作品タイトル不明
3-9
学園長先生の訓練はきつかったけれど、毎日欠かさず通い続けた。
日々、先生の攻撃魔法を真正面から受けるうちに、少しだけかわすのがうまくなってきた気がする。この調子でがんばればいつかは先生に反撃できるかも。
放課後、私は気合を入れて訓練場に行く準備をする。
「メイベルさんは今日も訓練だよね? 今日は僕は行けないけれど頑張ってね」
「はい、レナード様もお父様の領地訪問への同行がんばってください!」
私は教室を出て行くレナード様に向かって手を振る。毎日レナード様と一緒に訓練場へ通っていたけれど、今日はレナード様は侯爵家の用事でお休みなのだ。
レナード様との訓練で消耗していない学園長先生は普段よりさらに手強いだろうけれど、今日はどうにか一撃くらい反撃しようと気合を入れて訓練場まで向かう。
訓練場までの道を歩いていると、ふと前方に見覚えのある金髪の人影が目に入った。私は思わず立ち止まる。
逃げようとする間もなく、その人物はこちらに気づいて近づいてきた。
「メイベル! 最近一体何してるんだ? 授業が終わっても随分遅くまで魔術院に残っているそうじゃないか!」
「ブラッド様……!」
こちらへつかつか歩いてきたのは、ブラッド様だった。私は戸惑いながら彼を見る。
「……学園長先生の訓練を受けているんです」
「授業の後に遅くまで残って訓練? なんでそこまでするんだよ。そんなことをして何の役に立つんだ?」
ブラッド様は呆れた顔で言う。
「や、役に立ってますよ……! 毎日訓練を受けていたおかげで、少しずつ攻撃魔法をかわせるようになってきました!」
「毎日訓練を受けてようやく攻撃をかわせるようになる程度なのか」
「それは学園長先生の攻撃魔法が強力だからで……」
説明しても、ブラッド様は興味のなさそうな顔をするばかりだ。
ブラッド様は突然私の手を掴んだ。
「メイベル、やっぱり君は魔術院に入ってから変わったよ。前はもっと素直で従順な子だったのに、どうしてしまったんだ?」
「ブラッド様、その時は私と一緒にいると疲れるとおっしゃいませんでしたか?」
「ああ。今は反省してる。俺のために健気にがんばってくれていたメイベルにひどいことを言ってしまったって……。メイベル、もう一度あの時の君に戻ってくれよ。もう二度とあんなことを言わないから」
ブラッド様は真剣な顔で言う。
私は唇を噛みしめた。ブラッド様はどうして私の意志を無視するのだろう。私はもうあの頃には戻りたくない。あの頃より今のほうがずっと幸せなのに。
「……お断りします」
「メイベル、そんなこと言わないでくれよ。もう少し……」
「私、もうブラッド様のこと全く好きではありませんから! むしろあなたの言うことばかり聞いていた自分を恥ずかしいと思っているくらいです! もう私に近づいてこないでください!!」
「は!? おい、ちょっと待てよ、メイベル!!」
ブラッド様から後ろから呼び止めて来るけれど、全力でその場から走り去った。
足が遅い私はすぐに追いつかれそうになったので、途中で身体強化の魔法(一分くらいしか効かない)まで使って全力で逃げた。