作品タイトル不明
3-6
「そう思うなら、ブラッド様はどうしてラネル魔術院に来たのですか?」
「だからメイベルに会うためだよ。こんな場所で魔法なんかに夢中になっているメイベルの洗脳を解いて、元の場所に連れ戻してやりたかったんだ」
「私、洗脳なんてされていません。自分の意志でここに入って、自分の意志で魔法を学んでいます」
「洗脳されている本人にはそれがわからないんだよ」
ブラッド様は私の言葉なんて意にも介さずに言う。悔しくなって唇を噛んだ。
「……私、魔法省に入りたいんです。今やっていることは無駄ではないと思っています」
「は?」
ブラッド様は驚いた顔でこちらを見た。それから馬鹿にしたような顔になる。
「メイベルが魔法省? やめておけよ、君には絶対無理だ」
「でも、私は……!」
「メイベル、そんな無駄な努力はやめてしまえよ。俺と婚約し直して、カーク家に嫁に来ればいいじゃないか。そうしたらもう無理して頑張る必要ないんだから」
ブラッド様はやけに優しい声で言う。
そんなことを言われてもちっとも嬉しくない。私は無理して頑張っているわけではないのに。ただ魔法が好きだから夢中で学んでいるだけなのに。
「ブラッド様、私は……」
「案内はここまででいいよ。じゃあ考えておいてくれよ、メイベル」
ブラッド様はそう言うと、すたすた歩いて行ってしまった。
廊下に残された私は、ただやるせない思いでブラッド様の背中を見ていた。
***
ブラッド様に言われた言葉に悶々としていたある日のこと。
教壇の前に立った先生が、真面目な顔で告げた。
「昨晩、魔術院で飼育している魔獣が檻から脱走しました。敷地外へ出ないよう結界魔法をかけてありますが、校舎内では魔獣に遭遇する可能性があります。魔獣が隠れている恐れのある場所には絶対に近づかないようにしてください」
先生の言葉に教室中がざわめき出す。生徒の一人が質問した。
「先生、どの魔獣が脱走したのですか?」
「ドレクスモルです。遭遇すれば、鋭い牙と爪で襲い掛かってくる恐れがあります」
教室のざわめきが一層大きくなった。
ドレクスモルとは、まるで刃物のような爪と牙を持つ好戦的なドラゴンだ。ドラゴンにしては小さめで体長の平均は1.6メートルほどだけれど、攻撃力はかなり高い。あのドラゴンに生身で出会ってしまうところを想像すると血の気が引く。
「ドレクスモルは日の光の当たらない場所を好むので、そのような場所には近づかないようにしてください。今から校舎内の注意が必要な場所をリストにしたものを配ります」
先生はそう言いながらリストを配る。