作品タイトル不明
6-8
やがて訓練場にチャイムが響き渡った。授業は終了になったようで、生徒たちも引いていく。
彼らが訓練場から去ったところで、ダレルさんに尋ねられた。
「メイベル君、今日の見学はどうだったかな? ルヴェーナ魔法学園に転入する気になったかい?」
「大変興味深かったです。けれど、まだ悩んでおりまして」
「そうか、それは残念だ……。そうだ、メイベル君、それなら一週間ほど体験入学してみるというのはどうだい?」
「体験入学ですか」
「ああ。今日は校舎を見学して訓練を試してみるだけだったけれど、実際にここの生徒たちと同じようにここで学んでみてら、決断しやすくなるかもしれないよ」
ダレルさんは熱心にそう言う。
私は迷ってしまった。見学だけでなく体験入学までしたら、ルヴェーナ魔法学園に入る流れになってしまいそう。
悩む私に、ダレルさんは言った。
「ここには古代魔法研究室もあるんだけど、どうかな。体験入学したら、存分に学べるよ」
「え……っ」
魅力的な言葉に、心がぐらぐら揺れ始めた。
古代魔法は、全魔導士の憧れといっていい学問だ。
神話に出てくる魔法や、何百年も前にこの国が作られた際の魔法など、普通の生活を送っていたら縁がないような魔法を幅広く学ぶことが出来る。
けれど、古代の魔法だけあって資料も少なく、有識者にも滅多にお目にかかれない。知識を得るのが大変難しい学問でもあるのだ。
ルヴェーナ魔法学園でならそれを学べると思うと、興味を抑えきれなくなる。
「それでは、一週間だけ……!」
「来てくれるかい!? よかった、すぐに手続きしておくよ!!」
私が思わずそう答えると、ダレルさんはぱっと顔を輝かせた。
それから、私はダレルさんに門の前まで送ってもらい、ルヴェーナ魔法学園を後にした。
迎えに来てくれた馬車に乗り込んだ私は、未知の世界へのわくわくと、ラネル魔術院から遠ざかってしまう不安の混ざった、複雑な気持ちで景色を眺めていた。
***
それから私は、一週間ほどルヴェーナ魔法学園に体験入学することになった。
ラネル魔術院にその許可を取ったところ、学園長先生は非常に不満そうにしながらも許可を出してくれた。「メイベル君はあんな規律ばかりの学園より、こちらの方が合っていると思うぞ」と何度も念押されてしまったけれど。
現在、私はルヴェーナ魔法学園の仮生徒として授業を受けている。
「メイベルさん、ラネル魔術院の生徒なんですって? ラネル魔術院って、元魔法省戦闘部隊のオーブリー・モーガン様の運営してる学校よね?」
「ラネル魔術院ってすごくスパルタって本当? 生徒に練習用の人形じゃなくて本物の魔獣と戦わせるって聞いたんだけど!」
「オーブリー様の命令で在学中から危険な仕事をさせられるって噂もあるわよね! あれも本当の話なの? ダレル先生がよく文句を言ってるのよ!」
ルヴェーナ魔法学園の生徒たちが、興味津々の顔で尋ねてくる。
どうやらルヴェーナ魔法学園でもオーブリー学園長先生のことは有名らしい。そして、ラネル魔術院は率直に言うと、若干野蛮な学校としてルヴェーナ魔法学園の生徒に認知されているみたいだ。
私は彼らの勢いに押されながらも答える。