作品タイトル不明
4-7
「カレン様。申し訳ありませんが、僕はこれから用事がありますので、もう行かせてくださいませんか。それと、今後は魔術院には来ないでいただけるとありがたいです」
「まぁ、レナード様。そんなことおっしゃらないでくださ……」
「すみません、急いでいるので!」
レナード様はそう言うと、私の手を引いて勢いよく駆け出した。後ろからはカレン様の悲しげな声が聞こえてくる。
私は後ろが気になりながらも、レナード様にひっぱられるまま廊下を走った。
後ろからはまだカレン様の声や生徒たちのざわめきが聞こえてくる。
いいんだろうかと思いつつ、レナード様と学園長先生の待つ訓練場まで駆けていった。
***
その後も、カレン様は頻繁にラネル魔術院にやってきた。
エントランスホールで待ち構えていたり、馬車の停車場で待っていたり、訓練場を外から眺めていたり。
レナード様はその度に丁寧ながらもはっきりした態度でもう来ないで欲しいと言っていた。けれどカレン様には全く諦める様子が見えない。
日に日にレナード様が疲れていくのを感じる。
「レナード様、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫……」
レナード様は明らかに無理している顔で笑って言った。私はそんなレナード様を、はらはら見守ることしかできなかった。
そんなある日、私が魔術院の近くの魔道具店で買い物をしていると、後ろから声をかけられた。
「メイベル様ですよね? レナード様の同級生の」
「え? はい」
私は眺めていた魔法の小瓶を棚に戻しながら返事をする。
後ろには、ストロベリーブロンドの髪を一つに束ねてダークブラウンのマントを羽織ったカレン様がいた。今日は前回の桃色のドレスと違い、あまり目立たない格好だ。
カレン様はにっこり笑いながらこちらを見ている。
「こんなところでお会いできるなんて奇遇ですね。メイベル様、よくレナード様と一緒にいるので気になっていたんです。一度お話してみたいなぁって」
「まぁ。それは光栄です」
私は返答に困りながらも、そんな言葉を返す。
カレン様は奇遇なんて言っているけれど、ここは魔道具専門店だ。それも一般に使われている類ではなく、大分マニアックな部類の。魔法に興味がないらしいカレン様が偶然訪れるとは思えない。
カレン様は戸惑う私を微笑みながら見ている。
「メイベル様はレナード様と仲がよろしいんですか?」
カレン様は、ぱっちりした大きな目でじっとこちらを見ながら尋ねてきた。