軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5話 転落

五歳から八歳まで。

俺の人生で最も輝いていた時期だった。

剣術の才能を見せ、魔力感知も三日で成功し、少年兵たちを次々と倒す。屋敷中の注目を集めた。

「レオン様は天才だ」

「あんなに体が弱かったのに、今では見違えるようだ」

使用人たちの目が変わった。同情から尊敬へ。

父カッセルリックも――あの冷たかった父が、少しずつ俺を認め始めた。

「レオン、よくやっている」

短い言葉だったが、それでも嬉しかった。

そして八歳の誕生日。

魔力属性測定の日がやってきた。

測定室には、父、母、三人の兄たちが揃っていた。測定魔法師は王都から招かれた白髪の老人。

「では始めましょう。手を水晶球に」

俺は水晶球に手を置いた。

微弱な白い光が灯った。

でも――すぐに消えた。

何度やっても結果は同じだった。

「カッセルリック侯爵様、レオン様の魔力が……消失しています」

部屋が静まり返った。

「三年前には確かに魔力がありました。しかし今は……ほぼ完全に消えています」

母が悲鳴を上げた。父の顔が青ざめた。

俺は――ただ呆然と立っていた。

それから数ヶ月、父は必死に名医を探した。全員が同じことを言った。「治療法はありません」

父の顔は日に日に憔悴していった。母は毎晩泣いていた。

そしてある日、バートンが俺を呼んだ。

「レオン様……侯爵様の命令で、特別訓練は中止となります」

「……そうですか」

「魔力がない剣士は……戦場では……」

「分かっています」

俺は木剣を返した。

使用人たちの目が、また変わった。期待から同情へ。尊敬から憐れみへ。

そんな中――母が再び妊娠した。

十ヶ月後、五番目の息子が生まれた。名前はアレン。

アレンが産声を上げた瞬間、部屋が聖なる光に包まれた。

「聖光属性!」

全員が驚愕した。

「神の恵みだ!」

「百年に一人の逸材!」

父は泣いていた。喜びの涙だった。

「アレン……我が息子……」

その日から、屋敷の全ての注目がアレンに集まった。一歳にして治癒の力を見せ、二歳で言葉を話し、三歳になる頃には誰もが認める天才児だった。

父はアレンに全てを注いだ。時間、愛情、資源。全て。

そして俺は――舞台から降りた。

アレンは俺に懐いていた。

「レオン兄様! 遊んで!」

「ああ」

俺は彼と遊んだ。彼は無邪気で、優しくて、本当にいい子だ。俺は彼を憎む理由なんて、一つもない。

むしろ、ありがたいとさえ思っていた。彼がいるおかげで、俺は自由になれた。

長兄ティモシーは武官の道を歩んでいた。温和だが芯が強く、既に帝国軍に入隊している。父も認める優秀な息子だ。

次兄エイドリアンは水系の魔法師だった。水の属性を自在に操り、王立魔法学院への入学が決まっている。プライドが高いが、それに見合う実力がある。

三兄オースティンは熱力系と槍術の双修だった。魔力を槍に宿し、将来は騎士団に入ると公言している。短気だが正直で、裏表がない。

そして末弟アレン。聖光属性を持つ、家の希望。

皆、それぞれ優秀だった。俺だけが――何もない。

でも、それでいい。

考えてみれば、俺は異世界に転生して、金持ちの貴族の家に生まれた。前世はブラック企業で死ぬほど働いて、それでも生活はギリギリだった。それに比べれば、毎日三食食べられて、暖かいベッドで寝られて、本も読み放題。誰も俺に何も期待しない。プレッシャーもない。

前世で学んだ言葉がある。「期待されないことの自由」。まさにそれだ。

九歳、十歳、十一歳。俺は静かに日々を過ごした。

基礎的な教育は受けた。読み書き、計算、歴史、地理、礼儀作法。でも特別な訓練は何もない。魔法の授業も、剣術の指導もない。

ただ時々、一人で木剣を振った。バートンがくれた木剣を、裏庭で、誰も見ていない時に。別に強くなりたいわけじゃない。ただ体を動かすのが好きだっただけ。前世の習慣かもしれない。

父カッセルリックはもう俺を見なくなった。廊下ですれ違っても、目も合わせない。

母だけは、時々俺の部屋に来た。

「レオン……ごめんなさい……」

「母上、本当に大丈夫ですから」

嘘じゃなかった。母は悲しそうにしていたが、俺は本心から笑っていた。

十一歳のある日。ローシーが俺に聞いた。

「レオン様、辛くないんですか?」

「辛い? 何が?」

「だって……皆様はレオン様を……」

「ああ、無視してるってこと?」

俺は笑った。

「別に。楽でいいよ」

「でも……」

「ローシー、昔はね、もっと頑張らなきゃって思ってた。でも今は分かった」

「頑張らなくても、生きていける。それって、幸せなことだよ」

ローシーは不思議そうな顔をしていた。

でも、それが俺の本心だった。

そして十四歳の誕生日。

正式な魔力属性測定の日がやってきた。