作品タイトル不明
3-12
しかし、今はそんなことを考えている場合ではないので、私は慌ててドレクスモルに向き直った。
ドレクスモルは、牙を剥き出しにして唸り声を上げている。
おそらく、苦手な水を浴びせかけられたことにより余計に興奮しているのだろう。
呪文が効かないならば、別の方法で何とかしなければ。私は必死に方法を考える。
その時、ドレクスモルが勢いよくブラッド様に向かって飛びかかってきた。
ブラッド様は逃げようとするが、ドラゴンのスピードに敵うはずがない。ドレクスモルに噛みつかれそうになったブラッド様の叫び声が響く。
ドレクスモルは私にはろくに興味を示さず、ブラッド様のほうばかり追いかけていた。おそらく、水をかけられたことで敵認定されてしまったのだろう。
助けに入ろうとしたとき、足元にあった何かを蹴ってしまった。
それは空の桶だった。
多分、さっきブラッド様が言っていた桶だ。ここは植物栽培室の近くだから、植物にあげるための水を汲んで置いてあったのかもしれない。
ちらりと横を見ると、まだいくつか水の入った桶がある。
私は意を決してその中の一つを手に取った。そしてドレクスモルに向かって思いきり浴びせかける。
ドレクスモルの一層大きな鳴き声が響き渡った。
「メイベル!? 何してるんだ!? 水を浴びせてはいけないと言っていたじゃないか!!」
「これでドレクスモルは私の方を狙ってくるはずです。ブラッド様はその間に逃げてください!」
悲鳴を上げていたドレクスモルがこちらへ向き直る。
その目はまっすぐ私を見ていた。
「メ、メイベル……、そんなことをしたら」
「いいから早く逃げてください!」
私はそう言いながら、部屋の奥に駆け出した。
ドレクスモルはまっすぐ私を見て追いかけてくる。ドレクスモルの鋭い爪が、私の腕すれすれを掠めた。ひやひやしながら距離を取る。
私がドレクスモルに向かって炎の魔法を放つと、ドレクスモルは驚いたように悲鳴を上げて炎から逃げた。しかし、怯んだのは一瞬のことで、再び目にさらに強い怒りを滲ませてこちらを威嚇してくる。
「メ、メイベル。無理だ。こんな奴倒せるわけない。メイベルも逃げよう」
「無理ですよ! 人間に狙いを定めたドレクスモルがそのまま逃がしてくれるはずありません! ブラッド様は早くお一人で逃げてください!」
私はブラッド様に向かって叫ぶように言い、ドレクスモルに集中する。
大丈夫だ。私は学園長先生の強力な魔法を何度も間近で浴びてきたではないか。あれに比べればドレクスモルの攻撃なんた大したことない。……はず。