軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第6話 来客

ベッドの上で、レオンは瞑想していた。

魔力鍛錬の基本姿勢――背筋を伸ばし、両手は膝の上に置く。呼吸を整え、精神を集中させる。

空気中に漂う魔力素を感じ取ろうとする。

だが――

何も感じない。

「……やっぱり、駄目か」

ゆっくりと目を開け、レオンは静かに息を吐いた。

七年間、毎晩続けてきた。もしかしたら、いつか魔力が戻るかもしれない。そんな淡い期待を、どうしても捨てきれなかった。

だが結果は、いつも同じだ。

胸元に下げた古めかしい黒い吊り飾りに指を触れる。母がくれた、家に代々伝わるもの。魔力の成長が止まってから、この吊り飾りが時々微かに光る気がする。気のせいかもしれない。

レオンは首を振り、ベッドから降りた。魔力はなくても、体は鍛えられる。前世の知識を活かしたストレッチと軽い筋力トレーニングは欠かさない。

その時、ノックの音が聞こえた。

「レオン様、侯爵様がお呼びです。大広間へ」

外で待っていたのは専属メイドのローシーだった。

「では、参りましょう」

「はい」

ローシーは先導を始めたが、その目には心配の色が浮かんでいた。

「ローシー、何か知っているのか?」

「いえ……ただ、今日は遠方からお客様がいらっしゃると」

「遠方から?」

「はい。とても立派な方々だと聞きました」

レオンは静かに頷いた。恐らく――俺と関係があるのだろう。

ローシーに案内されて後庭を抜け、厳粛な迎賓の大広間の前で止まった。ローシーが扉をノックする。

「どうぞ」

中から父の声。

扉が開き、レオンが入室する。

大広間は広々としており、既に多くの人が集まっていた。最上段には父カッセルリックと、三人の元老が座っている。

第一元老グレゴール――白髪で威厳のある老人。財政を統括している。

第二元老マーカス――元騎士団長で、がっしりとした体格。軍事を担当。

第三元老ヴィクター――痩せた魔法師で、眼鏡をかけている。魔法関係を監督。

元老院が全員揃っている。それは重要な議題がある時だけだ。

下座には家族の有力者たちと若い世代の者たち。兄たちの姿も見える。長兄ティモシーは相変わらず穏やかな表情。次兄エイドリアンと三兄オースティンは、俺を見て微かに眉をひそめた。

そして反対側に、二人の見知らぬ人物が座っていた。

深い藍色のローブを着た老人。穏やかな笑みだが、目は鋭い。胸元を見て、レオンは内心で驚いた。銀色の三日月の刺繍、その周りに七つの金色の星。

「七星大魔法師……」

父カッセルリックは五星大魔法師だ。この老人はそれより二階級上。

そしてもう一人。

老人の隣に座る少女。レオンと同年代、十四歳ほどか。

整った容貌。耳には緑色の宝石の耳飾り。

冷ややかな小顔には、年齢に似合わぬ傲然とした雰囲気が漂っている。

彼女の胸元には――五つの金星。

「十四歳で五星魔法師……」

レオンは表情を変えずに評価した。

自力でここまで到達したなら、間違いなく天才だ。

少女の顔を一瞬見てから、レオンは自然に視線を外した。前世の魂を持つ彼に、同年代の少女に動揺する理由はない。

だが――

レオンの落ち着いた態度が、少女を少し意外にさせたようだ。彼女は一瞬目を見開いたが、すぐに興味を失ったように視線を外した。

まあ、当然だろう。

自分は十四歳で五星魔法師。

こちらは十四歳で魔力値3。

比較の対象にすらならない。

「父上、元老方」

レオンは前に進み、上座の四人に礼をした。

「ああ、レオン。座りなさい」

父が頷いた。

レオンは広間を見回した。

そして――自分の席がないことに気づいた。

表情は変えない。ただ静かに立っている。慌てず、騒がず。

周囲の若者たちがくすくすと笑い始めた。

上座のカッセルリックは眉をひそめた。

「マーカス――」

「ああ、申し訳ない。レオン様の席を用意するのを忘れていた。すぐに――」

「レオン様、よろしければこちらへ」

突然、静かな声が響いた。大広間の隅で、一人の少女が本を閉じた。

家族の傍系出身、エヴィル。十四歳で既に四星魔法師という、家族きっての天才だ。

「……ありがとう、エヴィル」

レオンは落ち着いて頷き、彼女の隣に座った。周囲の視線を気にする様子もなく、自然に。

三人の元老は何か言いたげだったが、結局何も言わなかった。エヴィルは家族の将来を担う逸材。彼女に逆らうわけにはいかない。

「お久しぶりです、レオン様」

「ああ、久しぶりだね。エヴィルは今や家族の期待の星だから、忙しいだろう」

「……そうでもありません」

エヴィルは微笑みながら本を開いた。

上座で父が咳払いをした。

「今日お呼びしたのは、他でもない――遠方より、大変高名なお客様がいらっしゃった」

父の声には、普段にない丁重さがあった。

社交辞令が始まった。だが用件には一向に入らない。

「彼らが我が家門に何の用だ?」

疑問を抱きながら小声でエヴィルに尋ねる。

このレベルの勢力が、我々のような小家門に関心を持つはずがない。

もしくは……。

不吉な予感が胸を過ぎる。

エヴィルの繊細な指先が微かに止まり、しばらく沈黙した後、言った。

「おそらく、レオン兄様に関係があるかと……」

俺は固まった。

「俺に関係? 俺は彼らと何の接点もないぞ」

首を振って否定したが、心の不安は募るばかりだ。

「あの少女の名前をご存知ですか?」

エヴィルが淡々と、向かいの高貴な少女に視線を向ける。

その視線を追う。

少女は容姿端麗で気品に満ち、冷ややかな小顔には年齢に似合わぬ傲然とした雰囲気が漂っている。

「何だ?」

眉をひそめて問い返す。

「リーゼロッテ・フォン・クラウゼンブルクですわ」

エヴィルの小顔に奇妙な色が浮かび、俺を横目で見る。

俺の体が瞬時に硬直した。

リーゼロッテ・フォン・クラウゼンブルク。

オルハイム王国の鉄血公爵クラウゼンブルクの孫娘。

あの――俺と婚約している少女。

深く息を吸い込み、表情の平静を保とうと努めたが、心の中では波が立っていた。

思わず視線を上げて、対面の少女を見た。

リーゼロッテもまた、こちらを見ていた。

その口元には――かすかな、しかし明確な軽蔑の笑みが浮かんでいた。