作品タイトル不明
4-5
「カレン様。ですから縁談の件はもうお断りしたはずです」
「そんな寂しいことをおっしゃらないでくださいませ。せっかくお会いできたのに、もうお会いできないなんて悲しいですわ。せめて、もう少しカレンのことを知ってから答えを出していただけませんか?」
「いえ、僕は相手が誰であろうと婚約する気はないんです。カレン様にはラスウェル家の都合でお時間を取らせてしまい申し訳ありません。けれど、僕の気持ちは今後も変わりませんので、今回のお話はなかったことにしていただけませんか」
レナード様は真剣な顔で言う。
カレン様は眉間に皺を寄せ、不満そうな顔をした。しかし、すぐに可愛らしい笑顔に戻る。
「わかりました。レナード様の決意は固いのですね。今すぐに気持ちを押し付けてはご迷惑でしょうから、また改めてうかがいますわ。ごきげんよう」
カレン様はふんわり微笑むと、軽やかな足取りで去っていってしまった。
レナード様は、そんなカレン様の後ろ姿を呆気に取られた顔で見ている。
「え……? 今、僕はっきり断ったよね……?」
「カレン様、全然諦めていないみたいですね!」
私は去っていくカレン様の後ろ姿を眺めながら言う。あんなにきっぱりと断られても折れないなんてタフな人だ。
「もう……来ないで欲しいんだけどな……」
レナード様肩を落としてそう言った。
私は頭を抱えているレナード様に、元気を出してくださいと横から励ましていた。
***
翌週以降、レナード様は無事ラネル魔術院に戻ってきた。
レナード様のお父様は婚約者探しをまだ諦めていないらしいけれど、お見合いの義務を果たしたことでひとまずまた時間をくれることになったらしい。
「よかったですね、レナード様」
「うん。とりあえずまた魔術院に来る許可が下りてほっとしたよ」
レナード様は清々しい表情で言う。先日、ラスウェル邸で見たげっそりした表情との違いに、レナード様の一週間の苦労が偲ばれた。
その日の授業も無事に終わり、私は久しぶりにレナード様と一緒に学園長先生の特別訓練に向かうことになった。
学園長先生もレナード様が訓練に戻ってきたらきっと喜ぶだろう。私は軽い足取りで廊下を歩く。
すると、エントランスホールの付近に来たところで、何やら生徒たちの人だかりができているのに気づいた。
耳を澄ますと、「美少女が来てるんだって」「また転校生?」「制服じゃないからお客さんじゃないか?」なんて声が聞こえてくる。
誰かが魔術院に訪ねてきたのだろうか。
気になってそっとそちらへ近づいてみる。
すると人だかりの向こうに、見覚えのあるストロベリーブロンドのご令嬢が立っているのが見えた。カレン様だ。
ひらひらした桃色の可愛らしいドレスを身に纏ったカレン様は、黒いローブ姿の生徒たちに囲まれて、怯えたように眉尻を下げている。