなかった。

アニメやゲームが好きで、その趣味は僕とも共通していた。だが、じゃあそれでは秋葉原などに行きたがるのかといえば行きたがらない。鈴さんは人混みが嫌いなのだ。それに鈴さんは探索者になる前から驚くほど可愛過ぎた。

だからそういう場所に行くと目立つ。とにかく目立つ。芸能界からのスカウトが2、3回はある。ナンパは数えだせばキリがない。写真の被写体になってくれ、絵のモデルになってくれ、下僕をさせてくださいなんていうやつもいた。

探索者になってからはそんなのも減ったが、今度はサインを求めてくるファンが居すぎて、外に出れない。あまりにも目立ちすぎるのだ。スーパースターが外に出れないのと同じ理屈だ。ファンが寄ってきて身動きが取れなくなる。

【天変の指輪】を手に入れてからは、姿を変えればいい話になったが、だからって外に出るかと言えばそうではなかった。とにかく鈴さんは僕と一緒にいればそれで幸せなのだと言う。他の誰でもない僕と、僕みたいなおじさんと……。

罪の意識に胸が痛くなる。とにかく見つけてまず謝りたい。とりあえずどこにいるか思いつかなかったが、びっくりするほど引きこもり体質なのは、悪神になっていたとしても変わらないはずだ。

だから【千年郷】の中を隅々まで探した。

「田中。貴様ひょっとして鈴がいなくなって【千年郷】ですら探してないのか?」

「うっ」

豊國さんに一番言われるとグーの根も出ない言葉を投げかけられた。

「今まで一体何をしていた?」

「何してたもこうしてたもこれから頑張るんだろうが、文句あんのか?」

「お前に聞いていなかったはずだが?」

なぜかジャック君が怒って豊國さんと睨み合う。

「ごちゃごちゃうるさいんだよ。田中は田中で事情があるんだ。お前みたいな粗暴のやつとは違うんだよ」

「貴様は貴様で調子に乗ってるな」

「は? 調子に乗る? おいおい待てよ。そういうのって目下の人間に言うことじゃないのか? お前俺の上か? 違うよな? あん?」

ジャック君と豊國さんが睨み合う。南雲君はどうして豊國さんに僕の手伝いをさせようと思ったんだ。人探しなど最も苦手な人材だ。おまけにジャック君は豊國さんだからと何でもハイハイ言うことを聞くような子じゃない。

個人的には美鈴さん、榊さんの2人の方が良かったように思う。いや、でも実際のところ実力的に言うとレベル900を超えている豊國さん、ジャック君がいいのも確か。贅沢なことを言うものではないけど。

「ほお、お前まだ懲りてないのか? 以前私に負けて詫びを入れたよな?」

「あの時はレベル800だった! 今やれば勝つ!」

「まあまあ、豊國さんの言うとおりです。正直ジャック君が考えてるほど僕は立派な人間じゃありませんよ。鈴さんのことでいつまでも覚悟が決まらなくて、曖昧な態度をとるから結局僕が一番鈴さんを傷つけたんだ」

ともかくこれ以上南雲君に迷惑をかけられない。ここは僕が調整役になって頑張ろう。

「ほら見ろ」

豊國さんがジャック君に言った。

「いいや、そんなことない。話を聞く限り、田中ははっきり葉月さんの方を選んでたんだろう。昔の価値観で言えば、その選択は大人として正しいと思うぜ。何も間違っちゃいねえ。だが天使様に問題があったとも思わねえよ。つまり田中が魅力的すぎてモテすぎるってのが問題だったんだ」

「貴様のその無条件の田中上げは何なんだ?」

「田中上げ? そんなの田中が格好良いからに決まってるだろ。この世に存在する全ての男の中で一番男らしい男の中の男。それが田中だ」

「「……」」

何だろう。僕のファンってこういう子多いんだ。まあファン自体、ガチャで虹カプセルを当てるぐらい滅多にいないんだけど、たまにいると虹カプセルを当てるぐらい強烈な子が出てくる。六条君もある意味強烈だったし。

《豊國さん、僕って六条君にもファンだって言われてるんですけど、特定の人に効果がある強烈なフェロモンか何か出てます?》

《おっさんの匂いならするぞ》

《それは分かってますよ》

《……》

豊國さんはついてきたことを後悔するように目元を押さえた。「できれば帰りたい。だが鈴とは一度本気で戦ってみたかった」とか言っている。僕の魅力について熱く語り出すジャック君。やめてほしい。恥ずかしいから。

「田中のいいところといえばやっぱりまずその容姿だ。サファイア級ともなればいくらでもイケメンになれるっていうのに、絶対誰も近づいてきそうにないお面をつけて背広を着てる。そして猫背になってる。誰が見ても冴えないサラリーマンそのもの。いやそれより酷い。なのにむっちゃ強い。場合によっては龍神様より強い。それでも全然人気が出ない。12英傑人気ランキングを取ればいつも最下位。12英傑になってスーツもようやくブランド品に変えたのに誰も気づかない。お金ないのに頑張ったのに誰にも気づかれない。それでも田中は寡黙に頑張る。まさに俺の理想とする男の中の——」

「うん。誰も聞いてないから探しに行こう!」

「おう!」

周りの視線が痛い。ともかく僕たちは鈴さんを探した。【千年郷】の中にいる間は護衛などさすがに必要がない。3人で別れて探したのだが、途中から豊國さんが、

「田中。これは我のやるべきことではない。戦いになったら呼べ」

と言って帰ってしまった。まあ【千年郷】の中でいる限り、危険なことなど起きるわけもない。それに【千年郷】は権限の高いものは連絡を簡単に取れる仕様になっているし、それで問題はないので止めなかった。

「勝手なやつ」

3日ほどが経ち、ちょっとジャック君は寂しそうだ。喧嘩するほど仲がいいというからひょっとすると……。鈴さんへの思いに気づいて僕もこういうことに鋭くなった。

「ジャック君、豊國さんが好きだったりする?」

「全然。これっぽっちも。正直、嫌いではないけどよ。女なら誰でもいいってわけじゃねえ。そもそもあのバリバリ女は六条が好きなんだろ。帰ってくるのかなり待ってるみたいだぞ」

「あ、そうなんだ」

やっぱり僕はこういうことに鈍いのか。

「まあジャック君もごめんね。僕がバカなばっかりにこんなことに付き合わせて」

「いいよ。正直田中とこんなに一緒に居られて嬉しいしな」

「そんな変わったこと言うの君だけだよ」

「あの!」

そんな時、声をかけられた。そちらを見ると結構可愛い女の子だった。僕は普段からずっと般若面をつけているから、滅多なことでは人から声をかけられない。特に女性からは声をかけられない。

こうして声をかける子がいる時は、たまに変わった時に現れる希少性の高い田中ファンということになる。なぜか僕のファンには変わった子が多いので警戒心が湧いた。

「頑張ってくださいね!」

その子ににっこり微笑まれた。2区で商業利用されている新秋葉原と呼ばれる区域だ。旧秋葉原よりもそれは大規模なアニメの聖地であり、続々と投入されてきている大量の資本とからくり族によって、以前以上の賑わいとなっていた。

【千年郷】はタダで物資が手に入るが、医療が充実しており、よほどのことがない限り働けないほどの怪我や病気を患うことはない。このため福祉制度はゼロに近く、働かないものへの救済措置もない。だから人は働かねばいけない。

それが優秀な探索者を生み出すための土台にもなる。だから、どんな場所でも働いている人間が普通にいて、その子はメイド服を着ていた。ふと空中に映し出された大型ビジョンからニュースが流れていた。

【政府は子供の人口統制を行うことを正式に決定しました。人生のうちで女性が生んでいい子供の人数は3人までという法律ですが、野崎さん、この法律についてどう思われますか?】

【また差別的な法律が決まりました。レベル10以上は4人産んでもいい。レベル50以上は6人、レベル100以上なら自由ですよ。こういう制度が——】

最近テレビでも盛んに話題にされるようになってきた人口統制。何しろレベル2になっただけでも年を取るのが遅く、子供を健康に産める。最近の日本ではノウハウがしっかりできてレベル3までならなれるものが多い。

どうしてもゴブリンを殺せず、20歳を超えてもゴブリンを10匹殺せなかったものは、銃を使ってゴブリンを大量に狩り、それでレベルを上げるものも多くなった。とりあえずレベルが上がるだけで健康寿命が伸びるからだ。

それすらできないものは人口の半分ほどで、ゴブリンを殺すことに嫌悪感を抱いてしまう人たちだ。それでも日本人の半分はレベルが上がっており、長生きが保証されている。おまけにレベル2でも60歳で特にリスクなく子供が産める。

女性は15歳~60歳まで子供が産める。老化も著しく遅いので、60歳と15歳のカップルですら珍しくない。当然のように人は増え、日本の人口は1億3000万人を超えた。それゆえに新秋葉原は子連れの姿も多く、人で賑わっていた。

「本当に頑張ってくださいね!」

そんな人で賑わう秋葉原で、もう一度メイド姿の女の子が言ってくる。今まで僕に向けられたことがないというほどキラキラとした目でも見てくる。何だろうかこの視線。身に覚えがなさすぎる。

だが、それどころではなかった。そのメイドの言葉にみんなが反応したのだ。

「え? 般若面の人って本物の田中?」

「コスプレじゃなくて?」

「本当だ! キャー田中様よ! 頑張ってください!」

「「「「「「頑張ってくださーーーい!!!」」」」」」」

そしてそういう沢山いる人たちから声援が送られた。

「え? あ? うん」

僕は何を頑張れと言ってるのかも分からず戸惑った。

「聞きました。田中様が眠っている天使様に"キス"をすれば、天使様がお目覚めになるんですよね!?」

「ふぁ!?」

「白馬の王子様!」

「ど、どこでそれを!?」

「結構噂になってます!」

「結構噂になってるの!?」

「はい。私森神様も死んで、六条様も死んで、天使様まで死んじゃって日本終わったーって思いました。でも、天使様は死んだんじゃない! 生きてるんですね!?」

「それは……」

分からない。実を言えば六条君だけ死んでいないことが分かっているだけで、鈴さんは死んでる可能性を否定しきれなかった。しかし絶対に自分の口からそんなこと言いたくなかったし、死んだと思ってるならこんなことしてない。

「い、生きてます。鈴さんは生きてます」

「やっぱりそうなんですね! それを田中様が迎えに行くのですね!?」

「え、ええ、なんかそんな感じかもしれません」

「つまり田中様こそ天使様の王子様なんですね! 私そういうの美女と野獣みたいで、ありだと思います!」

よくわからないが紅潮した顔でグイグイ攻めてくるメイド服の女子。田中ファンは大抵男。女で田中ファンなんて人は変わり者なんてもんじゃない。それがこの子言ってることはおかしいけど綺麗系で近寄られるといい匂いがする。

おまけになんかその後ろの人達もいっぱい声援を送ってくる。新秋葉原の街全体にそれが広がって大声援の大合唱になった。

《南雲君! 南雲君!》

《お、どうした? もう鈴が見つかったか?》

《それはまだだけど君、言ったね!?》

《何を?》

《僕と鈴さんがキ、キッキスするって!》

《知らん。いや、そんなこと言わねえよ。そもそも、そんなことどっちでもいいだろ》

《どっちでもよくない! よくないから!》

《田中は相変わらず祐太の対極だな。祐太だったら知らん間に一緒に居る女とチューぐらいいくらでもしてるぞ。というか俺は本当に知らん》

《でも、この件を知ってるの君ぐらいじゃ……》

そこまで考えてもう2人いることを思い出した。風神雷神だ。豊國さんはちょっと暴力的な人だけどそんなこと言って回る人じゃない。ただ……。

「それでお前ら! 田中様がキスすると目覚める天使様がどこにいるか知ってる奴はいるのか!? いないのか!? どっちなんだい!?」

言ってる! 思いっきり言ってる! ジャック君思いっきり言ってる!

「残念ながらまだ見つかっていないんです」

「こんな場所にはさすがにいないだろうというところまで探してるんですが!」

「風神様、私も探すの手伝います。天使様は【千年郷】内にいるんですね。お任せください」

「その調子だ! もっとこのネタを回りに広げろ!」

「はい! 今、SNS を使ってできるだけ多くの人に拡散してもらってます!」

「田中様安心してください! だって手伝いたいっていう人100万人以上集まってますよ!」

「100万!?」

「はい! もっと集まりそうです! 探索者の人まで手伝うって言ってくれてます!」

どうやらジャック君は先々で、

『田中様が天使様にキスをすると長い眠りについた天使様が目覚める』

というおとぎ話みたいな話をしているらしい。

「完璧だろ?」

「いや、全然完璧じゃない。むしろそういうのボカそうよ!」

「なんで? こっちの方が早いだろ?」

「早ければいいってもんじゃないんだけどな!」

ダメだ。僕の周りにはオープンな人しかいなさすぎる。探索者でむっつりタイプは僕だけじゃないだろうか? そのことで1つだけわかったことがある。早く鈴さんを見つけてキスをしないと、僕が恥ずかしくて死んでしまうということだ。

「——田中様。当てはあるのか?」

ジャック君が聞いてくる。【千年郷】の中はどれだけ探しても鈴さんはいなかった。行く先々でキスの話をされて僕のライフはガリガリと削れた。そしてそんな思いをしたけど恥ずかしかっただけで鈴さんも見つからない。

「ええ、まあ、蛇の道は蛇と言いますか」

僕は言いながら【千年郷】から出た。【千年郷】はどこからでも【千年郷】から出る権限さえ持っていれば、【転移】ですぐに外に出してくれる。すっと呼吸を止める。そのまま息を吸わない。息を吸うとダメな空間に出たからだ。

最初に慣れるまでパニックを起こす行為だが、慣れてしまえばそもそも息が苦しいという感覚が起きてこないことに気づく。そうするとずっと息を吸わなくても平気になる。僕は鈴さんと違って最初に慣れるのに時間がかかった。

『おじさん大丈夫。私たちレベル100超えたぐらいから、空気でエネルギー摂取してない。息を吸ってたのは、癖で吸ってただけ。だから落ち着けば大丈夫』

大丈夫だけど鈴さんは僕の手を握って【意思疎通】も使って、自分のイメージを一生懸命伝えてくれた。だから"宇宙空間"でも大丈夫になった。

「俺はまだこの光景だけは慣れねえよ」

「はは、実を言えば僕もさ。鈴さんと2人で見たな……」

やっぱり死んだなんて思いたくないし思えない。通常の衛星軌道よりもまだもっと離れた場所。そこに【千年郷】はあった。たとえ英傑ですらこの場所だけは見つけられない。【千年郷】は宇宙にあるのだから。

しかも【千年郷】には透過モードがあり、それをすると外からの光が完全に【千年郷】をすり抜けて反射しなくなる。そうすると目で見て【千年郷】を見つけることは不可能になり、この宇宙空間でさらに【千年郷】はその姿を隠す。

大戦中にはこのことが余計に優位に働いた。以来、未だに【千年郷】は宇宙に浮かんだままである。

「この【千年郷】が一番必要のない三種の神器とか、大八洲国は本当に意味わからんな」

「僕が聞いた話だと【千年郷】はこのまま宇宙船になることもできるらしいしね。地球だと三種の神器で一番欲しいのは間違いなくこれだけど、大八洲国だと微妙になる。まあ【千年郷】を手に入れるのは桃源郷の神になるものだからね」

【桃源郷】は【千年郷】の土地よりもはるかに広い。そしてそれが5層に分かれてる。一つの層だけでも使いきれずに余っている土地があるぐらいで、ただでさえ土地をフル活用していない状態で、さらに【千年郷】まで使う意味がなかった。

「卯都木さんが死んで森の守りが消えた時、千代女さんが隠してこれを宇宙にまで運んだ。唯一その時が一番危険だっただろうね。今となっては僕たちですら【千年郷】の管理からくり族・ 桜千(おうせん) さんと連絡ができなければ戻ってすら来れない」

桜千さんがいるから、六条君の意思に反しない限り、【千年郷】をフル活用できた。そして宇宙空間に【千年郷】があるのは隠れるためだけではない。小惑星などを取り込み、それを材料として物資を造るのだ。

そういうシステムも全て利用できるのは、桜千さんが僕たちがしていることを主である六条君の意思と反していないと判断してくれているからだった。

「【千年郷】の生み出す物資を使って外国の復興支援してるって聞いたけど、それはどうしてるんだ?」

「ああ、桜千さんに工場を建設してもらって、そこで雇用も生み出して物資を製作するんだよ。まあ実際のところその工程に人は必要ないんだけど、それはトップシークレットだ。やる気の低下に繋がっちゃうからね」

「結構やりがいのある仕事だって聞くけどな」

「その辺の調整は大八洲国の四層の人間で、ノウハウの蓄積があるらしいよ。人間の創造性を潰さない程度にやりがいのある仕事を与えるのがコツらしい」

【千年郷】全体の管理を任されている桜千さん。六条君は最初に【千年郷】に入り、手に入れる資格を得て、桜千さんに主と認められることで正式に主と登録されたらしい。その最初以降【千年郷】の主は一度も変更されていない。

ただそれでは六条君が帰ってくるまで、主の命令はなくなる。それでも最初に一緒に入ってきた千代女さんも居て、六条君が日本を助ける目的でこれを使おうとしていた。そのことに桜千さんは納得した。

結果、管理権限は他のものにも分け与えられることとなった。

「まるでからくり族が主で、人間が下僕みたいだな」

「言えてるね。レベルの上がってない人間は、管理されていることにも気づかず、管理される側でいるしかないのかもね。ともかく、それをマジックバッグでゴールド級以上の探索者が運ぶ。その手法で各国に配ってるね」

「なるほど。下手に場所を探って物資をもらえなくなったら困るから、つけてくるやつもあまりいないだろうしな」

「そもそも物資の運搬は気配を消すのも探知するのも得意な探索者が担当してるしね。万が一ここを見つけられたとしても入る資格のないものは、【千年郷】の周囲に張り巡らされた次元フィールドによって触れもできない」

王(ワン) ですら【千年郷】を見つけるのは諦めてるようだ。どこにあるか見当はついてるかもしれないが、見当がつけば余計に探す気は起きない場所だ。

「このまま地球に降りるけど、気配はできるだけ消してね」

「ああ、分かってる。でも、どこへ行くんだ? 蛇の道は蛇と言ってたということは……」

ジャック君が面白そうにこっちを見てきた。豊國さんをすぐに呼ぶことも考えた。しかし話し合いにはとことん向いていない人だ。だからまず2人で会いに行くことにした。

「ああ、悪神になった"月の魔女ナディアさん"に会いに行くよ。悪神は英傑の僕が戦ってはいけないという相手だからよろしく頼むよ」

「任せてくれよ。あんたにも俺の風を見せてやるよ」

一番手がかりと思える相手はナディアさんだ。鈴さんを探すなら、同じ悪神であるはずの彼女に会うしかなかった。僕は翠聖様が『無駄にはならない』と言ってくれた言葉を信じた。