作品タイトル不明
5-11
「……喜んでくれたらならよかった。メイベルさんに似合うドレスをイメージして魔法をかけたんだ」
「まぁ、私に似合うドレスを?」
「うん。メイベルさんにはああいう可愛い感じのドレスが似合うと思って。それと髪型は前に一緒に参加したパーティーでよく似合っていたから……」
レナード様は若干頬を赤らめて言う。
レナード様は以前のパーティーで私がしていた髪型を覚えていて、それで同じ髪型にしてくれたのだと知ると、余計に嬉しくなる。
「ありがとうございます、レナード様! あのパーティーのときのこと、覚えていてくれたんですね」
「当然だよ。メイベルさんと初めて一緒に参加したパーティーだし」
レナード様はきっぱりそう言った。私はくすくす笑ってしまう。
そんなことを話しているうちに、授業の開始時間が近づいてきた。私はレナード様と別れて席に着く。
鞄から教科書を出して授業の準備をしていると、前の席に座っているリタさんが話しかけてきた。
「メイベル、知ってる? ロナ・ミラーが今度新作ドレスを売り出すんですって! 最近発表された新作コレクションとは別に、もう一つ臨時で商品が追加されるらしいわ!」
「へぇ、そうなんですか。というかリタさんもロナ・ミラーご存知なんですね」
「当然よ! 知らないわけないでしょ! この国の令嬢なら誰でも知ってる有名ブランドじゃない」
リタさんは勢い込んで言う。
そんなに有名なブランドだったのか。知らなかった。私はもうちょっと魔法以外のことに興味を持ったほうがいいかもしれない。
リタさんは鞄から薄いカタログのようなものを取り出している。
一昨日、そのロナ・ミラーの展示会に行ってきたのだと話そうとしたら、口を開く前にリタさんがカタログのページを開いて見せてきた。
「ほら、見て! 新作ドレス『白雪の蕾』! この前ロナ・ミラーの展示会があったらしくて、そこのショーに飛び入りで参加したご令嬢のドレスのアレンジがあまりに美しかったから、感銘を受けたロナ・ミラーが新たにデザインしたんですって!」
「え、えぇ……?」
どこかで聞いたことのある話な気がするけれど、思い違いだろうか。
カタログには、あの日のショーで私が着ていたのとそっくりな白いドレスのデザイン画が描かれている。
「現在制作中なんですって。すごくかわいいわよね。私もほしいわ」
「そ、そうですね……!」
私は返答に迷い、曖昧な相槌を打った。
確かにレナード様が魔法で作ってくれただけあってすごくかわいいドレスだけれど、あの時の私が着ていたドレスを元にして作られたと聞くと困惑してしまう。本当にいいのだろうか。
私はリタさんからカタログを受け取って眺めた。
白いドレスのデザイン画をじっと見ていると、照れくさくて落ち着かなくなる。
けれど同時に、先ほどレナード様が私に似合うドレスをイメージしたと言ってくれたときのことが浮かんで、思わず笑みが零れてしまった。