軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第73話 側室の子

夜が更けていた。

セレストーム家の邸宅は静まり返り、当主の寝室だけにまだ蝋燭が灯っていた。カッセルリックは机の前に座り、一声も発さず、蝋燭の炎が溶けて滴り落ちるのをじっと見つめていた。

「ねえ、もう寝ましょう」

妻のエリーゼが、カッセルリックの上着を脱がせながら言った。

「一晩中、難しい顔をして——一体何があったの? 私にも言えないこと?」

「……今日の鍛錬のことを考えていた」

「オースティンのこと?」

エリーゼの声が冷たくなった。

「あの子は本当に手に負えないわ。いつも無口で、あの冷たい目で睨まれると、ぞっとする。まるで、いつか誰かを刺し殺しそうな——」

「エリーゼ」

「エイドリアンも同じよ。狡猾で、いつも何か企んでいるような顔をしている。二人とも、イザベラの子供らしいと言えばらしいけれど」

エリーゼは鏡台の前に座り、象牙の櫛で銀色の髪を梳き始めた。

「あなたは側室の子供たちに甘すぎるわ。レオンやティモシーより、あの二人に時間を割いているじゃないの。特にオースティン——侍妾の子に、セレストーム家の槍術を教えるなんて、どういうつもり?」

カッセルリックは長い溜息をついた。

「レオンには本当に心血を注いでいるよ。オースティンに教えている槍術は攻烈なもので、上達が早く見えるだけだ。レオンに教えている剣術こそセレストーム家最高の技で、習得は難しいが、将来の成果はオースティンを遥かに超える」

「ならどうしてオースティンにまで教えるの? あんなひねくれた子、放っておけばいいのに。今日だってレオンを殺しかけたんでしょう?」

櫛が鏡台に置かれ、カチンと硬い音が響いた。

「あの子を遠くへやってしまいなさいよ。修道院でも、遠方の領地でもいい」

「殺しかけた、というのは言い過ぎだ」

カッセルリックは首を振った。

「オースティンは止められると言っていた。あの子は——無口なだけで、嘘はつかない」

「あなたはいつもあの子の味方をするのね」

「味方とかそういう問題じゃない」

カッセルリックは机を軽く叩いた。

「家を継ぐのはティモシーだが、レオンにもいずれ相応の役目を与えなければならない。補佐官として兄を支えるか、別の道を歩ませるか——それはまだ分からん。だが、オースティンも同じだ。兄弟は、いざという時に互いの盾になる。槍術を身につけておけば、将来ティモシーの近衛になるもよし、レオンの護衛につけるもよし、使い道はいくらでもある」

「要するに、駒ということね」

「駒とは言っていない。家族だ」

「……あなたは本当に、何でも考えているのね」

エリーゼはようやく表情を緩めた。

夫の腕を取り、二人は寝床に入った。中の声は次第に低くなり、やがてくすくすという笑い声だけが漏れ聞こえた。ティモシーの将来、レオンの将来、エレンの将来——正妻の子供たちの輝かしい未来を語っているようだった。

◆◇◆

屋外、星と月の光が降り注ぎ、邸宅の屋根と尖塔が銀色に浮かび上がっていた。

大きく張り出した軒先の下——星も月も届かない暗がりの中に、まだ細い影が一つ、立っていた。

屋内の声はもう聞こえなかった。だが、さっきまでの会話は——全て聞こえていた。

オースティンは頭を上げ、腕の中のレオ・ルガールを見つめた。槍の穂先が月光を弾いて、寒いほどに光っている。

彼は屋敷裏の糸杉の並木を見た。自分の北棟を見た。中庭の石畳を見た。

だが、自分がどこへ行けばいいのか分からなかった。

槍を抱えたまま、黙々と中庭を歩いた。その足音は恐ろしく静かで、部屋の中のカッセルリックも気づかなかった。カッセルリックはいつも「堂々としていない足音だ」と言ったが、狩りをする豹の足音も同じだ。カッセルリックが豹を見たことがないだけだった。

邸宅の外壁まで来ると、積まれた石材を足場にして音もなく壁の上に登った。眼下に街並みが広がっている。屋根と屋根の連なりが月光の下に静まり返り、煙突から細い煙が立ち上っていた。

オースティンは壁の上を歩いた。何度も何度も、行ったり来たり。自分がどこへ向かっているのかも分からないまま。

最後にオースティンは自家の屋根に座っていた。

スレートの冷たい屋根瓦の上で、両膝を抱え、膝に顎を乗せて。まるで夜風の中でそのまま眠りに落ちようとしているかのように。

八歳の子供が、屋根の上で一人きりだった。

【続く】