作品タイトル不明
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そんなことを話している間にも、やけに周りからの視線を感じていた。
先ほどからみんなにちらちら見られているように感じるのは気のせいだろうか。みんなこちらを見て何か囁き合っている気がする。ただ雰囲気からして、悪口ではないと思う。
(レナード様はやっぱり目立つのかしら)
やはり、周りから見てもレナード様は美しいのだろう。私は彼と並んで歩いていることに少々気後れしながらも前に進んだ。
すると、会場の左に、仲良さげに話しているブラッド様とお姉様の姿を見つけた。
グレーのタキシードを着たブラッド様と、鮮やかな赤いドレスを身に纏ったお姉様。はた目から見ても、私と並んだときよりずっとお似合いだ。やっぱりブラッド様にふさわしいのは私ではないのだろうと考える。
もともとブラッド様はお姉様のほうがよかったみたいだし、お姉様も最近は婚約者とうまくいっていないというし。
私が身を引けば全て丸く収まるのではないか。それに……。
私は少しの寂しさを抱えながら改めて決意した。私はブラッド様の言うように、変わるべきなのかもしれない。
「メイベルさん、あちらに魔術院の生徒がいたよ。行ってみない?」
レナード様は二人の姿を見てぼんやりする私に、気遣うようにそう尋ねてきた。私は迷わず答える。
「まぁ、本当ですか? ぜひご挨拶に行きましょう!」
私は二人の姿を振り切るように、レナード様について進んだ。
パーティーはとても楽しかった。
会場にいたラネル魔術院の生徒からレナード様といるところを見て驚かれたり、レナード様とお知り合いだという会ったことのない貴族に話しかけられて魔法について話し込んだり。
今までいくつものパーティーに参加してきたけれど、こんなに楽しい日は今日が初めてだった。
そんな風に幸せな時間を過ごしていると、後ろからこわばった声が聞こえてきた。
「君はメイベルか……?」
振り返ると、そこには驚愕した表情でこちらを見るブラッド様がいた。彼の後ろには唖然とした顔のお姉様もいる。
「はい。もちろんメイベルですわ」
「その恰好はどうしたんだ? というかなぜ君が会場にいる。俺は君と参加しないと言ったのに……」
「レナード様がご親切にも一緒に参加してくださるとおっしゃったので。普段とは違うドレスで参加してみました」
そう答えると、ブラッド様は口をぱくぱくして、嘘だ、そんなはず、なんて呟きだす。おかしな反応に首を傾げる。
すると、お姉様が憎々しげにこちらを睨みながら言った。
「婚約者以外とパーティーに参加するなんて、随分節操のないことをするのね! 呆れてしまうわ」
「え……っ? お姉様がそれをおっしゃるのですか?」
「それにそんな派手に着飾ったりして! みっともないからやめたほうがいいわよ。全然似合ってないわ!」
お姉様は吐き捨てるように言う。
私はドレスを掴んで俯いた。確かに、お姉様と比べたら全く似合っていないだろう。けれど正面から否定されるとへこんでしまう。
するとレナード様に突然肩を抱かれた。戸惑う私に彼は優しい声で言う。
「メイベルさん、そんな顔しないで。そのドレス、君に本当によく似合ってるよ」
「レナード様……」
「メイベルさんのお姉様でしたね。いくらご家族とはいえ、彼女を貶すようなことを言うのはやめていただけませんか。淑女の言動とは思えませんよ」
レナード様にそう言われると、お姉様の顔がさっと赤く染まった。
「あなたには関係ないでしょう! こんなつまらない妹をパートナーに選ぶなんて悪趣味な方ね! 行きましょう、ブラッド様。こんな人たちと一緒にいたくないわ。……ブラッド様?」
お姉様はブラッド様の腕を引っ張って立ち去ろうとする。しかし、ブラッド様は動かなかった。やがて放心したようにこちらを見ていたブラッド様は、口を開いた。
「メイベル、俺が悪かった。君に当てつけのように別の令息とパーティーに来るような真似をさせるなんて……。俺が追い詰めてしまったせいだ」
「え?」
「俺たちお互いに未熟だったよな。もう一度はじめから関係をやり直そう」
私は急に態度を変えたブラッド様に戸惑ってしまう。
ブラッド様はつかつかこちらへ歩いてきて、私の手を取った。
「メイベル、ひどいことを言ったのは謝るよ。これからはまた婚約者としてやっていこう」
「え……? あの……」
私は手を掴まれたまま困惑してしまう。なぜ急に言っていることが百八十度変わったのだろうか。今日の私はブラッド様の意に反することしかしてないのに。
けれどブラッド様に謝られ、婚約者としてやっていこうと言われても、もう嬉しいとは思えなかった。そんな自分自身に驚く。
私たちは致命的に合わない人間なのかもしれない。一緒にいても、お互いこの先いいことはない気がする。
私はそっとブラッド様の手から自分の手を引いた。ブラッド様は戸惑い顔になる。
私は彼に向かって微笑んだ。