軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第4話 鍛錬の始まり

五歳のある朝、俺は裏庭で一人ストレッチをしていた。

夜明け前の静かな時間。誰もいない。

「……何をしておられるのですか、レオン様」

振り返ると、バートンが立っていた。

「バートン殿。体が弱いので、自分で鍛えようかと」

バートンは俺を見つめ、やがて口を開いた。

「明日から、私が教えます。卯の刻、ここに来なさい」

翌朝。

バートンの訓練が始まった。

「まずは基本の構えから」

剣――いや、木剣を渡される。

「これはロングソードの構えです。両手で柄を握り、剣先を相手に向ける。オクス、雄牛の構えと呼びます」

バートンは次々と構えを教えてくれた。

「次はプフルーク、鋤の構え。剣を下段に構え、相手の攻撃を下から受ける」

「フォム・ターク、屋根の構え。剣を頭上高く構え、上段から振り下ろす」

「アルバー、愚者の構え。剣先を地面に向け、隙を見せて誘う」

一つ一つの構えに意味がある。攻撃用、防御用、フェイント用――

「ロングソードは両手で扱う剣です。リーチと威力に優れますが、動きが大きくなる」

次の日はショートソードだった。

「片手で扱う剣です。もう片方の手で盾を持つこともできます。小回りが利き、素早い攻撃に向いています」

さらに次の日。

「これはレイピア。突きに特化した剣です。切るのではなく、刺す」

バートンは様々な剣術を教えてくれた。

バスタードソード――片手でも両手でも使える中間的な剣。

ツーハンデッドソード――超大型の両手剣。威力は最高だが扱いが難しい。

それぞれに適した構え、歩法、攻撃の型がある。

「レオン様、剣術の基本は四つです」

バートンは指を立てた。

「斬る、突く、受ける、躱す。これだけです」

「でも、構えや技はたくさんありますよね?」

「ええ。それらは全て、この四つを効率よく行うための手段に過ぎません」

なるほど。

剣術は複雑そうに見えて、実はシンプルなのか。

「素振りを始めましょう。上段から百回」

「はい!」

毎日毎日、素振りを続けた。

上段、中段、下段――

突き、払い、受け――

同じ動作を何百回も繰り返す。

「正しい型を体に染み込ませるのです。考えなくても体が動くまで」

バートンの言葉通り、俺は型を繰り返した。

午後はアルベルトの魔法の授業だ。

「魔力を感じられるようになりましたね。次は制御です」

アルベルトは手のひらに小さな炎を浮かべた。

「魔力を集中させ、属性を付与し、形を整える。これが魔法の基本です」

「やってみます」

目を閉じて、体内の魔力を感じる。

心臓から流れる暖かい流れ――

それを右手に集める。

集めて、集めて――

「そうです。焦らず、ゆっくりと」

手のひらが熱くなる。

目を開けると、小さな火の粉が浮かんでいた。

「おお、初めてでこれは上出来です」

アルベルトは満足そうに頷いた。

「魔法にも四大元素があります。火、水、風、土。まずは火から始めましょう」

火の魔法の基礎を学んだ。

小さな火を灯す。

火を大きくする。

火を移動させる。

形を変える。

「魔法は想像力です。自分がどうしたいか、明確にイメージすること」

次の週は水の魔法だった。

「水は火より制御が難しい。形を保つのに集中力が要ります」

手のひらに水を集める。

最初はすぐに零れてしまったが、何度も練習するうちにコツを掴んだ。

「よろしい。次は風です」

風は見えない分、さらに難しかった。

「風を感じなさい。空気の流れを意識するのです」

目を閉じて、周りの空気を感じる。

微かな風――

それを魔力で動かす。

「できました!」

「素晴らしい。あなたの上達速度は異常ですよ、レオン様」

最後は土の魔法。

「土は最も重い。大きな魔力を必要とします」

地面の土を浮かせる。

小さな土の塊が宙に浮いた。

「四大元素の基礎は完璧です。次は組み合わせですね」

半年が過ぎた。

剣術も魔法も、基礎は叩き込まれた。

「レオン様、そろそろ実戦形式の訓練を始めましょう」

バートンがそう言った。

「実戦?」

「ええ。少年兵との模擬戦です」

訓練場に行くと、十歳くらいの少年たちがいた。

「こいつが侯爵様の息子? ちっちゃ」

「五歳だろ? 俺らと戦えるわけねえ」

少年兵たちは笑っている。

まあ、そうだろうな。体格差がありすぎる。

「では、始めてください」

バートンの合図で、一人の少年兵が木剣を構えた。

俺も構える。

オクスの構え――ロングソードの基本だ。

少年兵が突進してきた。

上段からの振り下ろし――

俺は横に躱す。

相手の剣が空を切る。

そこに――

パシッ!

俺の木剣が少年兵の脇腹を打った。

「え?」

少年兵が呆然としている。

「一本!」

バートンが宣言した。

「次」

次の相手も、その次も――

俺は全員に勝った。

体は小さい。力も弱い。

でも、型が染み込んでいる。

相手の動きが見える。

どこに隙があるか分かる。

前世の知識もある――フェイント、間合い管理、タイミング。

「……レオン様は天才だ」

少年兵たちが囁いた。

一年が過ぎた。

六歳になった俺は、もう少年兵にはほとんど負けない。

剣術も、ロングソード、ショートソード、レイピア、全て使いこなせる。

魔法も、四大元素の基礎魔法は完璧だ。

「レオン様、次は騎士団の正式な訓練に参加しましょう」

バートンがそう提案した。

「騎士団?」

「ええ。副団長のバートン殿が直々に教えたいと」

こうして俺の訓練はさらに過酷になった。

「さあレオン様! 素振り三百回! その後走り込み!」

バートンは鬼だった。

「休憩は空気椅子で!」

「休憩になってねえ!」

でも、確実に強くなっていった。

城の中で俺を見る目が変わった。