作品タイトル不明
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「ええと、もともとルヴェーナ魔法学園への入学を考えていたんですが、少々事情がありまして……。けれど、ラネル魔術院はいいところですよ。今は魔術院のほうに入ってよかったと思っています!」
私がそう言うと、男性はわなわな震えだした。
「こんな才能のある子が、よりによってあのオーブリー先生の運営するラネル魔術院の生徒だって……? 騙されてるんじゃないか? 絶対におかしい……!」
「あの……?」
「この子の才能は適切な場所で活かされるべきだ。そうでないとルヴェーナ王国にとっての損失にもなる。私がなんとかしてあげないと……!」
「あのー……」
男性は何やらぶつぶつ呟いている。それから真剣な表情でこちらを見た。
「君、ルヴェーナ魔法学園に転校してくる気はないか?」
「え?」
「私はルヴェーナ魔法学園の教師のダレル・カーターだ。魔獣生態学を担当している。君のような有望な学生は、ぜひとも我が国一番の学校であるルヴェーナ魔法学園で学ぶべきだと思う」
「あなたはルヴェーナ魔法学園の教師だったのですか?」
私は驚いてダレルさんを眺めた。どうりで珍しい魔獣を連れているはずだ。この人は、ルヴェーナ王国でもっとも権威のある魔法学校の先生だったのだ。
私は呆気に取られながらも口を開く。
「お誘いありがとうございます。けれど、私はラネル魔術院が気に入っておりまして」
「ルヴェーナ魔法学園を実際に見たことはあるかい? ラネル魔術院よりもずっとハイレベルな教師が揃っていて、環境も整っている場所だよ。君のような才能豊かな子は絶対にこちらへ来た方がいい!」
「ええと、でも……」
熱心に説得され、困惑してしまった。確かに以前はルヴェーナ魔法学園に入りたいと思っていたけれど、ラネル魔術院に入学した現在は、すっかり魔術院が好きになってしまったのだ。今では転校なんて考えられない。
私が返答に迷っていると、ダレルさんが尋ねてきた。
「ところで今さらだけど、君、名前はなんて?」
「メイベル・ホワイトと申します」
「メイベル君というのか! いい名前だ! しつこくしてすまないけれど、君は絶対にルヴェーナ魔法学園に来た方がいいよ。そうだ、よかったら今度見学だけでもしてみないか?」
「見学……」
ダレルさんは、持っていた鞄をごそごそ探り出した。すると、中から小冊子のようなものが出てくる。ダレルさんは、鞄からさらにペンを取り出して、小冊子に何か書きつけた。
「これはルヴェーナ魔法学園の入学案内だ。読むだけでも読んでみてほしい」
「あ、あの」
「裏表紙に連絡先を書いておいたから、興味が湧いたらいつでも連絡してきてくれ! また会おう、メイベル君!」
「えー……」
ダレルさんは、笑顔でそう言うと、眠っている魔獣と鞄を抱えて朗らかに去っていってしまった。
残された私は、入学案内を片手に、ぽかんとしたままダレルさんを見送ることしかできなかった。