作品タイトル不明
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お散歩気分で楽しく歩いていると、前方から見覚えのある人影が現れた。その姿に私は思わず「あ」と声を上げる。
「メイベルさん、どうかした?」
レナード様が不思議そうにこちらを覗き込む。すると前方にいた人物も私に気づいたようで、驚いた顔でこちらを見た後駆けてきた。
「メイベル! ここで何をしてるんだ!?」
そこにいたのは、ブラッド様だった。ブラッド様は眉を吊り上げて怖い顔でこちらを睨んでいる。
レナード様は突然の事態に戸惑い顔をしていた。
「ブラッド様……」
「そのローブは魔法学園の制服じゃないか! まさか、俺が止めたのに勝手に魔法学園に入学したわけじゃないよな? 大体、その横にいる男は誰だ? こんな時間に二人で出歩くなんてどういうことだ!」
「私が入ったのは魔法学園ではなくラネル魔術院です! ブラッド様に一緒にいると疲れると言われたから、ほかのことに熱を入れて自分を変えてみようと入学したんです!」
「行動を見直せとは言ったが、魔術院に入れなどとは一言も言ってないぞ。無断で勝手なことを……」
ブラッド様は苛立たしげに言う。
口論する私たちを戸惑い顔で見ていたレナード様が、私たちの間に割って入ってきた。
「えっと、あなたはメイベルさんの婚約者だよね。僕たちはただ先生の手伝いで授業で使う物を取りに来ただけだから、心配しなくていいよ」
「なんだそれは。そんな小間使いのようなことをメイベルがする必要ないだろ」
「先生が困っていたから、メイベルさんが親切にも手伝うと提案したんだ。……余計なお世話かもしれないけれど、メイベルさんは学園ですごく生き生きしていて楽しそうだよ。頭ごなしに止めないであげてくれないかな」
レナード様はブラッド様をまっすぐ見つめて言う。ブラッド様は、苛立たしげにレナード様を見ていた。
私は不穏な気配に怯えながら、ブラッド様の前に立つ。興奮気味のブラッド様とはひとまず離れたほうがいい。
「ブラッド様、すみません。今は急いでいるので今度改めてご説明いたします!」
私はそう言うなり、ブラッド様から逃れるようにして、レナード様に目で合図して走り去った。
最後に見たブラッド様の顔は、随分と不機嫌そうに見えた。
「……あれがメイベルさんの婚約者? 失礼だけど随分高圧的な人だね……」
街中を早足で歩きながら、レナード様は眉間に皺を寄せて言う。私は少々気まずくなりながらうなずいた。
「私がいつも彼の意に沿わないことばかりしてしまうので、怒らせてしまうのかもしれません。レナード様を巻き込んで申し訳ないです」
「それはいいんだけど……。意に沿わないことをしてしまうって、いつもあんなことを言われているの?」
レナード様はこちらを心配そうに見ていた。私はただ、大丈夫です、優しい時もあるんですとだけ答える。ブラッド様は確かに高圧的なところがあるけれど、それはそうさせてしまう私が悪いのだ。
レナード様は明らかに納得いかなそうな顔をしていたけれど、私は笑って誤魔化して魔術院までの道を急いだ。
***
ブラッド様と街で偶然出くわしてしまってから数日が経った。
あれからも特に変わらない日々が続いている。ブラッド様を怒らせてしまったかと思ったけれど、特に彼が会いに来ることも、連絡が来ることもない。その点はほっとしたけれど、結局私はどうでもいいと思われているのかもしれない。
そんなことを考えながら魔術院に向かうためにお屋敷の廊下を歩いていると、お姉様とすれ違った。
ブロンドの髪に空色の目をした、いつ見てもとても綺麗なお姉様。お姉様は私と目が合うと冷めた顔をする。