作品タイトル不明
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私はしばらくの間、ドレスを眺めながらレナード様が戻るのを待っていた。すると、後ろから名前を呼ばれた。
「メイベル様、こちらにいらっしゃいましたのね」
「あ、カレン様」
振り返るとそこにはカレン様がいた。カレン様はにこやかにこちらへ近づいてくる。
「メイベル様、ちょっと私と一緒に来ていただけませんか? メイベル様に来て欲しい場所がありますの」
「すみません、今ここでレナード様を待っていて……」
「レナード様には先ほどお会いして確認済ですわ。メイベル様に用があるから少しお借りしたいと申し上げておきました」
「そうなんですか? わかりました、それなら」
レナード様も知っているのなら安心だ。私はカレン様に言われるまま、後を付いていく。
カレン様はパーティー会場を出て、廊下を歩いていった。歩いているのはスタッフばかりで、招待客らしき人の姿はない。関係者用の通路のようだ。
「カレン様、私たち、こちらの道を歩いて大丈夫でしょうか? 関係者らしき人しかいませんが……」
「ええ。問題ありませんわ。主催者に話はつけてありますの」
カレン様は迷う素振りもなく歩いていく。
先ほども主催者に呼ばれたと言っていたけれど、カレン様は主催者の方とお知り合いなのだろうか。お父様のご友人が招待状を用意してくれたと言っていたくらいだし、そうなのかもしれない。
私は一人で納得してカレン様の後を追った。
カレン様は、廊下を進んだ先の白い扉の前で足を止める。
「こちらですわ」
カレン様はにっこり微笑みながらこちらを振り返った。ここは関係者用の部屋だろうか、
カレン様が扉を開けると、中から賑やかな話し声が聞こえてきた。カレン様は私の手を掴んで部屋の奥へ引っぱる。
部屋に入った途端、私は固まってしまった。
目の前に広がる光景は、どう見ても舞台の上だった。煌びやかなドレスを身に纏った美女たちの横顔が見える。彼女たちはにこやかに観客に手を振っていた。
つまり、ここは関係者用の部屋などではなくて、先ほどパーティー会場から見えたステージの舞台袖だったのだ。
「カ、カレン様!? ここ、ステージの上みたいですよ!?」
「ええ、その通りですわ。ロナ・ミラーの展示会では、パーティーの後半にドレスのショーを行いますの」
「それなら私たちがここにいたらまずいじゃないですか……!」
「問題ありませんわ。主催者には、代理人を連れてくると話しておきましたから。メイベル様、実はショーに出演予定だった方が一人体調不良で出られなくなってしまいましたの。ですから、突然で悪いのですけれど、メイベル様に代理を務めてほしいのですわ」
「突然過ぎませんか!?」
カレン様がとんでもないことを言うので、私は目を丸くした。
私が今着ているドレスは、ロナ・ミラーのドレスではあるものの、安価な旧作だ。髪もメイクも、パーティーに出るので一応整えてはきたけれど、舞台に上がって大勢に見せられるようなものではない。ショーの代理なんて絶対無理だ。
カレン様は戻ろうとする私を、ぐいぐい引っ張る。