作品タイトル不明
6-11
すると、前方にある水色の屋根のかわいらしいお店から、見覚えのある人影が出てきた。
(え、あれ、レナード様……!?)
私は思わず、建物の陰に身を隠してしまった。
今日話を聞いたばかりでなんてタイミングだろう。別に隠れる必要もないのに、私はなんとなくこそこそ身を隠しながらレナード様を眺めた。
レナード様は一人ではなかった。隣には、綺麗なストレートの黒髪の愛らしい少女が並んで歩いている。
彼女はレナード様を見上げて楽しそうに笑い、レナード様もそんな彼女に優しく微笑み返していた。
(あれは、エリアナ様……?)
パーティーで数回見かけたことがある程度だったけれど、隣にいる少女はエリアナ様に見えた。つまり、今朝アイヴィー様が言っていたことは本当だったのだ。疑っていたわけではないけれど、実際に見ると衝撃が大きい。
私はつい、食い入るように二人を見つめてしまう。
レナード様の表情はとても楽しそうだった。カレン様のときとは明らかに違う。
やはり、レナード様はお父様に強制されたわけでなく、ご自身で好きになれる方に出会われたのだろう。
よかった。いつもお世話になっているレナード様が幸せになれるのだから嬉しい。私も喜ばないと。
……喜ばないといけないのに。
目の前で、レナード様がエリアナ様に楽しそうに笑いかけている。エリアナ様が嬉しそうに握りしめている小さな紙袋は、レナード様が渡したプレゼントだろうか。
その光景を見ていると、なぜか胸が痛んで目を逸らしたくなる。
「レナード様、今日はありがとうございました」
「ううん。また用があったらいつでも言って」
エリアナ様が笑顔で言うと、レナード様は明るい声で言葉を返した。
どうしてだろう。見ていたくない。このままここにいるのが嫌だ。
私は思わず二人から目を背けて、逃げるようにその場を離れてしまった。
二人から離れても、その後はもう楽しく魔道具や魔導書を見る気持ちにはなれなかった。私は自分のわけのわからない感情に困惑しながら、重い足取りでホワイト伯爵邸まで帰った。
悶々としている間に、あっという間に体験入学の期間は過ぎていった。
最終日、教室までやってきたダレルさんは熱心に言った。
「メイベル君! 心は決まったかい? 一週間ここで過ごしてみて、いかにルヴェーナ魔法学園が優れた場所であるかわかったんじゃないかな。君はやはりここで過ごしたほうがいいよ!」
「ありがとうございます、ダレルさん。体験入学、とても楽しかったです。……でも、もう少しだけ考えさせてください」
私は恐縮しながら返事をする。
ルヴェーナ魔法学園の体験入学はとても楽しかった。授業はおもしろいものばかりだったし、アイヴィーさんを始めとした生徒たちもみんないい人たちだった。
でも、やはり決断を躊躇ってしまうのだ。
ダレルさんは私の返答にあからさまにがっかりした顔をしていたけれど、転入する気になったらまたいつでも連絡してきてくれと言って、見送ってくれた。