軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話 カエルム・アルカナム。

広間では、父上と五人の長老が見知らぬ老魔法使いと熱心に会話を交わしていた。だが、その老人はどこか言いづらそうで、言葉を飲み込んでは傍らの少女に睨まれる、ということを繰り返している。

しばらく聞いていたが、つまらなくなって首を振った。

所詮は社交辞令だろう。

そう思いながら、静かに広間を見渡す。

老人の態度は表面上恭しいが、その目の奥には微かな傲慢さが宿っていた。強者が弱者を見る時の、大勢力が小家門を見下ろす時の、あの独特な眼差しだ。

一方、父上と長老たちは落ち着いているように見えるが、言葉の端々に慎重さが滲んでいる。

これが実力差による地位の違いか。

心の中で溜息をつく。

一城の覇者である侯爵といえども、真に強大な勢力の前ではこんなものなのだ。

深い藍色のローブの老人が穏やかに微笑みながら、隣の少女を示した。

「ほほ、侯爵閣下。このお嬢様をご存知でしょうか?」

「申し訳ない。このお嬢様は……」

父は少女を眺めたが、やや気まずそうに首を横に振った。

「こちらは、リーゼロッテ・フォン・クラウゼンブルクお嬢様にございます」

「クラウゼンブルク公爵のご令嬢か!?」

父ははっとした後、満面の笑みを浮かべた。

「リーゼロッテお嬢様。もう何年も会っていなかったものだから、見分けがつかなかった。許してくれたまえ。レオンの婚約者殿が、こんなに立派になられるとは」

父の声は温かかった。旧友の孫娘との再会を、心から喜んでいるようだった。

俺は父の満面の笑顔を見つめながら、心の中で苦い思いを噛みしめた。

父はまだ知らないのだ。この令嬢が今日ここに来た本当の目的を。

「ふふっ、祖父様は昔、クラウゼンブルク公爵と生死を共にした戦友でした」

エヴィルが古ぼけた本のページをめくりながら、静かに語り始めた。

「ちょうどレオン兄様とリーゼロッテ様が同時にお生まれになったので、お二方は婚約を結ばれたのです」

俺は頷いた。

この婚約は物心ついた時から存在していた。だが婚約者に会ったことは一度もない。

「でも祖父様が魔獣との戦いで亡くなられてから、両家の関係は次第に疎遠になりました」

エヴィルが俺を見つめる。

「それでもクラウゼンブルク公爵は剛直な方で、約束を極めて重んじるお人です。レオン兄様が錬金系と判定されても、破談を申し入れる使者は送ってこなかった」

俺は苦笑した。「その公爵は本当に……義理堅いな」

ただし、この義理堅さは、俺にとって必ずしも良いことではないかもしれない。

「公爵はリーゼロッテ様をとても可愛がっていますが、婚約解消を口にすることは難しいでしょう……」

エヴィルの美しい瞳が細まり、戯れるように言う。

「ええ。でも公爵が口にしないなら――」

「孫娘が自分で動くしかない、ということか」

エヴィルが頷いた。

「この三年間、リーゼロッテ様はカエルム・アルカナムで院長ステラリア様の寵愛を得るほどの才能を示しました。力を手にした人は、気に入らないことを解決しようとするものです」

「不幸なことに、レオン兄様との婚約が、彼女にとって最も不満な事柄なのです」

「つまり、彼女は今回、婚約解消のために来たということか?」

声は平静だったが、心の中には怒りが湧き上がっていた。

この怒りはリーゼロッテの俺への軽蔑に対するものではない。

彼女と結婚できなくても、せいぜい男としての残念さを感じる程度だ。

俺が本当に気にしているのは、彼女が選んだ方法だ。

もし大勢の前で父に婚約解消を申し入れたら、族長である父の面目は丸潰れになる。リーゼロッテは美しく、地位も高く、天賦も優れている。語る誰もが、俺レオン・セレストームは身の程知らずの蛙で、白鳥に踏みつけられたのだと笑うだろう。

俺だけでなく、父までもが。

冷たい空気を静かに吸い込み、袖の中の手のひらを強く握りしめる。

もし今、俺が正式な魔法使いなら、誰がこんな辱めを与えられるものか。

だが、残念ながら――俺は今、ハズレ属性の錬金系と判定された見習いに過ぎない。

華奢な小さな手が、そっと俺の袖に触れた。

「レオン兄様、もし彼女が本当にそんなことをすれば、それは彼女自身の損失です」

エヴィルが優しく言う。

「いつかきっと、あの方は今日の愚かな判断を悔やむことになります――エヴィルは確信しております」

広間では、社交辞令が続いていた。

だが、ハインリッヒはどこか言いづらそうで、言葉を飲み込んでは傍らのリーゼロッテに睨まれる、ということを繰り返している。

老人の態度は表面上恭しいが、その目の奥には微かな傲慢さが宿っていた。強者が弱者を見る時の、大勢力が小家門を見下ろす時の、あの独特な眼差しだ。

一方、父と元老たちは落ち着いているように見えるが、言葉の端々に慎重さが滲んでいる。

しばらく聞いていて、ようやくあの老人の所属が分かった。

カエルム・アルカナム。

古語で「天の秘院」を意味し、いかなる国家にも属さない独立した魔法組織であり、数百年の歴史を誇る。院内にはエルシア大陸各地から集った最高峰の魔法使いたちが名を連ね、数え切れないほどの貴重な魔導書と修練資源を所有している。

カエルム・アルカナムの本部は国境を超えた天空の城にあり、天を突く七層の高塔はいかなる国の旗も掲げない。伝説によれば、塔の頂は常に七色の光環に包まれ、昼間でもはっきりと見えるという。

カエルム・アルカナムへの加入は、国や家門を問わず、無数の魔法使いたちが夢見る栄誉だ。

そして、カエルム・アルカナムの中核メンバーはいかなる王権をも超越した存在であり、オルハイム王国の国王でさえ院長には礼を尽くさねばならない。

セレストーム家が治めるカルディアという都市は、オルハイム王国に属している。魔獣の森に近いという地の利で王国の主要都市の一つに数えられているが、その中でも中堅程度だ。

セレストーム家がカルディアの覇者だとすれば、カエルム・アルカナムは、エルシア大陸全体に君臨する超然たる存在だろう。

その差は、天と地ほどもある。

普段は威厳に満ちた父が、言葉遣いまで恭しくなるのも無理はない。

これが実力差による地位の違いか。心の中で溜息をつく。一城の覇者である侯爵といえども、真に強大な勢力の前ではこんなものなのだ。

父はリーゼロッテの才能を称え、ステラリアの門下に入ったことに感嘆の声を上げている。

「リーゼロッテは幸運に恵まれただけですわ……」

控えめに笑いながら、リーゼロッテは父の熱意に少々戸惑った様子で、テーブルの下で隣のハインリッヒの袖を軽く引いた。

俺はその様子を見て、口元に薄い笑みを浮かべた。

幸運に恵まれた、だと?

ステラリアに直接弟子入りできたことが、幸運の一言で片付けられるものか。

これは強者の謙遜に過ぎない。

いや――強者が弱者に向ける余裕、とでも言うべきか。

やがて、ハインリッヒの声音が変わった。

「ほほ、侯爵閣下。実を申しますと、今日の用件はリーゼロッテお嬢様に関することでして……しかも、院長閣下ご自身からの……」

「院長」という言葉を口にする際、老人の表情がわずかに厳粛なものとなった。

父の顔色が変わり、笑みが消えた。

父の手が微かに震えているのが見えた。

彼も察したのだ。

俺は父の表情を見つめながら、心の中で苦い思いを噛みしめた。