作品タイトル不明
6-2
「止まれ! 止まるんだ、パデール! そこの君、逃げてくれ!」
「え?」
道の向こうから、黒いマントを着た男性が悲壮な声で叫んでいる。彼は白い物体を必死で追いかけていた。
じっと見つめていると、白い物体は豹のような姿をしていることに気がついた。これは魔獣だろうか。もしかしてこの子はあの人のペットで、間違えて逃がしてしまったのかもしれない。
豹のような生き物は私のすぐそばまで来ると、威嚇するように唸り声を上げた。
鋭い目でこちらを睨んで、今にも噛みつかんばかりだ。
私は懐から杖を取り出す。
「眠りなさいっ!」
豹らしき生き物に向かって杖を振った。すると、生き物はぴたりと動きを止めて、ぱったりと地面に崩れ落ち、そのまま眠り込んでしまった。
私はほっとして杖をしまう。
「……今、君、パデールを眠らせたのか……?」
先ほどのマント姿の男性が、驚いた顔で近づいてきた。茶色の髪に緑色の目をした、背の高い青年だった。二十代後半から三十代後半くらいの年齢に見える。
私は彼に向かってうなずく。
「はい。ペットが逃げ出して困っているのかと思いまして。眠らせてしまって大丈夫でしたか?」
「あ、ああ! 逃がしてしまって困っていたんだ! ありがとう!」
男性は我に返ったように言った。それから白い豹のような生き物に、手早く首輪をつける。
「これで大丈夫だ。ああ、本当に焦った……」
「この子は魔獣ですか?」
「うん。うちの学園で飼育している魔獣のパデールというんだ。豹型の魔獣で、見ての通りすごくすばやいんだ。自力で鎖を外して逃げてしまったからどうしようかと思った。君のおかげで本当に助かったよ」
男性は胸に手を当てて、安心したように息を吐く。
「お役に立ててよかったです」
「ああ、本当にありがとう」
「いえいえ。では、私はこれで……」
「あっ、待って!」
私が立ち去ろうとすると、男性に慌てた声で呼び止められた。
「なんでしょう?」
「君、さっき使った魔法はどこで覚えたんだい? パデールは魔力が強いから、並みの魔法では効かないはずなんだが……」
「魔法は学校で習いました。私、ラネル魔術院に通っているんです」
そう答えると、男性は驚いた顔をする。
「ラネル魔術院? あの非公式の? 君はあの学校に通っているのか?」
「はい、そのラネル魔術院の生徒です」
「なんてもったいない! なぜ公式の魔法学園に入らないんだ!? 君ならルヴェーナ魔法学園にだって簡単に入学できるだろう!!」
男性は鬼気迫る勢いでそう言ってきた。
あまりに真剣な顔をするので驚いてしまった。私は戸惑いながらも口を開く。