作品タイトル不明
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「メイベル、またどこかへ出かけるの? 最近しょっちゅう家を留守にしているわね」
「は、はい。お姉様。少し用事があって」
私は誤魔化すように言う。お姉様の表情は冷めたままだった。
「最近随分と楽しそうね」
「そうでしょうか。やりたいことを見つけたからかもしれません」
私が答えるとお姉様はつまらなそうな顔になった。
「あらそう。私が婚約者との関係に悩んでいるときに呑気なこと」
お姉様は、私がブラッド様と婚約したしばらく後で、侯爵家の生まれのご令息と婚約した。婚約当時はとても仲がよさそうだったけれど、今は少々うまくいっていないらしい。
お姉様の婚約者は誠実でいい人なのだけれど、お姉様の度重なるわがままにだんだんと疲れてきているらしいのだ。
デートの約束を当日に何度もすっぽかしたり、頻繁にプレゼントをねだってもらった後は数日で放置したりすることを続けていたら、うまくいかなくなるのも当然なんじゃないかと思ったけれど、それは口に出さないでおく。
「メイベル、今度いつブラッド様の家に行くの?」
「来週の末頃になると思います」
「そう。それならその時おもしろい話が聞けるかもね」
お姉様はそう言ってくすりと笑った。
その言葉の意味が気になったけれど、お姉様は私が聞き返す前に背を向けて行ってしまった。
それから翌週になり、ブラッド様の家を訪れる日になった。
あの日、カフェで君といると疲れると言われて以来、ブラッド様と二人では会っていない。今回家を訪れたのもブラッド様本人に会うのではなく、彼の家の商会を手伝うためだった、
しかし、カーク家のお屋敷に着くと、そこには予想外にブラッド様本人が待っていた。
「ブラッド様? どうなさったのですか?」
「君に会うために待っていたんだ。メイベル、ちょっと来てくれ」
ブラッド様はにこやかにそう言った。
私は戸惑いながらも、彼の後ろについて行った。
「来週王宮で行われるパーティーだけれど、マーガレット嬢と参加することになった」
部屋に入り、テーブルにつくと、ブラッド様は突然そう言った。私ははじめ言葉の意味がわからずぽかんとしてしまった。
「えっと……どういうことですか?」
「だから、来週の王宮のパーティーには君と出られないと言ってるんだ。この前、君の姉のマーガレット嬢に誘われたから、一緒に参加することにした」
「え……!?」
予想外の言葉に困惑してしまう。
ブラッド様がパーティーに別の人と参加する……しかもその相手がお姉様?
あまりのことに、言葉が出ない。私は先週お屋敷ですれ違ったときの、お姉様の何かを企んでいるような顔を思い返す。ブラッド様に聞かされる「おもしろいこと」とは、このことだったのだろうか。
「そ、そんなことをすれば周りに変に思われますわ」
「どうせ同じホワイト伯爵家の令嬢なんだから、周りは気にしないだろう」
ブラッド様は平然とそんなことを言う。
同じ家の令嬢だから周りは気にしないなんて到底思えない。むしろ余計におかしな憶測を生む気がする。ブラッド様もお姉様も、一体何を考えているのだろう。
困惑する私に向かって、ブラッド様は平然とした態度で言う。
「マーガレット嬢が誘ってくれるなら、わざわざメイベルと参加する必要はないしな」
「どういう意味ですか……?」
「本当は俺だってマーガレット嬢のほうがいいと思ってたんだよ。でも、彼女は競争率が高いから。裕福なホワイト伯爵家とはぜひ縁を結びたかったし、簡単に婚約できそうなメイベルに話を持ちかけたんだ」
「え……」
私は突然の言葉に固まってしまう。ブラッド様は、最初からお姉様の代わりに仕方なく私を選んだだけだというのか。絵姿を見て可愛らしいと思ったからという言葉は嘘だったのだろうか。
ショックを受ける私に追い打ちをかけるように、ブラッド様は手のひらの半分ほどのサイズの板を持ってきた。