作品タイトル不明
6-12
そうして私は、一週間ぶりにラネル魔術院に戻った。当然ながら一週間で大きな変化があるわけはなく、魔術院にはいつも通りの光景が広がっていた。
少し狭い校舎に、壁や床のあちこちにある魔法でついた傷痕。何も変わっていない光景のはずなのに懐かしくて、私は大きく息を吸い込んだ。
早速教室に向かうために歩き出す。
ちなみに、私がルヴェーナ魔法学園に体験入学へ行っていたことは学園長先生とレナード様以外には話していない。家の用事で休んでいたことになっている。
ラネル魔術院で長期間欠席する生徒は少なくないけれど、私は連続で一週間休むのは初めてだったので、ちょっと変な気分だった。
教室に向かって歩いていると、廊下でちょうど前から歩いてきたレナード様と出くわした。
「あ、メイベルさん! 今日からこっちに戻ってきたんだね!」
「レナード様……!」
心の準備をしていなかったので、思わず大袈裟に驚いた顔をしてしまった。
固まっている私を見て、レナード様は不思議そうな顔になる。
「どうかした?」
「あ、いえ、お久しぶりです……」
「久しぶりだね。一週間のはずなのにもっと会わなかったみたいな気がするよ」
レナード様は笑ってそう言った。
私はおそるおそる尋ねる。
「……あの、レナード様。婚約のお話聞きました。フリント侯爵家のエリアナ様と婚約されたって……」
「あ、知ってたんだ」
レナード様は少し驚いた顔をした後であっさりと言った。
「そうなんだ。まだ正式に決まっていないけど、婚約することになると思う。すごくいい子なんだよ」
頭を殴られたような衝撃で、私はしばらく言葉を継げなくなってしまった。
「……そ、そうなのですか……」
「うん。父上も喜んでてさ。肩の荷が下りて安心したよ」
「レナード様、婚約者選びの件で悩んでらっしゃいましたもんね……」
「うん。これで当分魔術院の勉強に打ち込めそう」
レナード様は明るい表情でそう言った。
婚約者が出来て最初の感想が、「これで魔術院の勉強に打ち込めそう」なのはちょっとどうなのかと思うけれど、本人は至って幸せそうだ。この前、お店の前で見かけたときの様子と合わせて考えても、エリアナ様との仲は良好なのだろう。
私はレナード様に向かって、どうにか笑顔を返す。
「おめでとうございます、レナード様」
「ありがとう。このまま正式に決まることを願うよ」
明るい表情でお礼を言ってくれるレナード様を見て、私は複雑な気持ちを隠すのに精一杯だった。