作品タイトル不明
2-14
「この割れ方、おかしくない? どれも同じ箇所から傷がついて、そこからひび割れている」
「確かに全て右下部分から割れていますね。けれど、その部分から何か衝撃がかかったのでは……」
「十枚もあるプレートが全て割れるほどの衝撃があったんなら、もっと派手に割れないかな。このプレートの鏡には一見すると気づかないようなひびがうっすら入っているだけだ。まるで一枚一枚人為的に割られたかのような……」
レナード様がそう言うと、エイデン様の表情が固くなった。エイデン様は強張った顔で私に向かって尋ねる。
「……メイベル嬢。このプレートはどこに保管していたんだい?」
「自分の部屋です。昨日の夜にチェックしてからは、ずっと部屋に置いてある鞄の中にしまってありました。なので、誰かが人為的に割る暇なんてなかったと思います。私の部屋に入れるのは家族かメイドたちくらいで……」
そう言いかけてはっとする。私の部屋に、家族やメイドたちならば入れたのだ。家族からは雑に扱われ気味で、メイドたちにも適当な扱いをされがちな私ではあるけれど、身内にそんな悪質なことをされるとは思いたくない。
けれど、不自然な割れ方をしたプレートを見ていると不安が押し寄せてくる。
私の頭の中には、演習場で怒鳴り声を上げていたお姉様の顔が浮かんでいた。
「メイベル嬢。昨日の夜、マーガレットはお屋敷にいたかい?」
「いました。いましたが……お姉様がそんな……」
「私も婚約者を疑うような真似はしたくないんだが……。一度、ホワイト伯爵家に伺ってもいいだろうか」
エイデン様は真面目な顔で言った。私は不安に思いつつも、彼の言葉にうなずいた。
レナード様は、顔を強張らせる私を心配そうに見ていた。
***
数日後、約束通りエイデン様がホワイト伯爵邸を訪れた。
応接間にお通しして、ソファに腰掛けて待っていると、約束の時間から数十分遅れてお姉様が姿を現す。
「……一体何の用なの。私だけじゃなくメイベルも交えて三人で話したいって」
「君に聞きたいことがあるんだ。重要な話だ」
エイデン様にそう言われると、お姉様は不機嫌な顔でどさっとソファに腰を下ろす。エイデン様はお姉様を真っ直ぐ見据えながら尋ねた。
「マーガレット、単刀直入に聞く。メイベル嬢の持っていた魔道具に何か細工をしなかったか?」
お姉様の肩がぴくりと動いた。
お姉様はしばらくの沈黙の後、エイデン様をきっと睨みつける。
「何? 私がメイベルに嫌がらせしようとしたって言いたいの? するわけないじゃない。こんなでも一応は妹なのよ」
「本当に何もしていないのか? メイベル嬢の持っていたバリアのプレートが、魔獣退治当日に全て壊れていたんだが」
「だからってなんで私のせいになるわけ? メイベルが自分で壊したんじゃないの」
お姉様は苛立った声で言う。
私は緊迫する二人の様子をはらはら見ていた。