作品タイトル不明
2-11
「メイベル嬢、準備はいい?」
「はい、大丈夫です!」
いつも通り香り石を設置した後、エイデン様は私の顔を見て尋ねた。私は元気よく返事をする。
私は香り石の前に立って、フォスティが集まってくるのを待った。
すると、早速木の影からガサガサ音がして、フォスティたちが近づいてきた。何度やってもこのフォスティの足音が近づいてくる瞬間はドキドキしてしまう。
木の影からフォスティたちが顔を出す。その姿を見てぎょっとした。
いつも現れるフォスティは大型犬くらいの大きさなのに、今姿を見せたフォスティはその倍くらいはあるのだ。顔つきも今まで見てきたフォスティより狂暴そうで、思わず足が竦んでしまう。
私の横でフォスティの攻撃に備えていたレナード様は、固い声で言った。
「本当にほかの場所に出たフォスティたちとは随分違うんだね。メイベルさん、いけそう? 危なそうなら無理することはないよ」
「だ、大丈夫です! お二人もいますし、バリアも用意してきましたから!」
私は恐れを払いのけて言う。そうだ、あのフォスティ達はちょっと怖いけれど、私は複数枚のバリアを持っているのだ。仮に噛みつかれてもバリアが守ってくれる。
バリアのことを思い出すと恐怖は和らいで、私は足を踏み出した。
「眠りなさいっ!」
フォスティに向かって杖を振る。ドサドサ音がして、フォスティ達が地面に崩れ落ちた。無事に魔法が効いたようで安堵する。
しかし、フォスティ達の中には眠っていないものもいた。彼らは崩れ落ちた仲間たちを見て警戒するように唸り声を上げる。
「あのフォスティたちには効いていないみたいです……」
「そうみたいだね。小型のフォスティより魔法に対する耐性が強いんだろうな……」
私はレナード様と顔を見合わせた。
すると、警戒するように唸っていたフォスティの一匹が、勢いよくこちらへ駆けてきた。それにつられるように、ほかのフォスティ達もこちらに駆けてくる。
レナード様はすぐさま駆けてきたフォスティを電撃で眠らせてくれた。エイデン様も後ろから防御魔法でガードしてくれる。しかし、二人の間を潜り抜けるように、フォスティが私の方へ迫ってきた。
「ひっ!!」
私は思わず後退りする。
(ちょっと怯んじゃったけれど、バリアがあるのだから噛みつかれても……)
幾分冷静になった私に、フォスティはすごい勢いで近づいてくる。それから私に飛びかかろうとした。
(無理!! バリアがあるとわかっていてもやっぱり怖い!!)
私は反射的にフォスティを避ける。フォスティの歯が私の目の前でガチンと音を立てて鳴った。
その様子に違和感が頭を掠める。