作品タイトル不明
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「まぁ、メイベル様! 約束通りレナード様と来てくださったんですね!」
「カレン様!」
振り向くとそこには、赤いドレスに身を包んだカレン様が立っていた。
胸元に薔薇の花のあしらわれ、裾の大きく広がった煌びやかなドレス。会場の真ん中に飾ってあるドレスたちに負けず劣らず美しい恰好だ。
カレン様はレナード様に視線を向けると、眉根を寄せて申し訳なさそうに言った。
「レナード様、来てくださってありがとうございます。カレンはレナード様の迷惑も考えずに何度も押しかけてしまったことを反省いたしましたの」
「いえ、お気になさらないでください」
「これからはレナード様にもメイベル様にもご迷惑をかけるようなことはいたしませんわ。ですから、家同士の付き合いは今後も続けてくださるとうれしいです」
「ええ。それでしたら喜んで」
レナード様はにこやかに言う。カレン様はほっとした顔になった。
「それでは、カレンは主催者の方に呼ばれておりますので、失礼いたしますね。どうぞ楽しんでらしてください」
カレン様はそう言うと、あっさりどこかへ行ってしまった。レナード様は去って行くカレン様を眺めながら拍子抜けしたように言う。
「カレン様、本当にただ挨拶したいだけだったんだ」
「そうみたいですね。よかったですね、レナード様」
「うん、ほっとした」
レナード様は笑って言う。なんだか肩の荷が下りたみたいだった。
その後、私はレナード様と展示されているドレスを眺めたり、スタッフに商品を紹介してもらったりしながら過ごした。
今まで魔法のことばかりで、こうやって新作のドレスをじっくり眺める機会なんてなかったけれど、改めて見てみるとどのドレスも工夫が凝らされていて興味深い。私はわくわくしながら会場を眺めていた。
すると、スタッフの一人がかしこまった様子でこちらへ近づいてきた。
「レナード・ラスウェル様。少しよろしいでしょうか。ラスウェル侯爵家のご令息とご挨拶したいという方がおりまして」
「え? 誰かな」
「――男爵という方です。少々来ていただいてもよろしいでしょうか」
「誰だろう……。知らない方だな。同行者がいるんだけど、彼女も一緒でいい?」
「ええと、それは……」
スタッフは答えにくそうにしている。彼は何か言いたげにちらちらこちらを見ていた。
レナード様お一人のほうがいいのだろうか。私は気を利かせるつもりで言った。
「レナード様、どうぞ行っていらしてください! 私はここで待っていますので」
「え、でも……」
「私のことはお気になさらず。こちらで展示を見て待っていますから」
「ごめん、メイベルさん。すぐ戻るよ」
レナード様は申し訳なさそうに言うと、スタッフに連れられ会場を出て行った。