軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第55話 測定

家族魔闘会は二つの段階に分かれている。

前半は魔力測定。後半は実戦の魔闘。

測定で合格ラインに達した者だけが、魔闘への出場資格を得る。不合格者には一度だけ、合格者への挑戦権が与えられ、勝てば合格とみなされる。

規則は毎年変わらない。だが、あの水晶の前に立つ人間の心は、毎年違う。

演武場の中央に、人の背丈ほどもある巨大な結晶体が据えられていた。

——魔法水晶。

深い群青色の六角柱。内部に幾筋もの光の脈が走り、まるで生きた心臓のように微かに明滅している。名門貴族の家にしか配備されない代物で、一つだけで小さな領地がまるごと買えるほどの値打ちがある。

仕組みは単純だ。手のひらを水晶に押し当てると、結晶体が触れた者の魔力に共鳴し、光を放つ。光の色は属性を映す——炎なら赤、氷なら蒼、風なら緑。光の強さが魔力の深さを示し、水晶の上方に星級と数値が浮かび上がる。

光が鮮やかであればあるほど、才能がある。弱々しければ——それが、その者の現実だ。

「測定の規則を説明する」

カッセルリックが立ち上がり、場内を見渡した。低い声が、演武場の隅々にまで響く。

「魔力値100以上が合格。100未満は不合格。ただし、例年の追加規定に従い、測定後、不合格者は合格者に一度だけ挑戦する権利がある。勝てば合格とする」

一拍おいて。

「では、測定開始」

水晶の傍に立つ審判員が一歩前に出た。懐から名簿を取り出し、氷のような声で名前を読み上げ始める。

呼ばれた者が順番に水晶の前へ進み、掌を押し当てる。

水晶が光る。審判員が結果を告げる。

それだけのことだ。

だが、その「それだけのこと」に、若者たちの人生がかかっている。

合格した者はほっと肩の力を抜き、不合格の者は顔を蒼白にして退場していく。中には、その場で膝をついて泣き崩れる者もいた。

隊列の最後方。

レオンは静かに立ち、その一幕一幕を眺めていた。

不合格で泣き崩れている者たちの中に——見覚えのある顔がいくつかあった。

侯爵府の廊下で擦れ違うたびに、「デキソコナイ」と嗤っていた連中だ。声がよく通るやつに限って、わざと聞こえるように言う。聞こえたこちらの顔色を確認して、満足そうに笑う。

そういう手合いだった。

今、彼らは水晶の前で蒼い顔をしている。

レオンは口元をわずかに歪めた。嘲りではない。かといって、同情でもない。

自分より下の者を嘲笑っていた時——いつか自分にもこの日が来るとは、彼らは思いもしなかったのだろう。

辱人者、人恒辱之。

因果応報。ただ、それだけのことだ。

「ニコラス・セレストーム!」

審判員の声に、レオンはわずかに眉を上げた。

ニコラス。ソフィアの弟。エイドリアンの取り巻きの一人。

数年前——レオンがまだ侯爵府で完全には孤立していなかった頃——この男は「レオン様」と呼んで後ろをついて回っていた。風向きが変わった途端、掌を返した。

世の中とは、そういうものだ。十二歳で覚えた教訓だった。

ニコラスは堂々とした足取りで水晶の前に進み出て、掌を押し当てた。

水晶が光った。橙色——熱力系の光。

「魔力値:105。合格」

審判員が淡々と告げた。

演武場にざわめきが起こった。105。この年齢では悪くない数字だ。ニコラスの顔には隠しきれない得意が浮かんでいる。周囲から羨望の視線が集まり、少年はそれを一身に浴びて、胸を張った。

レオンは鼻の頭をこすりながら、ぼそりと呟いた。

「一年でそれだけか……まあまあだな」

隣のエヴィルは、人垣に囲まれるニコラスにちらりと一瞥をくれただけで、さして関心を払う様子もなかった。銀色の髪を風に遊ばせ、細い指先で一房の髪を弄んでいる。

レオンはふと気づいた。

さっきから——この従妹の視線が、ずっと自分のほうに向いている。

「……何をじっと見ている」

「見てないわよ」

「嘘をつくな」

「本当に見てないもの」

エヴィルはぷいと視線を逸らした。銀髪が頬にかかり、表情が半分隠れる。

だが、耳の先がわずかに赤い。

——こういうところ、昔から変わらない。

ニコラスの測定が山場となった後、続く十数人の中で合格ラインに達した者はわずか数人に留まった。残りは皆、蒼い顔で退場していく。

「今年の苗はますます細いな。この程度で、セレストームの血を名乗るとは」

貴賓席で、二番目の長老が鼻を鳴らした。

隣の長老が相槌を打つ。

カッセルリックは何も言わなかった。その視線は、演武場の最後方——銀色の頭に、静かに留まったままだ。

二番目の長老はその視線の先を追い、嘴の端を吊り上げた。

「族長は、あのデキソコナイに何か期待でもしておられるのかな?」

カッセルリックは、淡々と口を開いた。

「二長老。物事は最後まで見届けてから結論を出せ。さもなくば——最後に痛い目を見るのは自分だぞ」

二番目の長老の笑みが、一瞬こわばった。だが、すぐに取り繕うように肩をすくめた。

「ほう……それは楽しみだ。せいぜい、驚かせてもらおうか」

「エヴィル・セレストーム!」

審判員の声が響いた。

——あの終始冷淡な声が、この名前を呼ぶ瞬間だけ、わずかに張りを帯びたように聞こえた。

全場の視線が、一斉に動いた。

銀髪紅眼の少女。氷の天才。侯爵家でその名を知らぬ者はいない。

エヴィルは立ち上がり、裾の埃を軽く払った。

そして——レオンの前を通り過ぎる瞬間、すっと身を屈め、耳元に囁いた。

「レオン兄さん——後で驚いても知らないわよ」

声は軽やかで、ほんの少しだけ得意そうだった。紫の瞳が、三日月のように細まっている。

レオンは眉を上げ、歩み去る少女の背中を見つめた。

銀色の長い髪が、背中の上でゆるやかに揺れている。華奢な身体。だが、その歩みには、年齢に見合わぬ静かな威が宿っていた。

「……まさか、四つ星に……?」

【続く】