作品タイトル不明
3-5
「メイベルはもうちょっと人をよく見たほうがいいと思うわ……」
「そうですね。私、やっぱり人を見る目がないですよね……。ブラッド様のことも婚約当初から最近まではずっといい人だと思ってたんです……」
「それもだけれど、そっちじゃないわ」
リタさんは憐れみの目を向けてくる。
もう少し詳しく聞きたかったけれど、戦闘訓練の順番が来てしまい、続きを聞けないまま試合スペースのほうへ向かうことになった。
そんなある日、私が学園長先生の部屋に呼ばれた帰りに魔術院の廊下を歩いていると、正面からブラッド様が歩いてくるのが見えた。
隠れようとする間もなく、ブラッド様が近づいてくる。
「メイベル! ちょうどよかった、探してたんだ」
「ブラッド様……。何のご用でしょう」
私は困惑して言葉を返す。
「この魔術院、やたら広くてどこにどの教室があるのかさっぱりわからないんだ。メイベルが案内してくれないか?」
「それでしたら、同じ夜間クラスの生徒に頼まれては……。ブラッド様に校舎案内をしてあげたい生徒はたくさんいらっしゃると思いますよ」
ブラッド様を見て大騒ぎしていた女子たちならば喜んで案内してくれるはずなので、わざわざ私に頼まないでほしい。
というか、そもそも初日に先生が案内してくれなかっただろうか。私の時は先生が放課後案内してくれたのだけれど……。
「メイベルに案内して欲しいんだ。それくらいいいだろう?」
「私はこの後用事が……」
「いいよな? さぁ、行こう、メイベル!」
断ろうとする私の声を遮って、ブラッド様は私の手を引っ張る。私は渋々校舎案内をすることにした。
「ここが実験室です。薬草の調合をしたり、魔石の性質を調べたりします」
「ふーん。薄暗くて不気味な部屋だな」
「こちらが魔獣飼育室です。様々な種類の魔獣が集められています」
「随分とうるさいな。こんな大量に魔獣を飼育して意味があるのか?」
ブラッド様はどの部屋を見てもマイナスなことばかり言う。私はどの教室も好きなので、複雑な気持ちになってしまった。
「……それでは、次は訓練場に……」
「メイベル、こんな場所にいて本当に楽しいのか?」
ブラッド様は突然そんなことを聞いてきた。
「え? 楽しいですよ、もちろん」
「こんなじめじめした場所で魔法なんて学んでたって何の役にも立たないだろう。魔法省にでも入るならともかく、一般的な魔法なんて魔道具で代用できるだろう?」
ブラッド様はつまらなそうな顔で言う。私は困惑して尋ねる。