軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1-8

「……メイベルさん、よかったらそのパーティー、僕と一緒に出てくれないかな」

「え?」

「うちにも招待状が来てるんだ。僕は婚約者がいないからパーティーのときは姉上につき合ってもらってたんだけど、今回姉上は行かれないらしくて。だから今回は参加しないつもりだったんだけど、父上からはせっかく人脈を広げる機会なんだから無駄にするなと怒られてたんだ」

「まぁ……」

「だからメイベルさんが一緒に参加してもらえないかな? 君の災難に乗じるみたいであれなんだけど……」

レナード様は遠慮がちに言う。

多分、お父様に怒られる云々は口実だろう。婚約者に別の人とパーティーに参加すると言われて元気を無くしていた私を気の毒に思って誘ってくれたのだ。

優しい嘘だとはわかりつつ、私はレナード様に向かって答えた。

「……わかりました。私でよろしければぜひ一緒に参加させてください」

「いいの?」

「ええ、もちろん!」

私が答えると、レナード様はぱっと笑顔になった。

私は笑みを返しながらも、レナード様の気遣いにちょっと涙が滲みそうになっていた。

***

それから数日が経ち、とうとう王宮のパーティー当日がやって来た。

当日の朝、お姉様はくすくす笑って私にドレス姿を見せてきた。

「メイベル、ごめんなさいね。あなたに悪いとは思ったのだけれど。ブラッド様に一緒に参加して欲しいと頼み込まれたものだから断れなくて」

姉は楽しげにそんなことを言う。

ブラッド様のほうもお姉様に誘われたと言っていたけれど、本当のところはどっちなんだろう。まぁ、どちらにしろ私には関係ない。

着飾った姉の姿は悔しいことに本当に美しくて、私は再び気落ちしてしまった。

やっぱり私のような地味な女よりも、華やかで美人な姉のほうがブラッド様に合っている気がする。二人が並んだらさぞお似合いなんだろう。

私は憂鬱な思いで身支度をするために自室へ向かった。

レナード様も、実際華やかなパーティー会場に足を踏み入れてみたら、一緒に参加するのが私のようにつまらない令嬢なのを残念に思うかもしれないな。少しでもましな姿にしておかないと。

私はメイドたちに手伝ってもらいながら、どうにか少しでもましな姿に見えるよう身支度をした。

さすがに今日姉と一緒の馬車に乗る気にはなれなかったので、私はお姉様がお屋敷を出た後で、ホワイト家で予備として使っている小さいほうの馬車に乗り込んだ。

しばらく馬車に揺られ、パーティー会場である王宮に到着する。

私はエントランスホールでレナード様が来るのを待った。

「え、メイベルさん……!?」

柱の前で待っていると、驚いたような声が辺りに響いた。顔を上げると、そこには正装をしたレナード様が立っていた。

元からして銀色の髪のよく似合う美少年だったレナード様は、正装をするとさらに美しい。私が思わず見惚れていると、レナード様が口を開く。

「……驚いたな。別人のようでびっくりしたよ。普段の姿も可愛らしいけれど、大人っぽい恰好も似合うんだね」

「まぁ、お褒めいただきありがとうございます」

私は思わず笑顔になってお礼を言った。レナード様は本当にお優しい方だ。着飾っても到底お姉様やほかのご令嬢たちに敵わない私をこんなに褒めてくれるなんて。

レナード様は白い手袋をした手を私に差し出した。

「メイベルさん、今日はよろしくね」

「はい、レナード様。こちらこそよろしくお願いします」

私はレナード様の手に、自分の手を重ねた。

パーティー会場に入ると、大勢の参加者で賑わっていた。

豪奢なシャンデリアのかかった王宮の広いホールで、正装をした男女がにこやかに歓談している。私はレナード様とその中を歩いた。

「メイベルさんはそういうドレスが好きなの? ちょっと意外だったな」

「前からこういうドレスに憧れていて……。でも、今まではブラッド様に、似合わないドレス姿で隣に並んで恥をかかせないでくれって忠告されていたので避けてたんです。今日はブラッド様との参加ではないので思いきって好きなドレスを着てみました」

今日の私は、胸元から腰にかけてたくさんの宝石の散りばめられた、鮮やかな青のドレスを着ていた。髪はいくつもの宝石を埋め込んで作られた三日月形の髪飾りでシニヨンにまとめている。

普段の私は、ブラッド様に恥をかかせないことだけを意識して、無難なドレスばかり選んでいた。飾り気がなく印象の薄いドレスばかり。

いや、ブラッド様だけが理由ではないかもしれない。同じパーティー会場にお姉様がいることも多かったので、彼女と同じような華やかなドレスを着るのには抵抗があったのだ。

ブラッド様がお姉様と参加している今日はいつも以上に比べられそうな気がするけれど、その時はその時だと諦めている。細かいことを気にするのは、もう嫌になってしまった。

「すごく似合ってるよ。今まで着なかったなんてもったいない。君の婚約者は本当に見る目がないんだね」

レナード様はいたずらっぽく笑ってそう言った。

お世辞かもしれないけれど、そう言われて心が随分軽くなった。