作品タイトル不明
6-1
私の名前はメイベル・ホワイト。魔法が大好きな平凡な十七歳だ。
今日もラネル魔術院で魔法の勉強に励んでいる。
「メイベルさん、何してるの? 薬の調合?」
「あっ、レナード様! そうです。さっきの授業で習った魔法薬の調合をやってみたくて」
魔術院の同級生のレナード様に尋ねられたので、私は元気よく返事した。今日の授業では一時的に体を透明にする魔法薬の調合方法を習ったので、早速試してみたくて放課後に残って調合していたのだ。
レナード様は、薬を入れた瓶を手に取って感心したように言う。
「メイベルさんは本当に勉強熱心だよね。あの調合方法、複雑で難しかったのに。もう作れちゃうんだ」
「えへへ……。ありがとうございます。でも、まだ完全なものはできていないんですけどね」
私はちょっと照れながら言った。何度か試してみたけれど、完璧な薬はまだ作れていない。透明というより半透明に出来る程度の仕上がりだった。
「レナード様こそ、侯爵家のお仕事もあるのに魔術院の勉強も熱心にしていらして立派です!」
「ありがとう。メイベルさんに褒められると嬉しいな」
レナード様ははにかみながらそう言った。
それから瓶を置いて言う。
「そうだ、メイベルさん。父上が婚約者探しの件はしばらく待ってくれることになったんだ。カレン様の件で揉めたから、あまり急ぎ過ぎるのもよくないと考えたみたいで」
「まぁ。それはよかったですね!」
「うん。しばらくは安心して魔術院の勉強に打ち込めそう」
レナード様は笑顔で言った。
私も人のことは言えないけれど、レナード様も相当な魔法好きだと思う。侯爵家の跡取り教育で忙しいのに、非公式の魔術院に入って熱心に学んでいるくらいだもの。
私は改めて親近感を持ってレナード様を眺める。
「メイベルさん、あの、そんなじっと見つめないで……」
「え? あ、ごめんなさい!」
私はなんて素晴らしい仲間に恵まれたのだろうと思っていたら、つい真剣に見つめ過ぎてしまったみたいだ。
レナード様は片手で顔を隠しながら、あらぬ方向を見ている。
私が謝ると、レナード様はいや、構わないんだけど、なんてなぜか言い訳するみたいに呟いていた。
そうやって平和な日々を過ごしていたときのこと。
魔術院がお休みだったので、私は久しぶりに街に出てお店を見て回ることにした。ロナ・ミラーの展示会の件で、自分がいかに世間の流行を知らなかったのか思い知り、たまには魔道具店以外のお店にも行ってみたほうがいいんじゃないかと思ったからだ。
いくつかのお店を回り、最新のドレスや帽子やアクセサリーを眺める。片っ端からお店を回るうちに、なんだか私もいっぱしの貴族令嬢らしくなれた気がした。
満足した気分で通りを歩いていると、前方から白い物体がすごい勢いで近づいてきた。
何事かとその物体を見つめる。